優遇した子に「内緒にしておけ」はNG!相続で一番もめるパターン

相続において、「特定の子に多く遺したい」という親の想いは、決して珍しいものではありません。生前の介護や事業への貢献を加味することもあり得ますし、単純に片方のほうが可愛いという感情を持つことも全く否定はできません。さらには、片方は順風満帆な人生、もう片方は経済的に恵まれていないとなると、恵まれていない方に財産を多め遺してあげたいと思うこともあるでしょう。しかし、そうした気持ちを「他の兄弟には内緒にしておいてほしい」と伝えてしまうと、それが大きな火種になることがあります。秘密は往々にしてバレるものです。後になって不平等な内容が明らかになることで、「なぜ自分だけ少ないのか」と不信感が生まれ、兄弟間の関係に深い溝ができてしまうことも。今回は、親の想いをどう伝えるか、そして“秘密の相続”がもたらすリスクについて考えてみましょう。

目次

序章:親の気持ちは理解できるが、内緒は危険

長年にわたって介護を担ってくれた子や、親と同居して生活を支えてくれた子、あるいは家業を一緒に守ってきた子に対して、「少し多めに遺したい」と思うのは、親としてごく自然な感情です。誰か一人だけをえこひいきしているつもりはなく、「感謝の気持ちを形にしたい」「手をかけてくれた分、報いたい」という想いがあるのは当然のことでしょう。しかし、その内容を「ほかの兄弟には黙っておいてくれ」と口止めしてしまうと、そこからトラブルの芽が育ってしまいます。知らされなかった側は、不公平感とともに「裏切られた」「騙された」という強い感情を抱くことがあり、結果として、兄弟間の信頼関係が壊れてしまう可能性すらあるのです。

内緒にされた側が感じる「不公平感」とその影響

小さな“秘密”が、大きな火種になる

親が生前に行った支援や贈与について、それが一部の子だけに知られている場合、後になって話が明るみに出たとき、大きな波紋を呼ぶことがあります。本人にとっては善意や感謝の気持ちだったとしても、他の兄弟姉妹にとっては、「自分だけが知らなかった」という事実が、不信や不満の原因となるのです。

疑いと誤解が関係を崩す

「なぜ自分だけ教えてもらえなかったのか」「他にも何かあるのではないか」といった思いが心に生じると、たとえ些細なことであっても疑念が膨らみます。その結果、これまで穏やかだった家族関係に亀裂が入り、感情的な対立や将来の相続時に深刻な争いへと発展することも少なくありません。

親が生前にできる「想いの伝え方」

“対話”がもたらす安心感

どれほど合理的な理由があったとしても、説明がなければ納得できない――相続において、こうした感情のすれ違いは少なくありません。だからこそ、生前のうちに、親の想いや考えを家族に伝えておくことが大切です。一対一の会話でも構いませんが、誤解を防ぐためには、家族全員が顔を合わせる場を設けることが望ましいでしょう。

第三者や書面の力も活用を

話しにくい内容であれば、信頼できる専門家(行政書士など)を交えて説明することで、話が客観的かつ冷静に伝わりやすくなります。また、遺言書に「付言事項」を添えることで、親の気持ちや背景を言葉として残すこともできます。それが、子どもたちの理解や受け入れにつながることも少なくありません。

どうしても全員に言えない事情がある場合の対応策

書面による“静かな対話”を残す

家族の中には、どうしても話ができない関係性や、話すことでかえって問題が大きくなる事情を抱えていることもあります。そういった場合には、無理に全員に口頭で説明する必要はありません。代わりに、遺言書に「付言事項」として、なぜそのような分け方にしたのか、どんな想いがあったのかを、丁寧な言葉で書き添えることが有効です。相続人がその文面を読んだとき、納得とまではいかなくとも、気持ちが落ち着く助けになることがあります。

工夫と制度の活用で不満を和らげる

また、どうしても差がつく場合は、不動産と金銭のバランスを工夫したり、代償分割を取り入れたりすることで、見かけ上の不平等感を軽減できます。さらに、配偶者居住権や小規模宅地等の特例など、相続税や財産評価の面で有利になる制度を組み合わせれば、全体の調整がしやすくなります。秘密にせざるを得ない事情があるからこそ、誠実さと工夫が問われる場面です。

“秘密”ではなく“理解”を残す相続を

想いを「伝える」ことが、最大の予防策に

相続において最も大きなトラブルの原因は、「不公平な分け方」そのものではなく、「説明がなかったこと」にあります。たとえ誰かを優遇したとしても、その背景や理由をきちんと伝えておけば、納得とまではいかなくても理解を得られる余地は生まれます。逆に、何も言わずに進めてしまうと、いつか必ずどこかから話が漏れ、不信と争いを招く結果になりかねません。

遺言は未来の家族へのメッセージ

遺言は財産の分け方を決めるだけのものではなく、親としての最後のメッセージでもあります。「自分がいなくなったあとも、子どもたちがつながっていてほしい」という想いを実現するには、“秘密”よりも“説明と理解”が何よりも大切です。相続を、家族の絆をつなぐきっかけにしていきましょう。

まとめ

相続において大切なのは、財産の「配り方」だけでなく、親の想いをどう「伝えるか」ということです。誰かを思いやる気持ちは尊いものですが、それを秘密にしてしまうと、かえって争いの火種になります。行政書士井戸 規光生事務所では、そうした“想いを伝える相続”を形にするためのサポートを行っています。初回相談は無料ですので、お電話052-602-9061またはEメールido.kimioアットマークofficeido.com、お問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

2024年に「行政書士 井戸 規光生 事務所」を設立しました。
建設業、遺言・相続サポート業務に特化した名古屋市南部の地域密着型事務所です。
高校時代はラグビー部に所属。地元名古屋のスポーツチームを応援しています。

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