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知らないと危険!遺産相続に潜む詐欺の手口と防止策
遺産相続は、故人の思い、財産を受け継ぐ大切なプロセスですが、同時に詐欺の温床にもなりがちです。近年、遺産を不正に手に入れようとする詐欺行為が増加しており、その手口はますます巧妙になっています。相続人を装った者や偽の遺言書を持ち出す者など、様々なトラブルが報告されています。本ブログでは、遺産相続に潜む詐欺の具体的な手口と、その対策について詳しく解説します。安心して相続手続きを進めるための知識を身につけ、あなたや大切な家族を守りましょう。
遺産相続における詐欺の実態
令和以降、遺産相続に関連した詐欺事件は増加傾向にあります。相続の場面でよく見られる詐欺的行為には、以下のような手口が多く報告されています:
主な詐欺手口
- 遺言書の偽造・変造・破棄
- 相続人でない人物が相続権を主張
- 遺産を管理する権限がない者が管理者を名乗る
- 生前贈与があったことを隠す
- 遺産の一部を隠す
- 相続財産の売却額を低く伝える
- 相続手続き費用を水増しして報告する
これらの詐欺行為が発生しやすい理由として、相続財産の複雑性や相続人同士の情報格差があり、詐欺行為が発覚しにくいことが指摘されています。そのため、弁護士や専門家による相続財産の調査や協議の監督が有効な対策として挙げられています。
相続で詐欺をおこなうとどうなる?
詐欺的行為を行った相続人は、相続人としての地位を失う可能性があります。これは、法的に「相続欠格」と呼ばれる制度に基づきます。
相続欠格とは?
相続欠格は、法律上当然に相続権を失うことを意味します。つまり、詐欺や不正な行為によって相続の公平性が損なわれた場合、相続欠格が適用され、該当する相続人は相続権を失います。
具体的には、以下のような行為が該当します。
- 遺言書を偽造・変造・破棄した場合
- 相続人の一部が他の相続人をだまして不正に遺産を取得しようとした場合
なお、相続欠格となった場合でも、その者に代わる代襲相続(相続欠格者の子などが代わりに相続すること)が発生する可能性があります。例えば、欠格となった相続人に子がいる場合、その子が相続権を引き継ぐことが法律上認められています。
遺産分割のやり直し
詐欺的行為が発覚した場合、遺産分割協議は無効となり、遺産分割がやり直されることになります。遺産分割の無効が確認されると、遺産分割協議自体をやり直し、公正な手続きで再度協議が行われることになります。
詐欺的行為による不正な相続があった場合、他の相続人が該当の協議を無効とするために調停や訴訟を起こすことが一般的な対応です。これにより、不当な利益を得た相続人からの返還や、再度の公平な遺産分割が実現されます。詐欺的行為が認められた場合の影響は非常に大きく、法律上の相続権の剥奪や財産返還の義務が生じることになります。
詐欺の防止策
遺産相続における詐欺を防ぐためには、いくつかの重要な対策があります。まず、「遺言書の公正証書化」が有効です。公正証書遺言は公証役場で作成され、法的に確実な遺言書とされるため、偽造や変造のリスクを大幅に減らせます。また、公証人が遺言者の意思を確認し作成するため、内容の正確性も保証されます。
次に、相続の際に問題が発生する前に「専門家への相談」が推奨されます。行政書士や弁護士は、相続に関する法的な知識を有しており、相続財産の調査や分割協議のサポートを通じて、詐欺的行為を未然に防ぐことができます。
最後に、「相続人の確認」も重要な手続きです。被相続人(故人)の戸籍謄本などを取得して、本当の相続人が誰であるかを確定し、正当な遺産分割が行われるように確認することで、不正な相続人の主張を排除できます。これらの対策を講じることで、詐欺による被害を未然に防ぐことが可能です。
相続詐欺行為が疑われる場合の対処法
被害状況について他の相続人と共有する
詐欺的行為が疑われる場合、まず被害状況を他の相続人や関係者に共有することが重要です。相続は複数の人が関わることが多いため、早期に情報を共有することで、他の相続人と協力して解決に向けた行動を取ることができます。
被害の内容に応じた方法で対処する
詐欺行為の内容によっては、状況に応じた法的対応が必要です。例えば、遺言書の偽造や遺産隠しの場合には、相続財産の調査や証拠の収集が重要になります。弁護士に相談することで、具体的な対策や法的な手続きがスムーズに進みます。
