遺言書が2通!? どっちが有効? 法の原則と判例でしっかりと解説!

遺言書は、故人の最終的な意思を示す大切な文書ですが、時には2通の遺言書が見つかることがあります。こうした場合、どちらが有効なのか判断に迷う方も多いでしょう。原則として、後から作成された(日付の新しい)遺言書が有効とされますが、すべてのケースで単純に当てはまるわけではありません。過去の裁判例を踏まえると、内容の矛盾や日付の問題など、さまざまな要素が関係します。本記事では、法の原則と判例をもとに、2通の遺言書が見つかったときの対処法を解説します。

目次

法の原則は「後から書かれた遺言書が有効

遺言書が2通存在する場合、原則として後に作成された遺言書が有効とされます。これは、遺言者が生前に自身の意思を変更する自由を持っているためです。民法1023条では、「前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす」と規定されています。つまり、後の遺言書の内容が前の遺言書と矛盾している部分については、新しい意思が優先されるのです。 例えば、最初の遺言書で「長男に全財産を相続させる」と記載し、後の遺言書で「長女に半分を相続させる」と変更していた場合、長女にも相続権が認められます。ただし、前の遺言書と完全に矛盾しない部分については、引き続き効力が認められることもあります。

原則が適用される条件

ただし、後の遺言書が無条件で有効となるわけではありません。後の遺言書を有効とするには、いくつかの要件を満たす必要があります。まず、その遺言書が法的に有効な方式で作成されていることが重要です。たとえば、自筆証書遺言の場合は、全文を自筆で書き、日付と署名、押印が必要です(民法968条)。また、公正証書遺言であれば、公証人と証人の立ち会いが求められます。

さらに、新しい遺言書が遺言者の真意に基づいて作成されたものであることも重要です。たとえば、認知症が進行していたり、第三者による強制が疑われたりする場合、後の遺言書が無効と判断される可能性があります。また、新しい遺言書の日付が明確であることも要件の一つです。日付が不明確な場合、前の遺言書とどちらが優先されるのか判断することが困難になります。。

判例紹介

東京地裁 平成27年10月22日 古い遺言書が有効とされた

平成27年10月22日の東京地裁の判決では、平成17年に作成された公正証書遺言と、平成20年に作成された自筆証書遺言が争点となりました。原則として、後に作成された遺言書が有効とされますが、本件では自筆証書遺言の筆跡が遺言者本人のものと断定できず、押印も本人によるものと証明できませんでした。そのため、後の遺言書は無効とされ、結果として日付の古い公正証書遺言が有効と認められました。この判決は、公正証書遺言にせよ、自筆証書遺言にせよ、遺言書の真正性が法的に証明されるかどうかが、最も重要なポイントとなるのです。

東京高裁 平成27年8月27日判決 2通の遺言書がどちらも無効

本件では、平成21年作成の自筆証書遺言と、平成22年作成の公正証書遺言が争点となりました。両者の内容は抵触していましたが、公正証書遺言には法律上の方式違反がありました。遺言者は公証人の問いかけに頷くだけで、一度も口頭で遺言の趣旨を伝えなかったため、法律上の要件を満たさず無効と判断されました。

一方、自筆証書遺言についても、作成の経緯や保管状況が不自然であったことから、無効とされました。遺言者は兄弟宅で複数の遺言書を作成し、不出来なものを破棄した後、1通のみ残しました。しかし、それを持ち帰らず、保管も依頼しなかったため、最終的な意思としての有効性が否定されました。

結果として、両方の遺言書が無効とされ、故人の遺産は遺産分割協議によって決定されることとなりました。

遺言書が2通あったら…

遺言者の立場で気をつけること

新しく遺言書を作成する際には、古い遺言書を確実に廃棄することが重要です。前の遺言書が残っていると、後の遺言書と内容が抵触した場合にトラブルの原因となります。また、「以前の遺言をすべて撤回する」旨を新しい遺言書に明記することで、無用な争いを防ぐことができます。

相続人の立場で気をつけること

遺言書が2通発見された場合、どちらが有効かを判断するのは簡単ではありません。明らかに有効な遺言書がある場合は、それに基づいて速やかに相続手続きを進める必要があります。一方で、有効性が不明な場合や内容が抵触する場合は慎重な対応が求められます。特に、自筆証書遺言が発見された際には、家庭裁判所で検認手続きを行うことが義務付けられています。これを怠ると、遺言の有効性に疑義が生じる可能性があります。 遺言書が複数ある場合は、自分だけで判断せず、相続手続きの専門家である行政書士に相談することが最善の選択です。専門的なアドバイスを受けることで、スムーズに手続きを進めることができます。

まとめ

 行政書士井戸規光生事務所では、相続診断士の資格を有する行政書士が、ご依頼者様一人ひとりの状況に合わせて、遺言書作成のサポートや相続手続きを代行いたしております。遺言書を遺される方に、新しい遺言書を作成される際には古い遺言書を必ず、完全に破棄するようにご助言します。また、2通の遺言書を発見してしまったご親族の方には、問題を最小限に抑えるようにサポートいたします。 有効な遺言書が定まった際には、金融機関とのやりとりなど、煩雑な手続き全般をお任せいただけます。不動産登記が必要な際には司法書士、相続税のお悩みには税理士、相続人間でのトラブルが起こった際には弁護士と連携し、手続きを進める体制を整えております。初回相談は無料でございます。ぜひお気軽に、お電話(052-602-9061)、FAX(050-1545-5775)、お問い合わせフォーム、もしくはEメール ido.kimioアットマークofficeido からご相談ください。ご連絡お待ちしております。

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この記事を書いた人

2024年に「行政書士 井戸 規光生 事務所」を設立しました。
建設業、遺言・相続サポート業務に特化した名古屋市南部の地域密着型事務所です。
高校時代はラグビー部に所属。地元名古屋のスポーツチームを応援しています。

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