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秘密証書遺言のメリットとデメリット:知っておきたいポイント
遺言書は、財産や遺族のための大切な意思表示ですが、内容が外部に知られることを避けたいと考える方も少なくありません。秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしながらも、法的効力を持たせることができる手段です。このブログでは、秘密証書遺言のメリットと注意点を詳しく解説し、適切な遺言書作成のポイントを紹介します。
秘密証書遺言とは
遺言書を作成する際、内容を秘密にしておきたいという要望があります。公正証書遺言にすると、証人が内容を知ってしまいますが、自筆証書遺言にすると、誰にも見られず遺言書を書くことができます。しかし自筆証書遺言では、遺言書が発見されなかったり、紛失や改ざんの危険があったりもします。このような事態に対応できるのが秘密証書遺言です。 秘密証書遺言では、公証役場において遺言の存在証明のみを行ってもらう仕組みです。遺言書は封筒へ入れた状態で公証人へ見せるため、中身を知られる心配がありません。秘密証書遺言は手続きが終われば、遺言書を遺言者が保管します。
秘密証書遺言のメリット
・遺言内容を秘密にできる
・遺言書の偽造や改ざんを防止できる
・パソコンでも作成できる
秘密証書遺言は署名だけは自書する必要がありますが、本文はパソコンで作成できます。秘密証書遺言は遺言者自身が封をして、公証人が封紙に署名します。そのため、きちんと封がさされた秘密証書遺言には改ざんのリスクがありません。
・遺言書が要件を満たさず無効になる可能性がある
・2人の証人が必要
・作成コスト(公証役場で作成するため11,000円の費用)
・家庭裁判所の検認が必要
・紛失の危険がある
秘密証書遺言の作成方法・流れ
公正証書遺言は年間10万通以上作成されているのに対し、秘密証書遺言は100通ほどと、秘密証書遺言は特殊な遺言なので、作成方法はあまり知られていません。
秘密証書遺言の作成手順を解説します。
秘密証書遺言はパソコン作成が認められていますが、署名だけは自筆になります。押印は実印、認印のどちらでも構いません。完成した遺言書は封筒に入れます。封入した後は封印用の印を押します。遺言書に押したものと同一の印鑑を使う必要があります。遺言書に押されている印と、封印の印が違っていると無効です。
作成した遺言書を、*2人の証人と共に公証役場に持っていき、封をしたまま公証人に提出します。
*以下の人物は、証人にはなれません
遺言者の推定相続人と受遺者(遺言によって財産を取得する人)
未成年者
公証人の配偶者や4親等内の親族
公証役場の関係者
証人が揃えば公証役場に出向き、公証人と証人の立ち合いのもとで遺言書を提示し、住所や氏名を申告します。
公証人が遺言者の申告内容と遺言書の提出日を封筒に記入し、遺言者と2人の証人が封筒へ署名・押印を行います。
秘密証書遺言は自分で保管するため、保管場所や保管方法は慎重に検討しておきましょう。
また、開封するとその遺言書は無効です。
秘密証書遺言を作成するときの注意点
公証人が作成してくれる公正証書遺言とは違い、自分で書かなくてはいけない自筆証書遺言や秘密証書遺言は、遺言書の要件を満たさなければ無効になってしまいます。そのためいくつかの注意点があります。
正しい書き方で作成
「託す」「任せる」といった書き方では、財産を相続させるのか、管理だけを任せたいのか、不明瞭です。法定相続人に財産を相続させる場合には場合は「相続させる」と、法定相続人以外に財産を譲る場合は「遺贈する」と書きましょう。
相続財産を正確に書く
A銀行の預金を相続させる、C町の土地を譲る、と書いてもいけません。誰が見ても特定できるような書き方が必要です。
(預金口座)
A銀行 B支店 普通預金 支店番号XXX 口座番号YYYYYYY
(土地)
所在:愛知県名古屋市千種区□□X丁目
地番:YY番Z
地目:宅地
地積:200平方メートル
相続財産すべての承継者を指定する
