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遺言書・相続に関する驚くような勘違い10選

相続や遺言書と聞くと、「まだ先の話だから」「うちは関係ない」と思う方も多いかもしれません。しかし、実際に相続の場面になると、「そんなはずじゃなかった」「聞いてない!」という声が驚くほど多く聞かれます。遺言書を書いたつもりでも無効だったり、当然だと思っていた相続の仕方がまったく通用しなかったり。意外な落とし穴がそこかしこに潜んでいるのが相続の世界です。本記事では、そんな相続や遺言書にまつわる「えっ!?」と驚くような勘違いを10個ご紹介します。知っているつもりが一番危ない。これを読んで、ご自身やご家族の将来のトラブルを未然に防ぎましょう。
「口頭でも遺言になると思っていた」
「財産は全部お前にやるって父が言ってたから、自分がもらえるはずだ」と主張する方が時々いますが、実はそれだけでは法的には何の効力もありません。遺言は、口頭で伝えただけでは無効であり、たとえ家族の前で本人が明言していたとしても、裁判では証拠として認められにくいのが現実です。民法では、有効な遺言書として成立させるために、自筆や公正証書など厳格な形式が定められています。形式を欠いた遺言は、たとえ本人の強い意思があっても、法律の世界ではなかったものとして扱われてしまうのです。思いを確実に残したいなら、必ず法律の要件を満たした書面で遺言を作成することが重要です。
「全部子どもに渡るから、遺言書なんていらないでしょ?」
親が亡くなれば、子どもが自動的に全部相続すると思っている方は少なくありません。確かに、法定相続人として子どもは優先的な立場にありますが、「全部を特定の子に渡したい」といった希望がある場合、遺言書がなければその通りにはなりません。さらに、配偶者が健在であれば、その方も相続人となりますし、兄弟姉妹や代襲相続人が関与してくるケースもあります。つまり、誰が何をどの割合で相続するのかは、遺言書がなければ法律のルールに従って機械的に決まってしまうのです。「家族だから、揉めないはず」と思っていても、実際の相続の現場では意見の食い違いが起きやすいもの。円満な相続を実現するには、やはり遺言書が欠かせません。
「エンディングノートを書いたから安心」
最近では、終活の一環としてエンディングノートを書く方が増えてきました。自分の思いや希望を整理し、家族に伝える手段としてはとても有意義なものです。しかし、それを「遺言書の代わり」と考えてしまうのは大きな誤解です。エンディングノートには法的効力がないため、たとえ財産の分け方が細かく書かれていても、それに従って相続が行われる保証はありません。特定の人に財産を残したい、誰かに不動産を相続させたいといった希望がある場合は、法律で定められた形式に則った正式な遺言書が必要です。家族への思いを形にするなら、エンディングノートと遺言書は「両方そろえてこそ」本当の安心につながるのです。
「長男が全部相続するのが当然でしょ?」
「長男が家を継ぐのが当たり前」「財産もすべて長男に渡るもの」──そう信じている方は、今でも少なくありません。かつての家制度の名残がその考え方に影響していますが、現在の民法では、長男だからといって特別扱いされることはありません。相続人が複数いる場合には、法定相続分に従ってすべての相続人に公平に分けられるのが基本です。たとえば、子が3人いれば、それぞれが3分の1ずつ相続する権利を持ちます。遺言書がなければ、その割合を変更することは原則できません。つまり、「家を守るのは長男だから当然」という考えだけでは、ほかの相続人との間にトラブルが生じる可能性があるのです。時代に合わせた相続の理解が、円満な家族関係を守る鍵になります。
「土地は勝手に名義変更されると思ってた」
相続が発生したあと、「不動産の名義は自動的に相続人の名前に変わる」と思っている方が意外に多くいらっしゃいます。しかし実際には、名義変更、つまり相続登記は相続人自身が自分で手続きをしなければなりません。誰が何をどの割合で取得するのかを決め、その内容に基づいて法務局に登記申請をする必要があるのです。しかも、相続登記を放置していると、後々になって別の相続が重なり、関係者が増えたり所在不明者が出たりして、手続きが非常に複雑になります。2024年4月からは相続登記の義務化も始まり、怠れば過料が科される可能性もあります。「放っておいても大丈夫」は、今や通用しない時代なのです。早めの対応が、家族の負担を減らす第一歩です。
「相続税はお金持ちだけの話」
