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その遺言、本当に有効?遺言無効確認訴訟の基礎知識
遺言書は、故人の最後の意思を示す大切な文書ですが、その有効性が疑われる場合、相続人の間で深刻な争いが生じることがあります。例えば、作成時に本人の意思が反映されていない、形式に不備があるなどの理由で「遺言無効確認訴訟」が提起されるケースもあります。この訴訟は相続において重要な影響を及ぼすため、基礎知識を押さえておくことが大切です。本記事では、遺言無効確認訴訟とは何か、どのような理由で遺言が無効とされるのか、そしてトラブルを未然に防ぐためのポイントについて解説します。相続トラブルを避けたい方は、ぜひお読みください。
遺言無効確認訴訟とは?
遺言無効確認訴訟とは、作成された遺言書が法律上の要件を満たしていない、または遺言者の真意が反映されていないと疑われる場合に、その無効を裁判所で確認してもらう手続きです。この訴訟は主に相続人や受遺者の間で、遺産分割や相続の権利に関する争いが発生した際に行われます。遺言が有効であるか否かは相続全体に大きな影響を及ぼすため、重要な意味を持ちます。
遺言が無効と主張される主なケース
遺言無効確認訴訟が提起される主な理由には、以下のようなケースがあります。
- 形式の不備:遺言書に署名や押印がない、日付が曖昧であるなど、法律が定める形式を守っていない場合。公正証書の証人が不適格者だった場合。2人以上の者が共同で遺言書を作成した場合(共同遺言)
- 意思能力の欠如:遺言者が認知症や精神的な疾患などにより、内容を理解する能力を欠いていたとき。
- 不正な介入:第三者が詐欺や強迫を用いて、遺言内容を不当に操作した場合。
- 遺言書が変造された:第三者が遺言書の内容を勝手に書き換えた場合。
- 遺言書の内容が公序良俗に反している:「愛人や反社会的組織に遺産を遺贈する」など、公序良俗に反した内容の場合。
これらの理由が裁判で認められると、遺言書は無効となり、相続が遺言の存在しない状態に戻されます。 3.の「詐欺や脅迫により被相続人に遺言や遺言の変更を強制したり、妨げたりした人物」や、4.の「遺言書を自己都合により偽装、隠蔽、破棄した人物」は、相続欠格となり、相続人の資格を失います。
遺言無効確認訴訟が相続全体に与える影響
遺言書が無効とされると、再度相続人間での遺産分割協議が必要になります。しかし、訴訟を経た場合、相続人同士の関係が悪化し、協議がスムーズに進まなくなることも少なくありません。また、裁判には時間と費用がかかるため、相続人に大きな負担が生じる可能性もあります。「被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内」という相続税の申告期限もほぼ確実に超過するでしょう。遺言無効確認訴訟を避けるためには、遺言書を作成する段階から専門家のアドバイスを受け、形式や内容に注意を払うことが重要です。
遺言が無効とされる主な理由
遺言書は、故人の意思を明確にし、相続トラブルを防ぐために重要な役割を果たします。しかし、作成方法や内容に問題がある場合、無効とされます。以下では、遺言が無効とされる主な3つの理由「形式の不備」「意思能力の欠如」「不正な介入」について詳しく解説します
形式不備
遺言書には法律で定められた形式があります。これを守らない場合、遺言は無効となる可能性があります。たとえば、自筆証書遺言の場合は、全文(財産目録を除く)を遺言者本人が手書きし、日付と署名を記載したうえで押印する必要があります。
例:日付が「令和〇年〇月吉日」など曖昧である、署名や押印がない、パソコンで作成されているなどの場合、形式不備として無効とされることがあります。このような形式不備を防ぐには、公正証書遺言を利用することが有効な手段となります。
意思能力の欠如
遺言者が遺言を作成する際に意思能力を欠いていた場合、その遺言は無効とされる可能性があります。意思能力とは、遺言の内容を理解し、判断する能力のことを指します。
例:遺言者の認知症や精神疾患が進行している場合、遺言作成時に自分でその内容を十分に理解していないと判断されることがあります。特に、医療記録や遺言作成時の状況が証拠として重要視されます。意思能力を疑われないためには、医師の診断書を添えるなど、第三者の確認を得ると安心です。
不正な介入
遺言書の内容が第三者の不正な影響を受けている場合も、無効とされることがあります。詐欺や強迫、または遺言者に不当に働きかけて、特定の人物に有利な内容に改ざんした場合が該当します。
例:遺言者が介護を受けている際、その介護者に「自分にすべてを相続させると遺言書に書かないと面倒を見ない」と脅されたり、誘導されたりした場合。このような不正が認められると、遺言は無効となります。
遺言無効確認訴訟の流れ
遺言無効確認訴訟は、遺言書の有効性に疑問を持つ相続人や利害関係者が、その無効を裁判所に求める手続きです。以下では、訴訟の具体的な流れを4つのステップに分けて解説します。
訴訟の提起方法
遺言無効確認訴訟を開始するには、地方裁判所に訴状を提出します。この訴状には、遺言が無効であると主張する具体的な理由と根拠を記載します。たとえば、「遺言書に法定の形式が守られていない」「作成時に遺言者が意思能力を欠いていた」などの点が挙げられます。また、対象となる遺言書のコピーやその他の関連資料を証拠として添付する必要があります。
証拠の収集
訴訟において重要なのは、遺言が無効であることを立証する証拠を揃えることです。代表的な証拠には以下のものがあります:
