相続税がかかる? 相続不動産の価値を調べる方法を解説

相続が発生した際、最も気になるのは「相続税がいくらかかるの?」という点ではないでしょうか。特に、相続財産の中に不動産が含まれている場合、その評価額によっては相続税が発生する可能性が高まります。不動産は評価額が大きくなることが多いため、正確にその価値を把握しておくことが非常に重要です。しかし、一般の方には不動産の評価方法がわかりにくいことが多いでしょう。この記事では、相続税がかかるかどうかを判断するために、不動産の価値をどのように調べるか、具体的な方法をわかりやすく解説します。これを読んで、不動産の相続に関する不安を少しでも解消していただければ幸いです。

目次

相続税と不動産の価値の関係

相続税がかかるかどうかは、相続財産の総額が基礎控除額を超えるかどうかで決まります。現在の基礎控除額は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」と定められています。  

相続財産がこの基準を超える場合、相続税が発生します。不動産が相続財産において重要な要素となる理由は、高額になりやすい点にあります。例えば、都市部や開発が進んでいるエリアでは高額な評価がつくことが多いです。 また、土地は分割して相続するのが難しいため、相続人間での遺産分割が複雑化する要因にもなります。 さらには、相続税は相続開始から10か月以内に申告しなければならず、「現金一括納付」が原則ですので、高額な不動産を相続したけれど、現金はあまりない場合は相続税納付に大きな苦労を強いられます。

こうした背景から、不動産の正しい評価は相続税の算出において極めて重要です。不動産を過小評価してしまうと、後に税務調査で追徴課税を受けるリスクがあり、逆に過大評価すれば過大な相続税を支払うことになります。不動産の評価には「固定資産評価証明書」や「路線価」などの基準が用いられますが、場合によっては不動産鑑定士による専門的な評価が必要となることもあります。

相続財産を把握する方法

まずは被相続人(故人)が、どこに不動産を所有していたのかを確認しなければなりません。故人が所有していた不動産を確実に調べるための手段として、最も便利なのが「固定資産納税通知書」です。毎年不動産の所有者に送られますので、記載されている不動産が故人の所有不動産です。

 しかし、固定資産納税通知書だけでは非課税の土地が漏れてしまいます。そんな時に役立のが「名寄帳」です。名寄帳とは、不動産の所有者ごと、つまり個人ごとに所有している不動産の一覧をまとめた台帳で、市区町村の役所が管理しています。この書類には、所有者が持っているすべての土地や建物の情報が記載されているため、相続に際して、特に複数の不動産を所有している場合には極めて有用です。僻地に存在する不動産、非課税の不動産、共同所有の不動産なども調べられますが、市町村ごとに請求して調査しなくてはいけない、その年の1月1日時点の情報であること、法人で持っていた場合は別で請求しなくてはいけないなどの注意点もあります。行政書士などが代理で請求することもできます。 

名寄帳は、不動産が所在する市区町村役場の固定資産税課などで取得することができます。窓口での申請や郵送でも対応可能で、通常は所有者の相続人がその旨を証明する書類を提出することで取得できます。見逃しがちな土地を発見するためのコツは、相続人が把握していない地域の名寄帳も確認することです。特に、過去に先代が所有していた土地が複数の地域に分散している場合、思わぬ相続財産が見つかることがあります。

不動産の評価方法の基本「固定資産評価証明書」とは?

相続不動産の価値を知るための最初のステップとして、「固定資産評価証明書」の確認が重要です。固定資産評価証明書とは、市町村が毎年発行するもので、固定資産税を計算するための基礎となる不動産の評価額が記載されています

固定資産評価証明書を窓口で取得する場合、市区町村の役所や出張所等で取得できます。 窓口だけでなく郵送で取得する方法もあります。 証明書を請求できるのは、固定資産の所有者、同居の家族、相続人、委任状を持つ代理人などです。評価額は、相続税の計算において、例えば路線価など他の評価基準と併用されることが多く、これにより不動産の相続税評価額をおおよそ把握することができます。適切な相続税対策を講じるためにも、この評価額をしっかり確認することが大切です。

固定資産税課税明細書で確認

「固定資産税課税明細書」も重要な資料のひとつです。固定資産税課税明細書とは、毎年市区町村から送られてくる固定資産税の納税通知書に同封される書類で、不動産に対して課される固定資産税の課税根拠となる評価額が詳しく記載されています。この評価額は、市場価値とは異なりますが、相続税を算出するための不動産評価額の大まかな目安を把握するうえで非常に有用です。固定資産税課税明細書に記載された評価額は、市町村の評価基準に基づいて算出されており、「固定資産税評価額」と呼ばれます。これは固定資産税の算出基礎として利用されるため、固定資産税額が高ければ高いほど、その不動産の価値も高いです。

