「家は長男、お金は長女」──その希望、黙っていても誰も叶えてくれません

「私が亡くなったら、家は長男に相続させて、お金は長女に多めに渡すことで平等に遺産分割したい」──そんな話を耳にすることはよくあります。でも、それを口で言っただけで、心の中で想っているだけで、望み通りにいくと思っていませんか?相続は“気持ち”では動きません。“法律”で動きます。このブログでは、よくある希望と現実のズレ、そしてそのギャップを埋める唯一の方法──遺言書について解説します。

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“意図を形にする”仕組みが必要

「2人子どもがいる。今自分が住んでいる家(土地と建物)は100%長男に相続させたい。その代わり、現金は長女に多めに渡して、最終的に法定相続分の1/2ずつになるように調整したい」
──この考え方は非常に理にかなっており、実際によくあるケースです。一見、内容に何の問題もないように見えます。実際、法定相続分に合致していれば、それに従って分けることもできます。ただし、ここで重要なのは「家を長男に」「現金は長女に多めに」という“具体的な割り振り”は、民法に定められた内容ではないということです。つまり、遺言書がなければ、法定相続分通りであっても、どの財産を誰が取得するかは話し合い=遺産分割協議で決めなければなりません。この話し合いがスムーズに進まなければ、希望通りの分け方は実現できなくなってしまうのです。

口頭で伝えただけでは、相続人間での考え方にズレが生じ、
「それ、私は聞いてない」「納得できない」といったトラブルにもなりかねません。

だからこそ、こうした具体的な分け方こそ、遺言書でしっかり残すべき内容なのです。

“家をもらう”が揉め事になるのは、話が曖昧だから

「家は長男に、現金は長女に多めに」という分け方は、内容としては極めて合理的です。実際、このように分ければ、相続人それぞれにとって納得感のある結果になります。しかし──その分け方が遺言書などで明確に示されていなければ、話は別です。

「長男が家をもらうのは当然で、俺は同居で介護もしてきた。家の事は分けて考えて、お金を半々で分けるべき」と思っていた長男に対して、「家は高額だから、バランスとるために私はあなたより多めにお金をもらえるはずでしょ?」と長女が言い出すこともあります。このように、話が食い違ったまま遺産分割協議に突入すると、合意が得られず、関係が悪化してしまうケースもあります。繰り返しになりますが、たとえ希望が法定相続分に合っていたとしても、“誰が何を相続するか”を明文化しないと、円満には進みません。

価値のズレを防ぐ鍵は、「家の評価」と「遺言書の明記」

相続財産の中でも、不動産は特に評価に差が出やすい資産です。「家はそんなに高くない」と思っている長男と、「不動産なんだから何千万でしょ」と考える長女──このギャップがトラブルを生みます。こうしたズレを防ぐには、事前に不動産の評価額をしっかり調べておくことが大切です。固定資産税評価額や不動産会社による時価査定など、複数の指標を参考に、家の“相続財産としての価値”を明確にしておきましょう。

そのうえで、遺言書に、「誰に」「どの財産を」相続させるのかを、具体的かつ正確に記載すれば、相続人間の“思い違い”や“不公平感”を回避できます。

また、付言事項といって、法的拘束力はないものの、遺言者の想いを書くことができる欄を利用して、「A男に相続させる自宅の土地と建物は〇○○○万円の価値と換算しましたので、B子にはその分多めに預金を相続させます」と書くこともできます。希望通りに相続させるには、感覚ではなく、数字と文書で残すことが不可欠なのです。

まとめ:遺言書が“最後の親心”になる

遺言書は、ただ財産を分けるための書類ではありません。遺言書を書くという行為は、家族への感謝や配慮、そして「あなたたちに幸せに生きてほしい」という親としての願いを、具体的な形で残すことです。何も書かずに「うちは揉めない」「話せば分かる」と信じたい気持ちはわかりますが、実際の相続の現場では、小さなすれ違いが大きな対立に発展することもあります。だからこそ、元気な今のうちに、誰に何を、どう渡すのかを明確にしておくことが必要です。行政書士井戸規光生事務所では、このような相続に関する不安や疑問に丁寧にお応えし、ご家族の事情に合わせた遺言書作成をしっかりとサポートしています。誰に相談したらいいのかわからない、何から始めればいいのか不安…そんな方こそ、まずは一度ご相談ください。当事務所では、初回30分の無料相談を行っております。遺言書を作るかどうかを決める前に、「何ができるのか」「どんな準備が必要なのか」を知ることが、安心への第一歩です。お電話052-602-9061またはEメールido.kimioアットマークofficeido.com、お問い合わせフォームからどうぞお気軽にご利用ください。

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この記事を書いた人

2024年に「行政書士 井戸 規光生 事務所」を設立しました。
建設業、遺言・相続サポート業務に特化した名古屋市南部の地域密着型事務所です。
高校時代はラグビー部に所属。地元名古屋のスポーツチームを応援しています。

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