- 医療記録:遺言作成時に意思能力を欠いていたと主張する場合、診断書やカルテなどが重要です。
- 証人証言:遺言作成時に関与した第三者や遺言者の健康状態を知る人物からの証言が有力な証拠になります。
- 筆跡鑑定:遺言書が遺言者本人の筆跡でないと疑われる場合、専門家の鑑定結果が必要です。
裁判所での審理の進め方
審理では、原告と被告がそれぞれの主張を立証するために証拠を提示し、裁判官が判断を下します。
- 原告は遺言が無効である理由を証拠を交えて説明します。
- 被告は遺言の有効性を証明する反論を行います。
例えば、「形式に問題がない」「意思能力があった」ことを示す証拠が提出されます。複数回の期日を経て、裁判所は最終的に遺言の有効性について判断を下します。
判決後の影響
遺言が無効と判断された場合、遺産分割は遺言の存在しない状態、すなわち法定相続に基づいて行われます。そのため、改めて相続人全員での遺産分割協議が必要となります。一方、遺言が有効とされた場合は、遺言内容に従って相続が進められます。判決後の手続きが円滑に進むよう、相続トラブルを得意とする弁護士のサポートを受けることが望ましいです。
遺言無効確認訴訟は時間と労力を要するため、訴訟を検討する際には事前に専門家に相談し、十分な準備を行うことが成功への鍵となります。
「遺言書が無効ではないか」との思いがある場合、まずは相続人同士の話し合いで、遺言書通りではない遺産分割をすることに合意が得られないか提案し、話がまとまらなかったら、いったん家庭裁判所に調停を申し立てるなどすることもできます。負担が大きく時間もかかる、遺言書無効確認訴訟は経済的、時間的、心理的な負担も大きいので、すぐに訴訟をしないという道もあります。それらも含めてどうしたらよいかについても、相続問題に強い弁護士に相談することができます。
トラブルを防ぐためのポイント
遺言書は相続トラブルを防ぎ、遺産分割を円滑に進めるための重要なツールです。しかし、作成の不備や内容の不明確さが原因でトラブルが発生することもあります。ここでは、トラブルを未然に防ぐための具体的なポイントを解説します。
1. 適切な形式で遺言書を作成する
遺言書には法的に定められた形式があり、これを満たしていない場合、無効とされる可能性があります。たとえば、自筆証書遺言では「全文を自書する」「日付と署名を明記する」「押印する」ことが必須です。形式に不備があると、内容が遺言者の意思に基づくものであっても法律上無効となるため、作成時には注意が必要です。
2. 公正証書遺言の活用による信頼性向上
公正証書遺言は、公証人が関与して作成されるため、形式の不備が生じにくく、信頼性が高い方法です。公証役場で正式な手続きを行うため、遺言書が偽造や改ざんされるリスクも低減します。また、紛失や破損の心配も少ないため、相続人にとっても安心です。特に大きな資産を持つ場合やトラブルが予想される場合には、公正証書遺言を選択することが推奨されます。
公正証書遺言も100%絶対ではないケースも
自筆証書遺言より大きく信頼度が高い公正証書遺言ですが、絶対に無効にならない訳ではありません。実際に以下のような理由で無効とされたケースも存在します。
・遺言能力がなかった場合
・口授を欠いていた場合
・証人が不適格だった場合
・真意と内容に錯誤があった場合
・公序良俗に違反していた場合
3. 弁護士や行政書士への相談のメリット
遺言書の作成にあたり、専門家のアドバイスを受けることは非常に有益です。弁護士や行政書士は、遺言書が法的要件を満たしているか確認し、遺産分割におけるリスクを最小化する手助けをします。また、相続税対策は税理士に適切なアドバイスを受けることでトラブルを防ぐことができます。専門家への相談は、安心と確実性を得るための重要なステップです。
4. 定期的な内容の見直しの必要性
遺言書は作成後も定期的に見直すことが重要です。遺言者の財産状況や家族構成、法改正など、状況が変化した場合には、遺言書の内容を更新する必要があります。たとえば、新たな財産の取得や家族の死亡、出生などがあった場合、現状に合わない遺言書がトラブルを招く可能性があります。定期的な見直しを行うことで、常に正確な内容を維持することができます。
5.付言事項を活用する
「遺言無効確認訴訟」を提起する大きな理由の一つとして、「遺言書の内容が不平等」と相続人が感じてしまうことが挙げられます。遺言書で遺産分割方法を指定する際、完全には平等でない分割方法を書かざるを得ないこともありますが、その際は付言事項(遺言書に付け足す個人的なメッセージ。法的拘束力はない)を活用し、遺産分割を指定した理由を説明し、「これで納得してほしい」と、一言書いておくことで相続人の感情が収まることもあります。
まとめ
行政書士 井戸 規光生 事務所ではご依頼者さま一人一人の事情に配慮して、遺言書の作成サポートや、相続手続きの代行を行っております。
遺言者の方には、ご本人の意思を最大限に尊重し、相続人間のトラブルとならないようなサポートを行います。自筆証書遺言書を選択されても、公正証書遺言を選択されても、無効とならないように細心の注意を払います。
また、既に相続が発生したが、遺言書に納得できない、または、無効の疑いを持っている相続人の方には、トラブルを最小にとどめるためのサポートを行い、遺言無効訴訟に踏み切るなど、必要な際には相続問題に明るい弁護士をご紹介いたします。その他相続税のお悩みには税理士を、不動産の登記の際には司法書士をご紹介することで、相談者様の負担が少ない形で諸手続きを運んでまいります。 初回相談は無料です。お電話、お問い合わせフォームなどから、是非お気軽にご連絡ください。