遺言では、相続財産すべての行先を指定しなくてはいけません。もし漏れがあった場合、揉めてしまい、相続人同士の関係が悪化する危険があります。また、法定相続人の最低限の取り分である遺留分を侵害しないよう、配分に気を付けましょう。
(実際は財産全てを書きだすことは難しく、後から財産が見つかった場合に備えて、「その他すべての財産を遺言者の(続柄)(氏名)( 年 月 日 生)に相続させる」との一文を遺言書に書いておくことが一般的です。)
遺言執行者を決める
遺言書を作成する際、遺言執行者を指定しておくことは非常に重要です。遺言執行者とは、遺言書に記載された内容を確実に実行する責任を持つ人のことです。例えば、財産の分配や名義変更、遺産の整理など、相続手続きがスムーズに進むためには、信頼できる遺言執行者が必要です。執行者がいない場合、手続きが遅れたり、相続人同士のトラブルが生じたりする可能性があります。遺族の負担を軽減し、円満な相続を実現するためにも、遺言執行者を決めておくことをお勧めします。遺言執行者は、相続の専門家へ依頼するのが得策でしょう。
遺言書の付言事項を活用する
遺言書には、財産の分配だけでなく、遺された家族への感謝やメッセージを伝える「付言事項」(詳しくはコチラ)を記載することができます。付言事項は法的拘束力はありませんが、相続人たちに対する思いやりや、遺産分配の意図を伝える大切な役割を果たします。例えば、感謝の気持ちや、相続に関する説明を付言事項に書くことで、遺族の心を癒し、相続に対する誤解や争いを防ぐことができます。付言事項を活用し、遺言書に家族への温かいメッセージを残すことをお勧めします。
秘密証書遺言を検認する方法・必要書類
秘密証書遺言は、家庭裁判所による検認が必要です。勝手に開封すると罰則(5万円以下の過料)もあります。悪意を持って遺言書を隠したり破棄したり書き換えたりした場合には、相続人の資格を失う(相続欠格)こともあります。間違って開封してしまった場合や、もともと封がされていなかった場合でも、検認は必要です。
必要書類を準備する
・遺言書
・遺言者の出生から死亡時までの戸籍謄本(除籍、改正原戸籍)
・相続人全員の戸籍謄本
・遺言書の検認の申立書 以下のリンクからダウンロード可能(https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_17/index.html)
・当事者目録
・800円の収入印紙
・郵便切手
家庭裁判所への申立
必要書類を揃えて家庭裁判所に申し立てを行うと、約1~2ヶ月後に検認期日が設定され、相続人全員に通知が送られます。検認手続き自体は10分程度で終了し、検認済証明書が発行され、遺言書は返却されます。これで遺言書は相続手続きに使用できる状態となりますが、検認済証明書があっても、その遺言書が法的に有効であることを保証するものではありません。検認を経た遺言書でも、内容によっては無効となる場合がありますので、注意が必要です。
まとめ
秘密証書遺言は、公正証書遺言と、自筆証書遺言との「合いの子」のような位置づけでした。しかし、2020年7月10日に始まった、法務局での自筆証書遺言保管制度(詳しくはコチラ)により、秘密証書遺言の利点は薄れ、現在では秘密証書遺言の利用者数は減少しています。確実性では公正証書遺言がまさり、自筆証書遺言でも専門家のアドバイスを得ながら作成できます。秘密証書遺言にするべきかどうか、まず相続の専門家に相談してからでも遅くはないでしょう。
行政書士 井戸 規光生 事務所では相続診断士の資格も持つ行政書士が、ご依頼者様それぞれの事情に沿って、無効にならず、正確に遺言者さまの意思が反映される遺言書作成のサポートや、相続関連手続きの代行を行っています。
その後の相続手続きにおいて、登記が必要な際には司法書士を、相続税に関するお悩みには税理士を、また、万が一相続人間でのトラブルが発生した場合には提携の弁護士を紹介し、ご依頼者様の負担が少ない形で進めてまいります。お電話、メールフォームなどで、是非お気軽にご相談ください。ご連絡お待ちしております。