短すぎる工期が招くリスク

建設業界において、工期の設定は非常に重要です。しかし、利益を優先するあまり、現実的ではないほど短い工期が設定されることがあります。これは、建設現場に大きなリスクをもたらし、最終的には業界全体に悪影響を与えかねません。そこで、建設業法では「著しく短い工期の禁止」が明記されています。この法律の背景やその重要性について、リスクを未然に防ぐための具体的な対策とともに詳しく解説していきます。工期設定において適正な判断を下すために、ぜひご一読ください。

目次

こんなケースは建設業法違反

・元請業者が発注者からの早期引き渡し要望に応えるため、下請け業者に対して、通常よりも大幅に短い工期で下請契約を一方的に締結した。

・下請け業者が元請業者の要求に応じて工事を行うために、通常必要とされる工期を提示したものの、それよりもかなり短い工期で下請契約が締結された。

・工事の一時中止や前工程の遅延、元請業者からの追加工事指示など、下請け業者に非がない理由で当初の工期が変更された際に、通常よりも著しく短い工期で新たに下請契約が結ばれた。

設定された工期が極端に短すぎる場合、元請業者は建設業法第19条の5(著しく短い工期の禁止)に違反する可能性があります。

建設業に従事する人々の年間実労働時間は、他の産業と比較して非常に長い傾向にあります。残業が多く、土日祝日も働くことが常態化しており、業界全体で長時間労働が一般的となってしまっています。このような考え方をいつまでも放置していては、近年の課題である「働き方改革」は望めません。また、長すぎる労働時間は事故や手抜き工事につながります。そのため、適切な工期設定が求められており、通常認められる期間に比べて著しく短い工期での請負契約は禁止されているのです。

著しく短い工期とは?

どれくらいの工期が、著しく短い工期であるかについては、国土交通省の中央建設業審議会が作成した工期に関する基準(詳しくはコチラ)を参照します。 この基準は、適正な工期の設定や見積もりを行う際に、建設業者だけでなく発注者も考慮すべき要素を含んでおり、適正な工期を確保することを目的としています。契約を結ぶ際や工期の変更に伴う契約修正の際には、この基準に基づいて適切な工期が設定されることが求められます。この基準は、公共工事や民間工事の区別なく、すべての工事に適用されます。

契約内容を変更する際にも注意

「著しく短い工期の禁止」は、初期の契約に限りません。契約締結後、下請業者に責任がない理由で工事が予定通り進まなかったり、工事内容が変更されたりした際に工期を変更する契約を行う場合にも適用されます。工期の変更時には争いが発生しやすいため、元請業者は、契約の初期段階で「工期の変更を行う際には、変更後の工期が通常必要とされる期間よりも著しく短い期間となってはならない」(建設工事標準下請契約約款第17条)という規定を明確にしておくことが重要です。

違反するとどうなる

著しく短い工期を設定した場合行政庁は発注者に勧告をすることができ、従わないときはそのことを公表することができます。また、発注者が建設業者の時は、行政庁は勧告や指示処分をすることができます。

なお、軽微な工事(税込み500万円未満、建築一式の場合は1,500万円未満)の工事は対象外です。

まとめ

行政書士 井戸 規光生 事務所では、建設業許可の申請だけでなく、毎年の事業年度終了届、変更届、更新手続きのサポートや、日々の業務に忙殺される事業者様への、各種手続きの期限管理も承っております。 また、「著しく短い工期」を設定してしまっていないか、または、「著しく短い工期」を押し付けられていないかに関するご相談も承ります。初回相談は無料ですので、是非お電話、お問い合わせフォームなどからお問い合わせください。お待ちしております。

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この記事を書いた人

2024年に「行政書士 井戸 規光生 事務所」を設立しました。
建設業、遺言・相続サポート業務に特化した名古屋市南部の地域密着型事務所です。
高校時代はラグビー部に所属。地元名古屋のスポーツチームを応援しています。

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