同性パートナーに財産を託すための遺言書のポイント

日本の法律では、同性パートナーには法律上の相続権が認められていません。そのため、遺言書を作成しなければ、パートナーに財産を遺すことができず、すべて親や兄弟姉妹などの法定相続人に渡ってしまう可能性があります。また、遺言がない場合、パートナーが住んでいた家を失うリスクもあります。本記事では、同性パートナーに確実に財産を託すための遺言書の作成ポイントを解説します。大切な人のために、早めの準備を進めましょう。

目次

なぜ同性パートナーには法定相続権がないのか?

日本の法律では、相続権は「配偶者」または「血縁関係のある親族」に限定されており、それ以外の人には原則として相続権が認められていません。そのため、法律上の婚姻関係にない同性パートナーは、たとえ長年共に生活していたとしても、自動的に相続人とはならず、財産を受け取る権利がありません。また、遺言書がない場合、遺産は全て親や兄弟姉妹などの法定相続人に渡り、パートナーの意思が尊重されない可能性があります。特に、自宅や預貯金などの財産をパートナーに遺したい場合、遺言書を作成しなければ、パートナーが何も受け取れず、生活が不安定になるリスクがあるため、早めの対策が必要です。

遺言書がないとどうなる?考えられるリスク

すべての財産が法定相続人に渡る可能性がある

遺言書がない場合、相続財産は法律で定められた法定相続人に分配されることになります。法定相続人には、配偶者、子ども、親、兄弟姉妹などの血縁関係にある親族が含まれますが、同性パートナーは含まれません。そのため、パートナーには一切財産が渡らず、すべて法定相続人に分配されてしまう可能性が高いのです。

住んでいた家を失うリスクがある

パートナーと暮らしていた家の名義が被相続人(亡くなった側)のものであった場合、その家も法定相続人の財産として分配対象となります。もし、相続人がその家を売却することを決めた場合、パートナーは住み続けることができなくなり、退去を求められる可能性があります。このような事態を防ぐには、遺言書に「自宅をパートナーに相続させる」と明記することが重要です。

相続手続きに関与できず、意思が尊重されない

法定相続人でない同性パートナーには、相続手続きに関与する権利がありません。そのため、パートナーが生前にどれだけ相手を支えていたとしても、財産の分配について意見を述べることができず、遺産を管理する権利も持てません。また、銀行口座の解約や、不動産の名義変更などの手続きを行う権限もないため、パートナーが何も受け取れないまま、関係のない親族がすべての財産を管理することになりかねません。このような状況を避けるためにも、生前に遺言書を作成し、財産の分配を明確にしておくことが大切です。

同性パートナーに財産を託すための遺言書のポイント

遺言書の作成が必須

同性パートナーに財産を遺すためには、必ず遺言書を作成する必要があります。日本の法律では、法定相続人以外の人には相続権が認められないため、遺言書がなければパートナーは一切財産を受け取ることができません。また、口約束やメモ書きでは法的効力がないため、正式な遺言書を作成し、確実に意向を反映させることが重要です。

公正証書遺言を活用する

遺言書にはいくつかの形式がありますが、同性パートナーに確実に財産を託すためには、公正証書遺言を選ぶのが最適です。公正証書遺言は、公証人が関与して作成するため、法的効力が高く、紛失や改ざんのリスクがありません。また、家庭裁判所の検認手続きが不要なため、スムーズに遺言の内容を実行できる点も大きなメリットです。

生活を守るために住居を優先する

パートナーの生活基盤を守るためには、住居の所有権を確保することが大切です。たとえば、「〇〇に自宅を遺贈する」と明記すれば、パートナーが確実に住み続けられます。

遺留分を考慮する

遺言書で同性パートナーに財産を遺す場合、親や子どもなどの法定相続人がいる場合には、「遺留分侵害額請求」を受ける可能性があります。遺留分とは、法律で保証された最低限の相続分のことで、これを無視すると、後に相続トラブルに発展するリスクがあります。そのため、事前に遺留分を考慮し、相続人と話し合う、または代償金を用意するなどの対策を講じることが重要です。また法的強制力はありませんが、「付言事項」として、「自分はパートナーに遺産を多く(全て)渡したいから、遺留分侵害額請求はしないで欲しい」と書いておくこともできます。

遺言書と併せて検討すべきその他の対策

生命保険を活用する

遺言書とは別に、パートナーを受取人とする生命保険を活用することで、財産を確実に渡すことができます。生命保険金は相続財産とは別枠で扱われるため、遺留分の影響を受けにくいというメリットがあります。また、遺言執行を待たずにスムーズに支払われるため、生活資金としても有効です。

任意後見契約を結ぶ

将来、自分が認知症などで判断能力が低下した場合に備え、パートナーが財産管理や医療手続きを代行できるよう、「任意後見契約」を結んでおくことが重要です。これにより、介護や病院での手続きなど、パートナーが法的にサポートできる環境を整えることができます。また一般的には「家族信託」と呼ばれる方法も、実際は「民事信託」なので、パートナーが受託者となり、自分が認知症になった際の自分の財産管理を任せることもできます。

死後事務委任契約を活用する

同性パートナーには、死亡後の葬儀や遺品整理を行う法的な権限がないため、「死後事務委任契約」を結ぶことで、安心して最期の手続きを任せることが可能です。契約を交わすことで、葬儀の手配や家の片付け、契約解除などの事務手続きをパートナーが正式に行えるようになります。

まとめ:早めの準備で大切な人を守る

同性パートナーには法定相続権が認められていないため、遺言書の作成が不可欠です。遺言書がなければ、すべての遺産が親や兄弟などの法定相続人たちだけに渡り、パートナーは何も受け取れない可能性があります。また、住居や生活資金を確保するために、生命保険や任意後見契約、民事信託などの対策も併せて検討することが重要です。相続トラブルを防ぎ、大切な人を守るために、専門家に相談しながら早めの準備を進めましょう。行政書士井戸規光生事務所では、同性パートナーへの財産承継をスムーズに進めるためのサポートを提供しています。遺言書の作成や任意後見契約、民事信託契約、死後事務委任契約など、各種契約の手続きを丁寧にサポートし、お客様の大切な想いを確実に形にします。初回相談は無料でございます。お電話(052-602-9061)、FAX(050-1545-5775)、お問い合わせフォーム、もしくはEメール ido.kimioアットマークofficeido からご相談ください。安心して将来を迎えるために、お気軽にご相談ください。

よかったらシェアしてください!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

2024年に「行政書士 井戸 規光生 事務所」を設立しました。
建設業、遺言・相続サポート業務に特化した名古屋市南部の地域密着型事務所です。
高校時代はラグビー部に所属。地元名古屋のスポーツチームを応援しています。

目次