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銀行の貸金庫に遺言書はNG!遺言書が家族の手に渡らないリスクとは
遺言書は、大切なご家族に遺志を正確に伝えるための重要な書類です。しかし、その遺言書が家族の手に届かなければ、どれだけ丁寧に作成しても意味をなさなくなってしまいます。
遺言書を「安全だから」という理由で銀行の貸金庫に保管することを選ぶ方がいますが、実はこれには大きな落とし穴があるのです。遺言書が貸金庫に保管されていると、場合によっては相続人が中身を取り出せず、遺言の内容が実行されないリスクが生じることもあります。この記事では、銀行の貸金庫が遺言書の保管場所として適さない理由と、トラブルを避けるために知っておきたいポイントを詳しく解説します。あなたの遺志を確実に家族へ届けるために、ぜひ最後までお読みください。
遺言書の保管場所に求められる条件とは?
遺言書をどこに保管するかは、ご自身の意思を確実に家族に届けるために極めて重要です。適切な保管場所を選ぶ際には、以下の3つの条件を満たしていることが求められます。
紛失しないこと
遺言書は一度作成すれば終わりではありません。長期にわたり保管する必要があるため、紛失のリスクを防ぐことが第一条件です。ご自宅に保管している場合、災害や盗難、誤って廃棄してしまう可能性があります。そのため、確実に所在が把握できる安全な場所を選ぶことが求められます。
安全であること
遺言書には財産に関する情報が記載されているため、悪用されないよう安全に保管することが重要です。特に、内容の改ざんや不正な開封を防ぐため、物理的に頑丈で信頼性のある保管方法が必要です。こうした理由から、多くの人が銀行の貸金庫を「安全な選択肢」として候補に挙げることが少なくありません。
家族がすぐにアクセスできること
遺言書は、相続が発生した際に速やかに家族に見つけてもらう必要があります。しかし、いくら安全でも、家族がその存在や保管場所を知らなければ意味がありません。貸金庫に保管していた場合、遺言書があることを家族が知らないと手続きが進まず、結果的に遺志が反映されないことも起こり得ます。 多くの方が貸金庫を保管場所に選ぶのは、「安全性」と「信頼性」が理由です。貸金庫は耐火性や防犯性が高く、銀行という信頼できる機関で管理されているため、安心感を与えてくれます。しかし、これらの利点だけでは、遺言書の保管場所として十分でない可能性があるのです。
次に、貸金庫に保管することの具体的なリスクを詳しく見ていきましょう。
貸金庫に遺言書を保管するリスク
銀行の貸金庫は安全な保管場所と考えられがちですが、遺言書を保管する際にはいくつかの大きなリスクが潜んでいます。特に相続が発生した後、スムーズに貸金庫を開けられない場合、遺言書が役割を果たせなくなる可能性があります。以下に、具体的なリスクを挙げて解説します。
法定相続人全員の同意が必要で時間がかかる
相続発生後、貸金庫を開けるためには、通常、法定相続人全員の同意が必要になります。この手続きには時間がかかり、相続人の間で意見が分かれた場合には、さらに手続きが長引く恐れがあります。その間、遺産分割協議も進められず、家族にとって大きなストレスとなる可能性があります。貸金庫に遺言書を保管すると、発見が遅れることで相続手続きに大きな影響を与える可能性があります。貸金庫の中身を確認するためには、銀行での相続手続きが必要で、戸籍謄本の準備や日程調整などで数ヶ月かかることがあります。そのため、遺言書があっても内容を確認するまで相続人は相続の方向性を決められず、遺言書の存在を知らなければ遺産分割協議後に遺言書が見つかる可能性もあり、相続が混乱する原因となります。遺言書は相続手続きを簡単にするためのものなのに、銀行の貸金庫に入っているせいで、相続手続きが複雑になってしまうのです。
貸金庫の存在を家族が知らないリスク
貸金庫に遺言書を保管していても、家族がその存在を知らなければ、遺言書が発見されない恐れがあります。遺言書が発見されなければ、せっかくの遺志が反映されず、法定相続に基づいて財産分割が進められることになります。特に、貸金庫の契約情報が故人しか知らない場合、そもそも貸金庫の存在に気づかれないリスクは大きいのです。
貸金庫は確かに安全性が高い場所ではありますが、遺言書の保管場所としては、これらのリスクを踏まえると適切でない場合が多いと言えます。
実際に起こり得るトラブル事例
貸金庫に遺言書を保管していた場合、遺言書がすぐに見つからない、あるいは取り出せないことで相続手続きがスムーズに進まなくなることがあります。ここでは、貸金庫保管に起因する具体的なトラブル事例を紹介します。
