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家族経営企業の相続はここが違う!非上場株式の評価とスムーズな承継術

家族で経営する企業は、日本全国に数多く存在し、地域経済や業界を支える重要な存在です。しかし、そんなファミリー企業にとって避けて通れないのが「相続」の問題です。特に、上場企業と異なり市場での取引価格が存在しない非上場株式の評価は、非常に複雑で専門的な知識が求められます。相続時の株式評価の方法や税金の負担、さらには家族間の意見の食い違いが、思わぬトラブルを引き起こすことも少なくありません。準備不足で相続に臨んでしまうと、最悪の場合には事業の継続そのものが危ぶまれることさえあります。本記事では、家族経営の非上場企業ならではの相続の課題に焦点を当て、非上場株式の正しい評価方法やスムーズな事業承継のためのポイントを詳しく解説します。これを読めば、相続の不安を解消し、次世代へのバトンタッチを安心して進めるための具体的なステップが見えてくるはずです。「備えあれば憂いなし」――早めの準備で、家族も会社も守りましょう!
家族経営企業が直面する相続の現実
日本における家族経営企業の現状とその重要性
日本全国には約257万社の法人企業が存在し、その96.9%が同族企業、いわゆる家族経営企業です。これらの企業は、単に家族の生計を支えるだけでなく、地域経済の基盤としても重要な役割を果たしています。特に地方においては、雇用の創出や地域の伝統・文化の継承に寄与し、地域コミュニティの維持に不可欠な存在です。
避けて通れない「相続」という課題
どれほど経営が順調であっても、家族経営企業にとって「相続」問題は避けて通れない現実です。特に、経営者の突然の逝去や高齢化に伴う引退が近づくと、後継者選びが大きな課題となります。さらに、相続税の負担は企業の財務に深刻な影響を及ぼすことがあり、適切な準備がされていない場合、事業継続自体が危ぶまれることも少なくありません。家族間の意見対立や経営権を巡る争いが発生すれば、企業の安定が揺らぐこともあるため、早期の対策と計画的な承継準備が不可欠です。
非上場株式の評価が複雑な理由
上場株式と非上場株式の違い
上場株式は市場で日々取引されるため、明確な市場価格が存在します。このため、相続時の評価も比較的容易で、最新の株価を基準にすれば問題ありません。しかし、非上場株式には市場価格が存在しないため、その評価基準が曖昧で複雑です。非上場企業は規模や業績、財務内容が企業ごとに異なるため、一律の評価方法を適用することが難しいのです。この不透明さが、相続時のトラブルや税務署との見解の相違を生む要因となります。
非上場株式の評価方法
非上場株式の評価には主に3つの方法があります。
類似業種比準方式
上場企業のデータと比較し、企業規模や業績に応じて評価する方法です。評価する会社と、事業が似ている上場会社の株価を基準にして、2つの会社の「1株あたり配当金」、「利益」、「純資産」の3要素を比較して評価します。
純資産価額方式
資産価額方式とは、会社が持っている資産の価値から負債を差し引いて株式の評価額を算出する方法です。たとえば、会社の現金、不動産、設備などの総資産の金額から借入金や未払い金などの負債を引いた純資産額を基に株価を決めます。この方法は、特に資産が多い会社や収益が安定していない会社に適用されることが多く、会社の実際の財産価値に近い評価ができます。
配当還元方式
配当還元方式は、会社が支払う配当金の額を基に株式の評価額を算出する方法です。具体的には、株主が受け取る年間配当金を一定の利回り(通常10%)で割り戻して株価を決定します。この方法は、小規模な株主や経営に関与しない相続人が保有する株式の評価に使われることが多く、会社の利益ではなく配当の実績を重視するため、評価額が比較的低く抑えられる傾向があります。
企業の規模や業態により、これらの方法を組み合わせて使用することもあります。
評価額が相続税に与える影響
非上場株式の評価額が高く算定されると、相続税額が膨大になるリスクがあります。しかし、非上場株式は現金化が難しいため、高額な相続税の納税資金を確保することが大きな課題となります。このため、事前に評価方法を理解し、適切な相続対策を講じることが重要です。