遺産分割協議をやり直す
詐欺行為が明らかになった場合は、遺産分割協議をやり直す必要があります。まず、詐欺によって不正な内容で合意された遺産分割協議書は無効とされます。再度、正当な相続人同士で協議を行い、法律に基づいた新たな遺産分割協議書を作成します。
遺産分割の無効確認調停を申し立てる
協議での解決が困難な場合は、家庭裁判所に無効確認調停を申し立てることができます。この調停では、裁判所が第三者として介入し、詐欺的行為によって成立した遺産分割が無効であるかを検討し、再協議の場を設けます。申立書を裁判所に提出し、当事者全員が参加する形で調整が行われます。
遺産分割の無効確認請求訴訟を提起する
調停で解決しない場合は、無効確認訴訟を提起します。訴訟では、詐欺行為の証拠を基に裁判が行われ、最終的に裁判所が遺産分割の無効を判断します。訴訟手続きは複雑なため、弁護士に依頼して進めるのが一般的です。訴訟の結果によって、遺産分割がやり直されます。
詐欺行為があった遺産分割を取り消す際の注意点
時効に要注意
遺産分割の取消権には消滅時効があります。詐欺行為によって無効な遺産分割が行われた場合、その取消権は詐欺の事実を知った日(=だまされたことに気づいた日)から5年以内に行使しなければなりません。または、詐欺が行われた時点から20年以内に請求しないと、取消権は消滅します。
善意無過失の第三者に遺産が渡った場合は?
詐欺的行為で得た遺産が善意無過失の第三者に渡った場合、その遺産は原則として取り戻すことができません。たとえば、不動産が詐欺により売却され、その購入者が詐欺に加担していなかった場合、その不動産を取り返すことは難しくなります。この点は詐欺被害者にとって不利な状況を生む可能性があるため、詐欺的行為が発覚した際には迅速な対応が必要です。(善意無過失:善意無過失とは、このケースでは、「詐欺があったことを知らない状態で、詐欺などあるはずなかったと信じることに過失がない」ことを意味します。)
払う必要がなかった税金がかかるケース
詐欺行為による無効な遺産分割が行われた場合でも、相続税の申告や納税は一度行われることが一般的です。その後、詐欺が発覚して遺産分割がやり直されると、結果的に本来払う必要がなかった税金がかかるケースがあります。特に相続税の申告後に遺産の評価額が変わった場合、再計算が必要になり、過大に納税した金額が返金される場合もありますが、その手続きには時間と労力がかかります。
遺産相続に関する詐欺で所有権が移動してしまった場合の対処法
遺産の明渡し・引渡しを求める
詐欺によって相続財産が不正に他者に渡ってしまった場合、遺産の明渡し・引渡しを求めることが可能です。この手続きでは、まず家庭裁判所に調停や訴訟を提起し、詐欺行為があったことを証明しなければなりません。証拠を集め、詐欺による不正取得が認められると、裁判所の命令で不正に取得された財産の返還を求めることができます。主に、不動産や現金などの資産が対象になります。
不動産の所有権登記は真の権利者に移転させる
不動産が詐欺によって不正に取得された場合、所有権登記を真の権利者に移転させることが可能です。まず、詐欺行為に基づく登記が無効であることを主張するために、家庭裁判所での無効確認訴訟や調停を行います。この過程で詐欺の証拠が認められると、登記の抹消手続きを行い、その後、正当な相続人に名義を変更するための登記手続きが行われます。不動産登記を真の権利者に戻すには、裁判所の判決や調停の結果に基づく正式な手続きを踏む必要があります。
まとめ
遺産相続における詐欺行為は、財産の不正取得や不公平な相続を招く重大なリスクです。詐欺が疑われる場合には、速やかに弁護士へ相談し、明渡しや所有権登記の変更など適切な対策を講じることが重要です。また、遺言書の公正証書化や相続人の確認を徹底することで、トラブルを未然に防げます。リスクを理解し、早期に行動を起こすことが、安心できる相続手続きの鍵となります。行政書士 井戸 規光生 事務所では相続診断士の資格を持つ行政書士が、ご依頼者様それぞれの事情に沿って、遺言書の作成サポートや、詐欺が起こらないよう、慎重な相続手続きの代行を行っております。詐欺が疑われるケースも、提携弁護士と連携し、速やかな問題解決を行います。初回相談は無料ですので、お電話、お問い合わせフォームなどから、是非お気軽にご相談ください。