貸金庫に遺言書があると知らず、遺産分割協議が進む
遺言書の存在を知らないまま、相続人が法定相続のルールに従って遺産分割協議を進めてしまうケースがあります。この場合、協議がまとまった後で貸金庫から遺言書が発見されると、内容が法定相続の分割方法と異なるため、再び協議をやり直す必要が出てきます。これにより、相続人同士の関係が悪化する可能性もあり、大きなトラブルにつながります。
遺言書が発見されるまで時間がかかり、相続手続きが混乱
貸金庫に保管されている遺言書がすぐに発見されず、長期間放置されるケースもあります。その間、相続手続きが進まないため、相続税の申告期限(10か月)を過ぎてしまう恐れがあります。また、相続人に遺言書の内容が伝わらないまま進行すると、相続財産の取り扱いに混乱が生じる可能性が高くなります。
法定相続人が遠方に住んでいて手続きが進まない
貸金庫を開けるには、多くの場合、法定相続人全員の同意が必要です。しかし、相続人の中に遠方に住む人がいる場合、全員が揃って手続きを進めることが難しくなります。特に海外に居住している相続人がいる場合、同意書の取り付けや手続きに膨大な時間がかかり、遺言書の確認が遅れることがあります。結果的に、遺産分割そのものが大幅に遅れるリスクがあります。これらの事例からわかるように、貸金庫に遺言書を保管することは、遺言者が意図していなかったトラブルを引き起こす原因となり得ます。次に、これらのリスクを回避するための保管方法を考えてみましょう。
貸金庫より適切な遺言書の保管方法
遺言書は、相続発生時にスムーズに発見され、確実に内容が実行されることが求められます。貸金庫に保管する方法にはリスクがあるため、以下のような保管方法がより適切です。それぞれの方法の特徴とメリットを紹介します。
自筆証書遺言保管制度の活用
自筆証書遺言を作成した場合、その遺言書を法務局に預ける「自筆証書遺言保管制度」を利用することで、安全かつ確実な保管が可能になります。この制度を利用すれば、遺言書が紛失したり、改ざんされたりする心配がありません。また、相続発生後には法務局が遺言書の存在を相続人に通知する仕組みがあるため、発見漏れのリスクも大幅に低減できます。手続きも比較的簡単で、費用も抑えられるため、多くの方におすすめの方法です。
公正証書遺言を作成する
公正証書遺言は、公証人の立会いのもとで作成し、公証役場で保管されます。公正証書遺言の最大のメリットは、遺言書の有効性が法律的に保証され、内容の改ざんや紛失の心配がないことです。また、遺言者が亡くなった後、相続人が公証役場で遺言書を簡単に確認できるため、貸金庫のような手続きの煩雑さもありません。信頼性の高い保管方法として、多くの方が選択しています。
信頼できる弁護士や行政書士に保管を依頼
遺言書の管理を専門家に依頼するのも有効な方法です。信頼できる弁護士や行政書士に預けることで、遺言書の紛失や改ざんを防ぐだけでなく、遺言書の存在を確実に相続人に伝えることができます。さらに、相続発生時に専門家が内容の説明や手続きをサポートするため、家族が安心して相続手続きを進められる点も大きなメリットです。これらの方法を活用することで、遺言書の保管に関するトラブルを未然に防ぎ、大切な家族に確実に遺志を届けることができます。最適な方法を選ぶ際には、専門家に相談することをおすすめします。
まとめ: 家族に遺志を届けるために、今できる選択を
貸金庫は安全な保管場所と思われがちですが、実際には相続時に手続きが複雑化し、大きな壁になることがあります。遺言書は相続人に確実に渡り、速やかに内容を実行できる状態で保管することが重要です。そのためには、保管場所を慎重に選ぶ必要があります。法務局の自筆証書遺言保管制度や公正証書遺言、専門家への依頼など、信頼できる選択肢を検討しましょう。遺言書は遺志を家族に伝えるための大切な手段です。「せっかくの遺言書を無駄にしない」ために、今すぐ行動を起こし、適切な保管方法を選んでください。専門家のアドバイスを活用することで、将来の不安を安心に変えられます。行政書士井戸規光生事務所では、相続診断士の資格を有する行政書士が、ご依頼者様一人ひとりの状況に合わせて、遺言書作成のサポートや相続手続きを代行いたしております。相続発生後の相続人・相続財産の調査をはじめ、各種必要書類の取得・作成、金融機関との調整など、煩雑な手続き全般をお任せいただけます。登記が必要な際には提携する司法書士、相続税のご相談には税理士、相続人間でのトラブルが起こった際には弁護士と連携し、手続きを進める体制を整えております。初回相談は無料ですので、ぜひお気軽にお電話やお問い合わせフォームからご相談ください。