固定資産税課税明細書を使った相続不動産の簡易評価方法

固定資産税課税明細書に基づいて相続不動産の評価を行う簡易な方法は、固定資産税評価額に1.1~1.3倍程度をかけるというものです。一般的に、相続税の評価額は固定資産税評価額よりもやや高めに設定されることが多いため、この方法を使うと相続税の評価額をおおまかに把握することができます。たとえば、固定資産税評価額が1,000万円であれば、相続税の評価額は約1,100万円から1,300万円になる可能性があります。

路線価を使った不動産の詳細な評価方法

不動産評価の中でも「路線価方式」は最も一般的かつ標準的な方法です。路線価とは、国税庁が毎年公表する、道路に面する標準的な土地の1平方メートルあたりの価格のことを指します。この路線価は、相続税や贈与税の計算基準となり、特に都市部や市街地の土地評価において重要な役割を果たします。路線価は、土地が面している道路ごとに設定されています。路線価は、一般的に毎年7月に最新のデータが国税庁によって公開されます。各地域の不動産市場や地価の変動を反映しつつも、路線価は実際の市場価格よりやや低めに設定されることが多いです。

路線価を使った土地の評価方法

路線価方式を使った土地の評価は、次のように行います。まず、路線価 × 土地の面積を基本として評価額を算出します。たとえば、路線価が1平方メートルあたり20万円で、土地の面積が100平方メートルであれば、20万円 × 100平方メートル = 2,000万円がその土地の評価額となります。さらに、土地の形状や奥行き、間口などの条件によって、補正率を適用し、減額または増額される場合もあります。

路線価が適用されない土地の評価

路線価が適用されるのは、主に市街地や商業地域、住宅地など、土地が道路に面している地域です。しかし、郊外や山間部などの路線価が設定されていない地域では、別の評価方法が使われます。その場合、固定資産税の評価額に「倍率」を掛ける「倍率方式」が用いられます。この倍率は、国税庁が地域ごとに定めたもので、農地や山林、宅地など土地の種類に応じて異なります。たとえば、ある地域の固定資産税評価額が500万円で、国税庁が定めた倍率が1.2倍の場合、その土地の相続税評価額は500万円 × 1.2 = 600万円となります。

国税庁のウェブサイトで路線価を調べる方法

路線価を調べるためには、国税庁のウェブサイトを利用するのが最も簡単です。まず、国税庁の「財産評価基準書 路線価図」のページにアクセスします。そこでは、都道府県別に路線価が公開されており、土地が面する道路ごとの価格を調べることができます。調べたい土地の住所や地番を入力し、該当する地域の路線価図を閲覧することで、土地の路線価がすぐに確認できます。また、路線価が設定されていない地域であれば、倍率方式で評価を行うため、倍率表も同じページで確認できます。

路線価を利用した不動産評価の実例

仮に、東京都渋谷区のある道路に面する土地の路線価が1平方メートルあたり50万円と設定されていたとします。該当の土地の面積が200平方メートルであれば、基本的な評価額は50万円 × 200平方メートル = 1億円となります。この土地の奥行きが長く、利用価値が若干制限される場合、奥行補正率(例えば0.9)を適用します。そうすると、最終的な評価額は1億円 × 0.9 = 9,000万円となります。

不動産評価の専門家に依頼する必要性

相続不動産の評価は、土地の形状や立地、特殊な条件によって非常に複雑になる場合があります。特に、評価額が高額になる可能性がある場合には、不動産鑑定士などの専門家に依頼することが有効です。専門家による評価は、正確で信頼性が高く、相続税の過不足を防ぐことができます。 専門家に依頼することで、適正な評価が行われ、後のトラブルを回避できます。依頼した場合の費用は、数十万円程度が一般的です。特に、複雑な形状の土地や、再開発予定地では、不動産鑑定士に依頼したほうが良いです。

まとめ

 不動産の正しい価値を把握することが、相続税対策の第一歩となります。固定資産評価証明書や路線価を使った方法から、専門家の鑑定に至るまで、ケースに応じた評価方法を選択することで、不要な税負担を避け、円滑な相続手続きが進められます。行政書士 井戸 規光生 事務所では相続診断士の資格を持つ行政書士が、ご依頼者様それぞれの事情に沿って、遺言書の作成サポートや、煩雑な必要書類の取得など、相続手続きの代行を行います。 また、相続財産に不動産が含まれており、その価値の算出が複雑な場合は不動産鑑定士を、相続税に関するお悩みには税理士を、また、万が一相続人間でのトラブルが発生した場合には提携の弁護士を紹介し、ご依頼者様の負担が少ない形で諸手続きを進めてまいります。初回相談は無料ですので、お電話、お問い合わせフォームなどから、是非お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

2024年に「行政書士 井戸 規光生 事務所」を設立しました。
建設業、遺言・相続サポート業務に特化した名古屋市南部の地域密着型事務所です。
高校時代はラグビー部に所属。地元名古屋のスポーツチームを応援しています。

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