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公正証書遺言の作成手順と注意点:相続トラブルを防ぐために
相続に関するトラブルは、親族間の信頼関係を損ない、長期にわたる争いを引き起こすことがあります。そんなトラブルを未然に防ぐための有効な手段の一つが遺言書、特に公正証書遺言の作成です。公正証書遺言は、公証人が作成し、公的な証明力があるため、遺言の有効性を巡る争いを防ぐのに非常に効果的です。この記事では、公正証書遺言の作成手順と注意点について詳しく解説し、相続トラブルを避けるためのポイントをお伝えします。
公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、公証人が遺言者の意思を確認し、公証役場で作成する遺言書です。公証人が関与するため、遺言の内容が法的に有効であることが確認され、遺言書の偽造や変造、紛失のリスクがほとんどありません。また、作成された公正証書遺言は公証役場で保管されるため、遺言内容の確実な履行が期待できます。これにより、相続における不公平感や解釈の違いから生じるトラブルを未然に防ぐことができます。結果として、遺言者の意思を正確に実現し、相続をスムーズに進めることが可能となります。 これに対し、自筆証書遺言は書き方に不備があれば無効となる可能性があり、保管も自己責任となります。また、自筆証書遺言は相続発生後に家庭裁判所での検認手続きが必要ですが、公正証書遺言にはその手続きが不要で、速やかに遺言内容を実行できます。これらの点から、公正証書遺言は安心・確実に遺言者の意思を反映させる手段として優れています。
公正証書遺言の作成手順
まず、遺言者自身でどのような内容の遺言を作成したいかを明確にします。財産の分配方法や受遺者、特別な希望などを整理しましょう。
公正証書遺言を作成する際には、本人確認書類や印鑑、遺産に関する書類が必要です。順に挙げると
・発行から3か月以内の印鑑登録証明書 市区町村役場で取得 (印鑑登録をしていない場合は認印と運転免許証、パスポート)
・遺言をする人の戸籍謄本 市区町村役場で取得
・遺言をする人と、相続人の続柄が分かる戸籍謄本 市区町村役場で取得
・財産を相続人以外に譲る際は、その人の住民票の写し 市区町村役場で取得
・不動産の登記事項証明書(登記簿謄本) 法務局で取得
・固定資産税納税通知書(または固定資産評価証明書) 毎年、春に市区町村役場から納税通知書は郵送されます。(評価証明書は市区町村役場の窓口で取得。東京都は都税事務所で取得)
・預貯金の通帳のコピー
・証人を知人に依頼する際には、名前、住所、生年月日、職業の控え
・遺言執行者を指定する場合は、名前、住所、生年月日、職業の控え
公正証書遺言は、公証役場に所属する公証人が作成します。事前に相談日時を予約して、その日に公証人と相談し、遺言の内容や必要書類について確認しましょう。この際、遺言の意図や希望を明確に伝えます。
公正証書遺言の作成には、2名以上の証人が必要です。証人を手配するのが難しい場合、公証役場で証人を手配してもらうことや、行政書士など、専門家に依頼することも可能です。
また、以下の人たちは証人にはなれません。未成年者/推定相続人/遺贈を受ける者/推定相続人や遺贈を受ける者の配偶者や直系血族/公証人の配偶者、四親等内の親族、書記、使用人
公証役場で公証人、証人の立会いのもと、遺言内容を確認しながら遺言書を作成します。遺言者は遺言内容を公証人から読み上げてもらい、内容に問題がなければ署名押印します。
作成された公正証書遺言は公証役場で保管されます。これにより、紛失や改ざんのリスクがなくなり、安心して保管できます。
作成時の注意点とポイント
1. 遺言の内容を明確にする 遺言内容が曖昧だと、トラブルの原因になります。具体的かつ明確に記載しましょう。
2. 証人の適格性に注意 相続人や受遺者などの利害関係者は証人になれません。適格な証人を選びましょう。
3. 遺言者の意思能力 遺言作成時に遺言者が意思能力を有していることが必要です。公証人は遺言者の意思能力を確認しますが、高齢者の場合や精神的な健康状態に不安がある場合、医師の診断書を用意することも検討しましょう。
4. 定期的な見直し 公正証書遺言を一度作成したからといって、絶対に変更できないわけではありません。財産状況や家族構成に変化があった場合は、遺言内容を見直し、必要に応じて新たに作成することも重要です。
5. 費用について 公正証書遺言の作成には手数料がかかります。財産の種類や遺言内容によって費用が変わるため、事前に公証役場で確認しておくと良いでしょう。
公正証書遺言を適切に作成することで、相続におけるトラブルを未然に防ぎ、遺言者の意思を確実に実現することができます。専門家のサポートを受けながら進めることも検討しましょう。
公正証書遺言の費用
公正証書遺言作成の手数料は、遺言に記載する財産の価格によって異なります。例えば、500万円を超えて1000万円以下の場合は1万7000円、1000万円を超えて3000万円以下の場合は2万3000円といった形です。費用は遺産の総額で計算するのではなく、相続を受ける人、1人ごとにかかる手数料別個に計算し、それを合算します。
(例)「遺産総額が20,000,000円だから、手数料は23,000円」ではなく、「総額20,000,000円の遺産を10,000,000円ずつ2人に相続させるから、手数料は23,000×2で、46,000円」です。
遺言書に書く財産の合計額 | 手数料 |
100万円まで | 5,000円 |
200万円まで | 7,000円 |
500万円まで | 11,000円 |
1,000万円まで | 17,000円 |
3,000万円まで | 23,000円 |
5,000万円まで | 29,000円 |
1億円まで | 47,000円 |
公証人が自宅や病院に出張する場合、上の手数料が1.5倍になります。さらに、公証人の日当(拘束時間4時間以内は10,000円。それ以上は20,000円)と交通費がかかります。
財産の総額が1億円未満の場合は、11,000円加算されます。
遺言書原本の枚数が4枚(横書きの場合は3枚)を超える1枚ごとにプラス250円され、また、正本と謄本の交付にも1枚につき250円の手数料がかかります。
まとめ
行政書士 井戸 規光生 事務所では相続診断士の資格を持つ行政書士が、ご依頼者様それぞれの事情に沿って、遺言書の作成サポートや、相続手続きの代行を行っています。自筆証書遺言よりも確実性の高い公正証書遺言の作成を望まれる方にも必要書類の収集や、手続きの案内など、適切なサポートを行っております。証人への就任も承っております。また、相続発生時の相続人、相続財産の調査や、各種必要書類の取得、作成、金融機関とのやり取りなど、煩雑な手続きも代行いたします。登記が必要な際には司法書士を、相続税に関するお悩みには税理士を、また、万が一相続人間でのトラブルが発生した場合には提携の弁護士を紹介し、ご依頼者様の負担が少ない形で諸手続きを進めてまいります。初回相談は無料ですので、お電話、お問い合わせフォームなどから、是非お気軽にご相談ください。