社長が急に亡くなったら…会社と家族はどうなる？いまから備える“相続×事業承継”の話　

はじめに

経営者の相続は、単に財産を分ける手続きにとどまりません。そこには、自社株を誰が引き継ぐのか、会社の土地や設備といった事業資産をどう扱うのか、そして後継者にスムーズに経営をバトンタッチできるのかといった、複雑に絡み合う課題が存在します。これらの問題は、相続が「起きてから」では手遅れになることも少なくありません。だからこそ、経営者自身が元気なうちに、事前に整理し、備えておくことが何より重要です。本記事では、そんな経営者のために、今すぐ検討しておきたい３つの視点を紹介します。　

「自社株の相続で会社が止まる！？」

株式の分散が引き起こす「経営の停滞」

中小企業の多くでは、発行済株式の大半がオーナー社長個人の名義となっており、それが社長の死後、相続によって複数の相続人に分散されると、会社の経営に重大な支障をきたすことがあります。たとえば、社長の子ども３人が平等に株式を取得した場合、経営の方針について意見が割れ、「誰が社長になるのか」「誰が発言権を持つのか」といった問題で社内が混乱し、意思決定が進まなくなるリスクが生じます。このような状況は、企業の信用や取引先との関係にも悪影響を及ぼしかねません。

経営権の集中で事業を守る方法

こうしたトラブルを未然に防ぐには、後継者となる人物に株式を集中させて承継することが極めて重要です。具体的には、社長が生前に贈与を行う方法、あるいは遺言によって明確に配分を指示する方法が考えられます。また、家族信託を活用すれば、一定期間は信頼できる人物に経営を委ねつつ、最終的な株式の移転先も設計することが可能になります。いずれにせよ、「経営者としての意志」を文書にして残すことが、企業の継続と家族の安心につながります。

会社の土地や設備も「争族」の火種に

「共有」によって生じる不公平感

中小企業の経営に欠かせない工場、店舗、倉庫といった事業用不動産は、その多くが社長個人の所有であり、相続の際には他の財産と同様に分割対象となります。しかし、不動産は現金と違って物理的に分けることができず、売却も容易ではありません。そのため、たとえば長男が会社を継ぎその不動産を使い続ける一方で、次男・三男は「自分たちは何ももらっていない」と感じ、感情的な対立を引き起こすことがあります。このような共有による対立は、相続全体の進行を妨げる要因になります。

「使う人」と「もらう人」の調整がカギ

こうした問題を避けるには、誰がその不動産を利用し、誰が代わりに他の財産を取得するのかといった配分のバランスを、あらかじめ検討しておく必要があります。たとえば、事業用資産を継ぐ相続人には土地や建物を、他の相続人には預貯金や生命保険金を割り当てるといった工夫が考えられます。法定相続分を基準にしつつも、事業継続のためには一定の偏りもやむを得ないという判断を、家族内で共有しておくことが重要です。

「争わない相続」のためにできること　

「なぜこの分け方なのか」を伝える

相続トラブルの多くは、「不公平だ」「聞いていない」という感情から始まります。特に兄弟姉妹間では、普段の関係が良好であっても、遺産の配分をめぐって関係が悪化することも少なくありません。こうした争いを防ぐには、被相続人自身が生前に「誰に何を、なぜ渡すのか」という意思を明確にし、それを文書に残すことが重要です。公正証書遺言であれば、法的な形式を備えたうえで、その意思を確実に伝えることができます。

柔軟な設計には信託が有効

一方、財産の種類や相続人の状況によっては、単なる遺言では対応しきれないケースもあります。たとえば、不動産の管理が長期間にわたる場合や、認知症リスクに備える必要がある場合などです。こうした場合に有効なのが「家族信託」です。信頼できる家族に財産の管理・処分権を委ねつつ、最終的な承継先を指定できるため、柔軟で持続的な相続設計が可能になります。

まとめ

会社も家族も守るためには、相続が起きる「前」に何を準備しておくかがすべてです。経営者自身が元気なうちに、一度立ち止まって、「誰に」「何を」「どのように」承継したいのかを明確にすることが重要です。そのうえで、遺言や家族信託、生前贈与など、どの手段を組み合わせるのが最適かを検討するには、法律や税務の知識が欠かせません。だからこそ、行政書士をはじめとする専門家に早めに相談し、自分だけでは気づけないリスクや課題を整理することが、安心への第一歩となります。行政書士井戸 規光生事務所では、経営者の相続や事業承継に関する無料相談を随時受け付けております。どうぞお気軽に無料相談（初回30分）をご利用ください。お電話０５２－６０２－９０６１またはEメールido.kimioアットマークofficeido.com、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。誠実に、そして丁寧に対応いたします。