家族経営ならではの相続トラブルとその防止策
経営権の争いと家族間の意見対立
家族経営企業における相続では、経営権を巡る争いが大きな問題となることがあります。たとえば、経営方針の違いや、株式の分割を巡る意見の食い違いが、家族間の対立を引き起こすケースです。有名な事例として、大塚家具の創業者とその娘との間で起きた経営方針を巡る対立が挙げられます。こうした争いは、単なる家族内の問題にとどまらず、企業の経営安定にも深刻な影響を与えるため、事前の話し合いと透明な事業承継計画が不可欠です。
相続税の納付による経営資金圧迫
非上場株式は市場で簡単に売却できないため、相続税の納付に必要な現金を用意することが困難です。高額な相続税が発生すると、経営資金が圧迫され、最悪の場合、事業の継続が危ぶまれることもあります。これを防ぐためには、納税資金の事前準備や、生命保険の活用、さらには事業承継税制による納税猶予の特例を利用することが重要です。適切な対策を講じることで、経営の安定と家族の和を守ることができます。
スムーズな承継のための具体的ステップ
相続前の準備が成功の鍵
家族経営企業の円滑な承継を実現するためには、相続前の準備が最も重要です。まず、生前贈与を活用することで、相続税の負担を分散させることが可能です。特に非上場株式の一部を生前に贈与することで、後継者への権限移譲もスムーズに進められます。また、株式の整理や遺言書の作成も不可欠です。遺言書には、相続人の範囲や財産の分配方法を明確に記載することで、相続後の家族間のトラブルを未然に防ぐことができます。遺言がない場合、法定相続分に基づいた分割(*)が強いられ、経営権の分散や対立の原因となることがあります。
(*) 株式が複数の相続人に分散し、経営の意思決定が遅れるリスクや、経営方針を巡る対立が発生します。経営に関与しない相続人が、株式の買い取りもしくは代償金の支払いを求め、会社の資金繰りが悪化する危険もあります。
専門家の活用がもたらすメリット
相続や事業承継は複雑な法的・税務的手続きが伴うため、税理士・行政書士・弁護士などの専門家の助けを借りることが非常に有効です。税理士は相続税の最適化や事業承継税制の適用をサポートし、行政書士は遺言書作成や必要書類の整備を迅速に進めます。さらに、弁護士は家族間の意見対立が生じた場合の法的アドバイスや調整役として機能します。専門家の力を借りることで、手続きの効率化はもちろん、トラブルの未然防止にもつながります。
家族全員での事業承継計画の策定
最後に重要なのは、家族全員が納得できる事業承継計画の策定です。透明性のあるコミュニケーションを通じて、後継者の選定や財産分配について家族全員が共通理解を持つことが、トラブルを回避する鍵となります。定期的な家族会議を設け、各メンバーの意見を反映した形で計画を進めることで、信頼関係を維持しつつ円滑な承継が可能になります。早期の話し合いと綿密な計画こそが、家族と企業の未来を守る最良の方法です。
結論:早めの準備で家族も会社も守る
「備えあれば憂いなし」。家族経営企業において、事前準備はトラブルを未然に防ぐ最良の手段です。相続時の混乱を避けることで、家族の絆を守り、企業の安定も確保できます。遺言書の作成や株式整理を怠れば、経営権の分散や対立を招くリスクがあります。まずは、現状の資産状況を把握し、税理士や行政書士などの専門家に相談することが第一歩です。早めの行動が、企業と家族の未来を守る鍵となります。行政書士井戸規光生事務所では、家族経営企業の相続や事業承継に関するお悩みを丁寧かつ的確にサポートいたします。遺言書の作成から非上場株式の評価、事業承継計画の策定まで、一人ひとりに合った最適なプランをご提案します。初回相談は無料でございます。ぜひお気軽に、お電話(052-602-9061)、FAX(050-1545-5775)、お問い合わせフォーム、もしくはEメール ido.kimioアットマークofficeido からご相談ください。大切な家族と会社の未来を守る第一歩を、ぜひ一緒に踏み出しましょう。