遺言書での遺贈:知っておきたい基礎知識と手続き(前編)

遺言書は、自分の財産を誰にどのように分配するかを明確に伝える大切な書類です。その中でも「遺贈」とは、特定の個人や団体に財産を指定して贈ることを指します。例えば、相続人以外の大切な人に財産を残したい、またはお気に入りの団体に寄付をしたいと考える場合、遺言書を通じて遺贈の意思を伝えることができます。しかし、遺贈には特有のルールや注意点があり、それをしっかりと理解しておくことが大切です。このブログでは、遺言書での遺贈の具体的な方法やその効果について詳しく解説します。

目次

遺贈とは?

遺言によって財産を特定の人や団体に譲渡する行為を指します。以下に遺贈の基本的な内容とその特徴について解説します。

包括遺贈

遺言者の財産の一部または全部を特定の人に譲ることです。たとえば、「私の財産の半分をAに遺贈する」といった場合です。(例)「全財産をAに遺贈する」「遺産のうち2分の1をBに遺贈する」など

特定遺贈

遺言者の*特定の財産を特定の人に譲ることです。たとえば、「私の土地をBに遺贈する」といった場合です。(例)「A銀行の預金」など

包括遺贈と特定遺贈に関して、次回のブログで詳しく解説します。

負担付き遺贈

遺贈を受ける人に特定の義務や負担を課す遺贈です。たとえば、「私の財産をCに遺贈するが、その条件としてDの世話をすること」といった場合です。

遺贈の手続き

STEP
遺言書の作成

遺贈を行うためには、必ず遺言書を作成する必要があります。遺言書がない場合は、遺産は基本的に法定相続人でのみ分割されるからです。遺言書は自筆証書遺言公正証書遺言、秘密証書遺言のいずれかの形式で作成します。

STEP
遺言執行者の指定  

遺贈を実現するためには、遺言執行者を指定することが推奨されます。遺言執行者は遺言の内容を実現する責任を負います。

STEP
遺贈の実行

遺言者の死亡後、遺言執行者が遺言の内容を実行し、遺贈を受ける人に財産を譲渡します。

遺贈と相続の違い

遺贈と相続は似た概念ですが、いくつかの違いがあります:

  • 法的根拠
    相続は法律によって定められたものであり、法定相続人に対して自動的に財産が分配されます。一方、遺贈は遺言者の意思に基づいて特定の人や団体に財産を譲渡する行為です。
  • 範囲
    相続は遺言がない場合にすべての財産が法定相続人に分配されますが、遺贈は遺言で指定された範囲の財産のみが譲渡されます。
  • 受遺者
    相続人は法定相続人に限られますが、受遺者(遺贈を受ける人)は誰でも指定することができます。友人や特定の団体、施設なども含まれます。

例えば、故人の子どもが存命の場合、子どもの子ども、孫は法定相続人ではありませんが、遺贈によって、遺産を引き継がせることができます。また、故人の息子の妻などが、故人生前に介護で尽力があり、それに報いたい場合、遺贈によって財産を引き継がせることもできます。

遺贈に関する注意点

遺贈を行う際には以下の点に注意が必要です:

・遺留分を考慮する
法定相続人(兄弟姉妹以外)には遺留分という最低限の取り分が保証されています。遺贈が多すぎて、遺留分を侵害する場合、法定相続人は遺留分侵害額請求を行うことができます。

・遺言書の有効性
遺言書が適切な形式で作成されていない(日付、押印がない、財産が特定できないなど)場合、無効とされることがあります。遺言書を書く際には、専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。

・受遺者の同意
遺贈を受ける人(受遺者)が受け取りを拒否することも可能です。この場合、遺贈は無効となります。

・あくまでも相続人には「相続」、相続人以外には「遺贈」と書く

「誰々(法定相続人以外の者)に〇〇(財産)を相続させる」と書くと無効になります。この場合は「遺贈する」と書かなくてはいけません。

遺贈は遺言者の意思を尊重し、特定の人や団体に財産を譲るための重要な手段です。正確な手続きを踏むことで、遺言者の意向を確実に実現することができます。

生前贈与との違い

「生前贈与」は、生前に財産を無償で譲る契約です。財産を譲りうける相手からの同意が必要となり、財産の所有権は生前に移転します。また生前贈与には厳格な要式がなく、口頭でも有効です。

一方、「遺贈」は、受けとる人の合意は不要です。しかし、受贈者が遺贈を放棄すると所有権移転の効果は発生しません。また、口頭でも有効な生前贈与とは違い、遺贈は遺言書で行わなくてはいけません。

死因贈与との違い

「死因贈与」は、贈与する者の死亡を条件として効果が発生する贈与契約です。契約なので受贈者の合意が必要となります。生前贈与と同様、厳格な要式は不要なので口頭でも成立させることができます。「遺贈」は遺言書によって行う行為であり、受遺者の合意は不要などの違いがあります。

遺贈に関しては(ブログの後編)も是非ご覧ください。

まとめ

行政書士 井戸 規光生 事務所では相続診断士の資格を持つ行政書士が、ご依頼者様それぞれの事情に沿って、迅速な遺言作成のサポート、遺産相続業務の代行を行います。遺贈を望まれる方への遺言書作成サポートも可能です。また、相続人確定調査、遺産分割協議書の作成サポート、預貯金解約などの手続きも一括でうけたまわります。初回相談は無料でございます。お電話やお問い合わせフォームから、是非お気軽にご相談ください。お待ちしております。

よかったらシェアしてください!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

2024年に「行政書士 井戸 規光生 事務所」を設立しました。
建設業、遺言・相続サポート業務に特化した名古屋市南部の地域密着型事務所です。
高校時代はラグビー部に所属。地元名古屋のスポーツチームを応援しています。

目次