「相続税なんて、何億円も遺産がある人だけが払うもの」――そう思っている方は多いですが、それは決して一部の富裕層だけの問題ではありません。相続税には「基礎控除」があるものの、現在の制度では【3000万円+600万円×法定相続人の数】を超える遺産があれば、課税対象となります。たとえば、都市部に自宅不動産を所有している家庭では、土地と建物だけでこの基準を超えてしまうことも珍しくありません。さらに、現金・預金・有価証券が加わると、あっという間に課税ラインに達します。「うちは中流家庭だから大丈夫」と油断していると、申告期限ギリギリになって慌てるケースも。相続税は“備えれば防げる負担”。早めの確認と対策が鍵となります。
「遺言書があれば絶対その通りに実行される」
「遺言書があれば、その通りにすべて実現される」――そう考えるのは自然ですが、現実にはそう簡単ではありません。まず、遺言書の内容が法律に違反していれば、当然無効になりますし、相続人の最低限の権利である「遺留分」を侵害している場合には、他の相続人から「遺留分侵害額請求」がされる可能性もあります。また、自筆証書遺言の場合には、方式の不備や筆跡の疑義が原因で有効性が争われることもあります。たとえ公正証書遺言であっても、相続人同士の感情的な対立によって、内容通りに進まないケースもあります。「遺言があるから大丈夫」と思い込まず、内容の見直しや事前の家族への説明も大切なのです。遺言は「書くだけ」で終わりではありません。
「認知症の親が元気なうちに遺言書を書かせよう」
「親が認知症になる前に、遺言書を書いておいてもらわなきゃ」と考えるのは非常に大切なことですが、いざそのタイミングを見誤ると、遺言の効力自体が疑われることがあります。遺言書は、本人に“遺言能力”、すなわち内容を理解し自分の意思で判断する能力がなければ、有効とは認められません。初期の認知症であっても、症状や診断書の内容によっては「意思能力がなかった」と判断されることがあるのです。そのため、元気なうちから遺言について話し合い、早めに作成しておくことが極めて重要です。また、公正証書遺言であれば、公証人が意思能力の有無を確認するため、将来的な無効リスクを下げることができます。「そのうち」は、意外と突然来るものです。
「うちは仲がいいから争いなんて起きない」
「うちは家族仲がいいから、相続で揉めることなんてない」と自信を持っておっしゃる方も少なくありません。しかし、実際の相続現場では、“仲が良かったはずの家族”ほど、財産をめぐる感情のもつれから深刻なトラブルに発展することがあります。遺産の額にかかわらず、「なぜ自分には説明がなかったのか」「昔から自分だけ冷遇されていた」など、長年のわだかまりが一気に噴き出すことも珍しくありません。相続はお金の問題であると同時に、“感情の清算”でもあるのです。だからこそ、「うちは大丈夫」と思っているご家庭ほど、遺言書や事前の意思表示によって、家族の思いをきちんと形にしておくことが大切です。平和な関係を守るには、準備が欠かせません。
「遺言書は全部自筆じゃないとダメ」
「遺言書って、全部手書きじゃないとダメなんですよね?」というご相談をよくいただきます。たしかに、自筆証書遺言の場合は全文を本人の自筆で書く必要がありますが、実はこれには例外もあります。2020年の法改正により、財産目録についてはパソコンで作成してもよく、通帳のコピーや不動産の登記事項証明書を添付することも可能になりました。さらに、遺言には「公正証書遺言」や「秘密証書遺言」といった方式もあり、必ずしも全文を自筆で書く必要はないのです。とくに高齢の方や、手が不自由な方には、公証人に内容を伝えて作成する公正証書遺言が安心です。「字が書けないから遺言は無理」と諦める必要はありません。方法を知れば、誰でも遺言は残せます。
まとめ
相続や遺言に関する誤解は、誰にとっても起こりうるものです。そして、その多くは「知っていれば防げた」内容ばかりです。形式の誤認、感情のもつれ、そして思い込みからくる油断が、思わぬ争いの火種になります。大切なのは、正しい知識を持ち、早めに備えること。法律は難しく感じるかもしれませんが、一歩踏み出せば、家族の未来を守る確かな道が見えてきます。行政書士井戸 規光生事務所では、相続・遺言に関する30分無料相談を承っております。どんな小さな疑問でも、お気軽にご相談ください。あなたの「知らなかった」を「知ってよかった」に変えるお手伝いをいたします。お電話052-602-9061またはEメールido.kimioアットマークofficeido.com、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。