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死後離婚とは?:配偶者の家族との関係を整理する姻族関係終了届の注意点
近年、「死後離婚」という言葉を耳にする機会が増えてきました。この言葉は少しショッキングに聞こえますが、実際には法律に基づいた手続きである「姻族関係終了届」の通称として使われています。これは、配偶者が亡くなった後に、その家族(義理の両親や兄弟姉妹)との法律上の縁を解消するための届け出です。 義理の家族との関係に悩む方や、新たな人生を歩むために一歩を踏み出したいと考える方にとって、この手続きは大きな選択肢となり得ます。一方で、「死後離婚」という選択にはメリットだけでなく、注意しなければならない点も多く含まれています。 このブログでは、「姻族関係終了届」の基本から、その手続き方法や注意点、さらに届け出を行う際に押さえておきたいポイントについて解説します。義理の家族との関係を見直したいと考えている方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
死後離婚とは?
「死後離婚」とは何か
「死後離婚」とは、正式には「姻族関係終了届」のことを指し、配偶者が亡くなった後に義理の家族(配偶者の親族)との法的な関係を解消するための手続きです。この届け出を提出することで、法律上の義理の家族との関係が切れるため、扶養義務がなくなり、関係の拘束を受けることがなくなります。
最近注目される背景
「死後離婚」が注目される理由には、現代の家族関係の多様化があります。義理の家族との関係に苦痛を感じたり、亡くなった配偶者の親族との関係を負担に思ったりする人が増えているのです。また、配偶者がいなくなった後、自分の人生を新たにスタートさせたいと考える人が多いことも一因です。特に女性がその自由を求めてこの手続きを選択するケースが目立ちます。戸籍統計データを見ても、「姻族関係終了届」の件数は令和4年度には3,065件、令和5年度には3,159件と一定のニーズがあることがわかります。
正式名称「姻族関係終了届」について
「姻族関係終了届」は、日本の戸籍法に基づく正式な手続きです。市区町村役場で届け出を行うことで効力が発生し、義理の家族から法的に解放される一方で、義理の家族側も扶養義務などの責任を負わなくなります。この制度は、個人の選択を尊重するために設けられたものであり、今後もその重要性が高まると考えられています。
姻族関係終了届の仕組みと効果
提出するとどうなる?
「姻族関係終了届」を提出すると、亡くなった配偶者の親族(義理の家族)との法的な関係が解消されます。これは、戸籍法に基づく手続きであり、届け出を行うことで義理の親族に対する扶養義務や法的な縛りがなくなることを意味します。例えば、義理の両親の介護や扶養といった責任がなくなり、義理の家族も届け出を行った側に対する法的な請求ができなくなります。このように、義理の家族関係を整理し、新しい人生を始めるための重要な手段と言えます。
影響を受けない事柄
一方で、姻族関係終了届を提出しても影響を受けない事柄もあります。例えば、亡くなった配偶者の親族と親しい関係がある場合、それを続けることは法的に制限されません。義理の家族との関係解消はあくまで法的な効力に限られるため、実際の人間関係は本人たちの意思次第で継続することが可能です。また、子どもがいる場合、その子どもと祖父母(亡くなった配偶者の両親)との関係にも影響はありません。祖父母が孫に会う権利や孫に財産を相続させる権利は、姻族関係終了届によって変更されることはないため、家族としてのつながりを維持したい場合も安心です。
提出できる人の条件
この届け出は、亡くなった配偶者がいる人だけが行うことができます。また、届け出は本人の意思に基づくものであり、義理の家族の同意は不要です。この点からも、姻族関係終了届は個人の選択を尊重するための制度であることがわかります。義理の家族との関係に悩む方や、新しい人生を見据えたい方にとって、この手続きは自由な選択肢の一つとなります。
姻族関係終了届と相続
配偶者が亡くなった後の相続関係
配偶者Aが亡くなり、亡くなった配偶者との間に子がいない場合、相続人は、故人の配偶者である自分と、故人の親となります。この場合、法定相続分は配偶者が財産の3分の2、親が3分の1です。この仕組みは、配偶者が姻族関係終了届を提出し、法的に義理の家族との関係を解消していた場合でも、全く変わりません。相続は法律で定められたルールに基づくものであり、「死後離婚」による影響を受けないのです。
③配偶者が亡くなり、その後配偶者の親が亡くなった場合
自分との間に子どもがいる配偶者Aが、Aの親や兄弟姉妹より早く亡くなり、死後離婚し、その後Aの親が亡くなった場合、相続人は通常、Aの兄弟姉妹と、自分とAとの間の子(代襲相続)です。この場合も、姻族関係終了届を提出していても、相続に影響を与えることはありません。
姻族関係終了届は相続権に影響しない
姻族関係終了届を提出すると、義理の家族との法的な関係は切れますが、相続における権利や分配のルールは変わりません。姻族関係終了届を出したことによる感情的なしこりは残るかもしれませんが、相続人としての権利は主張できます。 また、相続放棄をする場合は、死亡から3か月以内に家庭裁判所に申し立てをしなければなりません。姻族関係終了届を提出しても、相続放棄をしたことにはなりません。
手続き方法
姻族関係終了届は簡単で、本籍地または住所地の市区町村役場の窓口に提出して受理されれば終了です。届け出人以外の人の同意は必要なく、家裁の許可も不要です。提出期限もありません。
必要書類等
・姻族関係終了届
・戸籍謄本
・本人確認書類(免許証、マイナンバーカードなど)
・印鑑
姻族関係終了届を提出しても変わらないこと
相続関係以外に、姻族関係終了届を提出しても変わらないこととして以下の3つがあります。
姓(名字)
姓(名字)を婚姻前のものに変えたい場合は、別の手続き(復氏届)が必要です。
子供と配偶者の血族の関係
姻族関係終了届によって自身と姻族(配偶者の血族)の関係は絶たれますが、子供と配偶者の血族の関係は変わりません。姑や舅は子供にとって祖母・祖父であることに変わりはありません。
遺族年金の受給資格
姻族関係終了届を提出しても、遺族年金の受給資格はなくなりません。
まとめ:死後離婚を選ぶ前に考えるべきこと
姻族関係終了届を提出するかどうかは、あくまで個人の選択であり、正解は一つではありません。この手続きは義理の家族との関係を法的に解消するものですが、感情的な側面や将来の生活への影響を十分に考慮する必要があります。特に、義理の家族との関係が悪化する可能性や、必要な協力を得られなくなるリスクについても慎重に検討すべきです。 また、手続き後も相続など法的な権利や義務に与える影響は限られているため、自身の状況に応じて冷静に判断することが求められます。迷いや不安がある場合は、専門家である行政書士に相談することで、適切なアドバイスを得て納得のいく選択ができるでしょう。 行政書士井戸規光生事務所では、相続診断士の資格を有する行政書士が、ご依頼者様一人ひとりの状況に合わせて、遺言書作成のサポートや相続手続きを代行いたしております。姻族関係終了届(死後離婚)をお考えの方にも、状況を伺って上で適切な助言と、手続きのサポートを行います。初回相談は無料ですので、ぜひお気軽にお電話やお問い合わせフォームからご相談ください。