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問題ある相続人を外す方法「相続廃除」とは?

家庭内で繰り返された暴力、長年の無視や暴言、親の財産を勝手に使い込む――そんな子供に対し、「遺産を渡したくない」と願うことは、悲しいことではありますが、起こりえない訳ではありません。とはいえ、遺言書でその子の相続分をゼロにするというやり方では、そうした親不孝の子どもが相続する可能性を完全に排除することはできません。そこで登場するのが「相続廃除」という制度です。相続廃除には、遺言によって意思を示し、死後に遺言執行者が手続きを進める方法のほか、生前に家庭裁判所へ申立てを行う方法もあります。本記事では、この制度の概要と活用のポイントについて解説します。
相続廃除とは?
遺言では防げない「遺留分」の壁
「この子には相続させたくない」と思っても、遺言だけで全ての相続人を排除することはできません。なぜなら、法律は一定の相続人に対して「遺留分」という最低限の取り分を保障しており、それを侵害する内容の遺言は、無効とまではいかずとも、後に請求されるリスクを常に伴います。感情だけでは排除できない、それが相続の現実です。
相続廃除という制度の存在意義
虐待や重大な侮辱、あるいは財産の不正使用など、家族としての信頼を根底から損なう行為があったとき、被相続人の意思を反映し、法的に相続権そのものを奪う手段――それが「相続廃除」です。遺留分すら認めず、完全に排除できるこの制度は、あくまで例外的かつ厳格な条件のもとで認められるものであり、感情に任せた排除ではなく、事実に基づいた手続きが求められます。
相続廃除が認められる3つの理由
被相続人に対する虐待
言葉の暴力を繰り返し、肉体的な暴力に及び、生活を脅かす――そうした行為が被相続人に向けられたとき、家庭としての絆は完全に断たれます。相続廃除は、このような虐待が明らかな場合に、相続権を奪う法的根拠となります。
重大な侮辱
人格を否定する言動を浴びせ、面前で故意に名誉を傷つけ、親としての尊厳を踏みにじる――そのような行為は、たとえ暴力に至らずとも、廃除の理由となり得ます。特に、社会通念上耐え難いと判断される発言や行動があった場合、重大な侮辱とみなされます。
その他の著しい非行
生活費を持ち逃げし、預金を勝手に解約し、多額の借金を親に背負わせる――こうした経済的搾取や、家庭内秩序を根底から揺るがす行為も「著しい非行」に該当します。過去の裁判例でも、金銭トラブルや反社会的な行動が理由で廃除が認められた例があります。
相続廃除の2つの方法と手続きの流れ
生前廃除:生きているうちに排除を求める
相続開始前に、問題ある相続人を法的に排除したいと考えたとき、被相続人自身が家庭裁判所に「相続廃除の審判」を申し立てるのが生前廃除です。虐待や非行などの具体的事実を証拠として示し、裁判所の判断を仰ぐ必要があります。
遺言廃除:死後に遺言をもとに排除する
被相続人が遺言書の中で「相続廃除の意思」を明示し、遺言執行者を指定しておくことで、死後にその意思を実現させるのが遺言廃除です。この場合、遺言執行者が家庭裁判所へ申立てを行い、認められれば、廃除の効力は被相続人の死亡時に遡って発生します。
相続廃除が認められた事例・認められなかった事例
認められたケース:暴行や財産搾取による排除
・息子が、無断で父親の郵便貯金およそ3500万円を引きだし、父親に対して繰り返し暴力をふるっていた。
・息子が窃盗等により何度も服役し、父親が被害者への謝罪、被害の弁償を行っていた。
・父親が息子から少なくとも3回にわたって暴行を受けていた。
③認められなかったケース:不仲や一時的対立では不十分
・相続人夫婦が姑や小姑との不和を理由に疎遠となり、被相続人に火事見舞いや病気見舞いをしなかった。
・推定相続人が被相続人を背任罪で刑事告訴した。
判断は“家族的信頼関係の破壊”を基準に
裁判所は、感情的な不満ではなく、家族的信頼関係を根底から破壊するような行為があったかを重視します。単なる不仲や主観的な嫌悪感では足りず、客観的に見て深刻な害が及んだと認められる場合にのみ、廃除が認められるのです。
まとめ:相続廃除の活用と注意点
感情のままに廃除を望んでも、証拠が不十分であれば裁判所は認めてくれません。虐待や非行の事実を、日時・内容・証拠とともに具体的に整理し、制度の趣旨に即した申し立てを行うことが不可欠です。準備不足は、望まぬ相続を招く原因となります。相続廃除は、法律判断と手続きが密接に関わる高度な制度です。適切な書類の作成、主張の構成、証拠の収集――すべてにおいて専門家の支援が結果を左右します。早い段階から、弁護士、行政書士などの専門家に相談することが、成功への第一歩となります。行政書士井戸 規光生事務所では、生前廃除・遺言廃除のいずれの場合にも対応可能です。相続関係の戸籍収集、相続人調査、遺言書への廃除意思の反映といった必要書類の作成・準備はもちろん、弁護士との連携も含め、スムーズな手続きをサポートいたします。
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