相続手続きが進まない!行方不明・未成年・認知症の相続人をどう扱う?

相続手続きは、相続人全員の協力が必要です。しかし、相続人の中に「行方不明」「未成年」「認知症」の問題がある場合、手続きが大きく滞ることがあります。行方不明者がいる場合、遺産分割協議を進めるためには「不在者財産管理人」の選任が必要となり、未成年者の場合は親権者の代理が可能ですが、利益相反の問題が生じた場合には「特別代理人」の選任が求められます。また、認知症の相続人には「成年後見人」を立てる必要があり、場合によっては特別代理人が必要となることもあります。このように、相続人に特別な事情がある場合、適切な手続きを踏まないとトラブルが生じる可能性が高いため、慎重な対応が求められます。本記事では、それぞれのケースにおける対応方法を詳しく解説します。

目次

はじめに

相続手続きが順調に進まない場合、その原因は相続人の中に特別な事情を抱える人がいることが多いです。行方不明、未成年、認知症など、個々の相続人に特別な状況がある場合、適切な手続きを踏むことが必要です。本記事では、これらのケースに対する対応方法を解説し、スムーズに相続手続きを進めるためのポイントを紹介します。

行方不明の相続人への対応

不在者財産管理人の選任

行方不明の相続人がいる場合、その相続人の権利を確定し、遺産分割協議を進めるためには「不在者財産管理人」の選任が必要です。この手続きにより、行方不明者の代理人を立てて、協議を進めることが可能になります。不在者財産管理人は、家庭裁判所に申し立てて選任することができ、相続手続きが滞ることなく進むようになります。

失踪宣告の申し立て

行方不明者が生きているかどうかも分からない場合には、失踪宣告を申し立てるという選択肢があります。失踪宣告とは、一定期間生死が不明である人を、法律上死亡したものとみなす制度です。この申し立ては、行方不明者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。申立人には、配偶者や親族などの利害関係人が該当します。通常、7年間生死不明であれば失踪宣告を申し立てることができますが、戦争や災害などの特別な事情がある場合には1年で申し立てが可能なケースもあります。手続き自体には数ヶ月かかりますが、前提となる行方不明期間が長いため、すぐに利用できる制度ではありません。将来を見据えた手段として理解しておくことが重要です。

未成年の相続人への対応

親権者による代理と利益相反の問題

未成年者が相続人である場合には、その者が単独で法律行為を行うことができないことから、親権者が代理人として遺産分割協議に参加することが一般的です。しかし、親権者自身も相続人である場合には、親権者と未成年者との間に利益が相反する可能性があることに注意が必要です。このような状況において親権者がそのまま代理人となることによって、不公平な結果を生じさせるおそれがあります。

  • 男性Aが亡くなり、妻Bと子Cの2人が相続人で、Cは未成年だとします。BとCの遺産分割で、BがCの代理をすることはできません。「Bは親として、子どもCの不利益になる事をするはずがない」や、「未成年の子Cに多額の財産が渡るのは好ましくないから、母親であるBが全てを相続し、財産をCの養育費、教育費に充てる」といった事情は通らないのが現状です。たとえ親子でも「利害相反する関係」とされてしまいます。

特別代理人を選任することの意義

親と子の利益が対立する場合には、家庭裁判所に「特別代理人」を申し立てて選任してもらうことが必要です。特別代理人を立てることによって、未成年者の利益を中立的・客観的に守りながら、公正な遺産分割協議を実現することができます。この手続きによって、協議内容の有効性を確保し、後の無効主張やトラブルを回避することにもつながります。

認知症の相続人への対応

成年後見人を選任することの必要性

認知症の相続人がいる場合には、その者が自らの意思で法的行為を行うことができないため、遺産分割協議に参加することができないことが原則です。このような状況においては、家庭裁判所に「成年後見人」を申し立てて選任してもらうことによって、成年後見人が相続人本人の代理人として手続きを進めることが可能となります。成年後見人の選任は、遺産分割の有効性を確保するために欠かせない手続きです。

利益相反がある場合の特別代理人の活用

成年後見人が親族である場合や、他の相続人と利害関係がある場合には、相続人本人と成年後見人との間に利益相反が生じる可能性があることに留意しなければなりません。このようなときには、遺産分割協議に限って「特別代理人」を選任することが必要となります。特別代理人を立てることによって、認知症の相続人の利益を公正に保護することができるため、慎重な対応をとることが求められます。

まとめ

相続手続きが進まない原因として、行方不明、未成年、認知症の相続人が絡むケースは非常に複雑です。しかし、適切な手続きを踏むことで、これらの問題を解決し、相続をスムーズに進めることができます。特別な事情を抱える相続人がいる場合、専門家に相談し、法的な手続きを確実に行うことが大切です。相続を円滑に進めるためには、早期の対応が重要です。行政書士井戸規光生事務所では、こうした複雑な相続案件にも対応しており、不在者財産管理人や成年後見人、特別代理人選任の申立て書類の作成、必要添付書類の取得や整備を行っております。家庭裁判所に提出する申立書類の作成(不在者財産管理人、成年後見開始申立て、特別代理人の選任など)初回相談は30分無料ですので、お電話052-602-9061またはEメールido.kimioアットマークofficeido.com、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

2024年に「行政書士 井戸 規光生 事務所」を設立しました。
建設業、遺言・相続サポート業務に特化した名古屋市南部の地域密着型事務所です。
高校時代はラグビー部に所属。地元名古屋のスポーツチームを応援しています。

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