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遺産はまだ分けるな――“想いを守るための遺産分割の禁止”という選択

「今はまだ、遺産を分けないでほしい」――そう伝えたい想いが、遺言という形をとることがあります。家族の誰かが未成年であったり、気持ちの整理がつかないうちは、遺産を分けることでかえって争いを招くこともあるでしょう。遺産分割は急がなくていい。むしろ“分けない”ことで守れるものがある。そんな選択肢があることを、今こそ知ってほしいのです。このブログでは、「なぜ分けないのか」「いつまで分けないのか」「分けないことで守れるもの」という三つの視点から、“想いを守る遺言”について考えていきます。
「遺産分割の禁止」とは?制度のしくみと法律の根拠
相続が開始されると、多くの場合、相続人たちは「誰が何を相続するか」を協議して決めることになります。これが「遺産分割協議」です。しかし、民法第908条には、「一定期間、遺産分割を禁止する」ことができる制度が定められています。これは、被相続人の遺言や相続人間の合意、あるいは家庭裁判所の判断により、最大5年まで遺産の分割を保留にできる仕組みです(相続人間の合意により禁止する場合は、再設定により、相続開始から最長10年まで延長可能)。禁止期間中は、たとえ相続人同士が話し合って分割協議をしても、その結果は原則として無効となります。この制度は、相続にまつわる混乱や不利益を避けるために、“あえて分けない”という選択を可能にする、非常に柔軟で有効な手段なのです。
なぜ分けないのか?――“想い”を守るための理由
未成年がいるなら、「待つ」という選択を
相続人の中に未成年者がいる場合、分割協議には特別代理人の選任が必要となりますが、それがかえって争いの火種になることも。数年後に成人するなら、その時まで“分けない”という選択が、平穏な相続の鍵になります。また、故人を亡くした直後は、感情が高ぶり、冷静な話し合いが難しいことも少なくありません。時間を置くことで、落ち着いて向き合える環境が整います。
財産の全貌が不明なら、急がずに調査を
相続財産が広範囲にわたる場合や、負債の有無が不明なときは、拙速な分割が後悔を生むことも。調査の時間を確保するための「分けない」判断は、むしろ賢明です。相続人同士の関係がぎくしゃくしているときは、話し合い自体がこじれる恐れも。“今は動かず”、関係の再構築を待つ。その姿勢が、争族を防ぐ近道になるかもしれません。
いつまで分けないのか?――「最大5年」という制限と更新の可能性
禁止できるのは「最長5年まで」更新すれば「最大10年まで」
民法第908条では、遺産分割の禁止期間を「5年を超えない範囲で定めることができる」と規定しています。あくまで一時的な措置として、永続的に分割を禁止することはできません。5年の期間が満了した後でも、改めて更新することで、さらに5年以内の延長が可能です。ただし、相続開始から通算して10年を超えてはならないため、時間的な上限には注意が必要です。
禁止の方法は3つある
遺産分割の禁止は、被相続人が遺言で定める方法のほか、相続人全員の合意、または家庭裁判所の判断によっても可能です。状況に応じた柔軟な選択ができるよう、専門家への相談が欠かせません。
分けないことで守れるもの――相続人同士の関係、将来の安心
争いを防ぐ、“時間”という処方箋
相続の話し合いは、時に感情を刺激し、家族の関係を壊しかねません。けれども、「今は分けない」と決めることで、冷静になるための時間を確保し、無用な争いを未然に防ぐことができます。遺産を分け急ぐことが、誰か一人の不利益につながる場合もあります。たとえば未成年や病気療養中の相続人がいれば、分割を遅らせることで、全員にとって納得できる結果を導くことができます。
遺産が活きる“その時”を見逃さない
不動産や事業資産などは、タイミングによって価値が大きく変動します。あえて分けずに持ち続けることで、遺産が本当に活かされるタイミングを待つという、戦略的な判断も可能です。
まとめ:“分ける”ではなく、“想いを託す”遺言を
遺言を書かれる方が遺したいのは、単なる財産の配分ではありません。残された家族が、争うことなく、穏やかに未来を歩んでいけるように――それが、本当の願いのはずです。だからこそ、今すぐ分ける必要はない。幼い子供が成長するまで、皆の気持ちが落ち着くまで、そして大切な資産が活きる時が来るまで、どうか分けないでいてほしい。そんな想いを、遺言というかたちで託すことができるなら、それは理想的な相続への第一歩となるはずです。
「分ける遺言」ではなく、「守る遺言」もある。そんな選択肢をぜひ知ってください。行政書士井戸規光生事務所では、相続診断士の資格も持つ行政書士が、相続人間の調和や将来の安心を大切にした「分けない遺言」のご相談も承っております。法的な根拠に基づきつつ、ご本人の想いを丁寧にくみ取り、最適な遺言書の作成をサポートいたします。初回相談は無料ですので、お電話052-602-9061またはEメールido.kimioアットマークofficeido.com、お問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。