相続手続きがストップ!? 未登記の土地・建物がもたらす意外な落とし穴 

相続の手続きを進めようとした矢先、土地や建物が「未登記」であることが判明し、手続きがストップしてしまう――。そんな事例が、近年少しずつ増えています。被相続人が長年住んでいた家や、親から引き継いだ土地が、実は法務局に登記されていなかったというケースは、決して珍しくありません。未登記の不動産を放置しておくと、名義変更がスムーズにできず、相続人間の話し合いがこじれる原因にもなります。今回は、未登記不動産が相続に与える影響と、その対策について、わかりやすく解説します。 

目次

登記とは何か?なぜ必要なのか 

登記とは、不動産の「身元証明書」

不動産登記とは、土地や建物の所在地・面積・所有者の情報などを、法務局に記録する制度のことを指します。これは、不動産が「誰のものか」「どのような状態か」を公的に証明するための仕組みであり、登記簿に記された情報こそが、法律上の効力を持ちます。売買や相続といった権利関係の変動があった場合には、その内容を登記に反映させることで、第三者に対して自分の権利を主張できるようになります。

相続登記は「所有者変更」の公式な手続き

相続によって土地や建物を受け継いだ場合、そのまま放置していても「所有者」は法的に変わりません。相続登記を行わなければ、名義は被相続人のままとなり、売却や担保設定などの法律行為ができなくなります。相続登記は、亡くなった方から新たな所有者へと名義を移す、唯一かつ正式な手続きです。相続人間のトラブルを防ぎ、将来的な権利の保全につなげるためにも、登記は早めに行うことが重要です。

「未登記の土地・建物とは?どんなケースがあるか」

相続や新築、増築時に多い「うっかり未登記」

未登記不動産とは、法務局に登記されていない土地や建物のことを指します。よくあるのは、親から土地や建物を相続したものの、名義変更の登記をせずにそのまま使い続けているケースです。また、新築や増改築をした際に建物の登記を忘れた、あるいは登記の必要性を認識していなかったというケースも少なくありません。特に個人が建てた離れや倉庫などで見落とされがちです。

昭和以前の不動産に多い「登記漏れ」

古くから代々受け継がれてきた不動産の中には、そもそも一度も登記されていなかったり、何代にもわたって名義変更がされていないケースもあります。昭和の初め頃に建てられた家や、農地転用後に放置された土地などは、登記簿の記録と現況が一致しないことが多く、いざというときに手続きが進まない原因となります。こうした「登記漏れ」は、現在も全国に多数残っています。

相続手続きで起こるトラブルとは 

名義が変えられず、相続登記が進まない

未登記の不動産は、そもそも誰の名義なのかが登記簿で確認できないため、相続登記を行うことができません。名義が被相続人にある場合であっても、その情報が登記されていなければ、法務局での手続きがストップしてしまいます。名義変更ができないということは、売却や担保設定といった処分行為も不可能になるということであり、相続後の活用が大きく制限されてしまいます。

話し合いの長期化と、相続人間の対立

未登記の不動産をめぐっては、誰が実際に使っていたのか、誰に権利があるのかが曖昧なため、相続人同士の話し合いがこじれやすくなります。相続登記には原則として全員の同意が必要ですが、相続人が多かったり、遠方に住んでいたりすると、連絡や合意形成に時間がかかり、手続きが何年も進まないケースもあります。代替わりによって相続人が増えると、さらに複雑になります。

他の手続きにも広がる支障

未登記不動産があると、財産目録の作成がスムーズにできず、結果として遺産分割協議書の作成にも影響が及びます。特に相続財産に占める割合が大きい不動産が未登記のままだと、遺産分割の全体像が見えず、相続全体の進行が止まってしまうこともあります。こうしたリスクを避けるには、早期の登記確認と準備が不可欠です。

実際のトラブル事例 

父名義のままの家、いざ売却しようとしたら…

父が亡くなった後、長男が実家に住み続けていたものの、名義変更をせずに長年放置していました。ところが、転居を機に家を売却しようとした際、不動産会社から「相続登記を済ませてください」と言われて初めて、登記手続きの必要性に気づきました。その後、兄弟全員の同意を得て相続登記を進めることになりましたが、売却が遅れる事態となりました。

登記されていない建物がトラブルの火種に

親の名義の土地に建っていた建物について、相続人の一人が「これは自分が建てたものだから相続対象ではない」と主張。ところが、その建物自体が未登記だったため、誰の所有かを明確に証明できず、遺産分割協議が紛糾しました。建物が登記されていれば、所有者が明確になり、争いは避けられたかもしれません。未登記のままでは、当事者の主張が対立しやすくなります。

③増築部分の未登記で登記内容と現況が不一致に

相続が発生した際、建物の登記簿を確認すると、実際の建物と面積が大きく異なることが判明。調べてみると、被相続人が数十年前に行った増築部分が登記されておらず、登記簿と現況にズレが生じていました。このままでは建物全体の相続登記ができないため、表題変更登記を行った上で、相続登記に進むことになりました。余計な手間と時間がかかる結果となったのです。

相続前・相続後に取るべき対策とは

生前に名義と登記内容の確認を

不動産に関するトラブルを防ぐには、相続が発生する前に、所有者名義や登記内容をしっかり確認しておくことが大切です。現状の登記簿と実際の利用状況が一致しているかを点検し、名義変更がされていない場合には早めに対応することで、相続時の混乱を未然に防ぐことができます。被相続人本人が元気なうちに整理しておくことで、相続人にかかる負担も大きく軽減されます。

未登記が判明した場合の手順と専門家の力

相続発生後に未登記が判明した場合は、まず建物の現況を調査し、表題登記(表示登記)を行う必要があります。その後、所有権保存登記を経て、ようやく相続登記へと進むことができます。表題登記は土地家屋調査士に、所有権保存登記は司法書士の業務です。専門家に早めに相談することが、スムーズな相続処理への第一歩となります。

まとめ

未登記の土地や建物は、今すぐに支障がないように見えても、相続が発生したとたん、大きな問題へと発展する可能性があります。名義が曖昧なままでは、相続登記が進まず、財産を活用することもできません。2024年4月から、不動産を相続した場合の相続登記が義務化されました。これにより、相続によって不動産の所有権を取得した相続人は、3年以内に登記を行う必要があります。過去に発生して放置されている相続も対象で、2027年3月31日までに登記を終える必要があります。正当な理由なく登記を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。こうした事態を避けるためにも、生前の段階から登記の内容を確認し、必要があれば整理しておくことが大切です。また、相続発生後に未登記が判明した場合でも、手続きの流れを理解し、専門家と連携すれば、解決の道は必ずあります。行政書士の井戸 規光生事務所では、未登記不動産や相続に関するお悩みについて、登記が必要な場合には、信頼できる司法書士や土地家屋調査士と連携し、円滑な手続きをお手伝いいたします。「相続が発生する前に確認したい」「登記のことで何から始めればいいかわからない」――そんな方は、ぜひお気軽に無料相談(初回30分)をご利用ください。お電話052-602-9061またはEメールido.kimioアットマークofficeido.com、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。誠実に、そして丁寧に対応いたします。

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この記事を書いた人

2024年に「行政書士 井戸 規光生 事務所」を設立しました。
建設業、遺言・相続サポート業務に特化した名古屋市南部の地域密着型事務所です。
高校時代はラグビー部に所属。地元名古屋のスポーツチームを応援しています。

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