自筆証書遺言の書き方と注意点:トラブルを避けるためのガイド

自筆証書遺言は、手軽に作成できる遺言書の形式として、多くの方に選ばれています。しかし、その手軽さゆえに形式や内容に不備が生じ、後にトラブルとなるケースも少なくありません。このブログでは、自筆証書遺言の正しい書き方と注意点について詳しく解説し、遺言を確実に効力あるものとするためのポイントをご紹介します。あなたの大切な財産と家族を守るためのガイドとして、ぜひお役立てください。

目次

自筆証書遺言とは

 自筆証書遺言とは、遺言者が自らの手で全文を記述し、作成する遺言書の形式です。遺言者の意思を手軽に残すことができ、公証人や証人などの第三者の関与を必要とせず、紙とペンさえあればいつでも作成できるという手軽さが魅力です。しかし、その手軽さの反面、法律上の要件を満たさないと無効となる可能性があるため、注意が必要です。  他の遺言書と比較すると、自筆証書遺言にはいくつかの特徴があります。例えば、公正証書遺言は、公証役場で公証人が関与して作成されるため、形式や内容に不備が生じるリスクが低く、証拠能力が高いという特徴があります。また、秘密証書遺言は、内容を秘密にしたまま公証人に提出し、証人がその存在を確認するという方法です。               一方で、自筆証書遺言は、遺言者自身が書くため内容の秘密性が高いですが、その分、法律に則った形式で書かれているかどうかの確認が難しく、無効となるリスクも高いです。

自筆証書遺言のメリットとデメリット

 自筆証書遺言のメリットは、手軽に作成できる点です。費用がほとんどかからず、遺言者はいつでも書き直しができますし、遺言内容を他人に知られることもありません。 デメリットとしては、法的要件を満たさないと無効になること、紛失や偽造、改ざんのリスクがあることが挙げられます。死後に家族が検認を行わなければならないこと、さらに、遺言者の死後、遺言書が発見されなかったり、相続人間で遺言書の有効性を巡って争いが生じたりする可能性もあります。以上のように、自筆証書遺言は手軽さと秘密性の高さがメリットですが、法的要件の厳格さと管理の難しさがデメリットと言えます。そのため、作成時には行政書士など専門家のアドバイスを受けることが重要です。

自筆証書遺言の基本的な書き方

本文

自筆証書遺言では、遺言書のタイトルから本文まで、すべて遺言者自身が手書きする必要があります。パソコンでの作成や他人による代筆は認められていません。ただし、財産目録については例外で、パソコンで作成したり、通帳のコピーを添付したりすることが許されています添付書類には遺言者の署名と押印が必要です。 遺言書には遺言者自身の署名と押印が必須です。署名も自分の手で行わなければなりません。 作成日も正確に記入する必要があります。「○月吉日」などの表現ではなく、具体的な日付を記載する必要があります。年度を記載し忘れた場合も無効となるため、漏れのないように注意が必要です。署名の後には必ず押印が必要です。万一押していなかったり、印影が不鮮明だったりすると無効になる可能性があります。押印は認印でも問題ありません。

財産の記載方法

財産の記載は、具体的で明確である必要があります。財産の種類や所在を詳細に記載し、誰にどの財産を相続させるかを明確に示します。たとえば、不動産の場合は、「所在地:東京都新宿区〇〇町1丁目2番3号、地目:宅地、地積:100㎡」のように詳細に記載します。預金の場合は、「〇〇銀行〇〇支店、普通預金口座番号12345678」など、銀行名、支店名、口座種別、口座番号を記載します。(残高を書く必要はありません)

相続人や受遺者の特定方法

相続人や受遺者を特定する際は、具体的に記載します。たとえば、「長男 〇〇太郎(〇年〇月〇日生)」や「次女〇〇 花子(〇年〇月〇日生)」などのように、相続人の名前をフルネームで記載し、生年月日もかっこ書きします。また、親族以外の第三者に遺贈する場合も、「〇〇町に住む〇〇様」など、氏名と関係性を明確に記載します。

自筆証書遺言作成時の注意点

遺言書は、各人が自分自身のために作成しなければなりません。夫婦が一緒に「私たち夫婦は以下のように遺言します」といった形で共同の遺言書を作成することは認められておらず、このような遺言書は無効となります。 

ビデオレターや音声録音による遺言も無効とされますので、これらの方法では遺言を残すことができないことに注意してください。

また、遺言書を作成する際に、あいまいな表現を使うと、相続人間で解釈が分かれ、トラブルになる可能性があります。財産を渡したい相手には「取得させる」「相続させる」「遺贈する」などの具体的な文言を使用しましょう。「任せる」や「託す」という表現は、「財産の管理をお願いしたい」という意味にも解釈されかねません。また、「渡す」や「譲る」といった言葉も、誤解を生む可能性があるため避けた方が安全です。(詳しくはコチラ

さらに、遺言書で他の相続人の遺留分を侵害してしまうと、トラブルの原因となることがあります。遺留分とは、遺留分権利者が最低限もらうことのできる権利のことです。たとえば、「全財産を長男へ」といった遺言内容が、他の相続人の遺留分を侵害している場合、侵害された相続人は「遺留分に相当する金額を渡してください」と主張することが可能です。

 自筆証書遺言がある場合、相続人は家庭裁判所で「検認」を受けなければなりません。検認とは、裁判所が遺言書の内容や状態を公式に確認する手続きです。この手続きを行わないと、遺言書に基づいて不動産の名義変更や預貯金の払い戻しなどを行うことができません。ただし、法務局に自筆証書遺言を預けている場合は、検認は不要です。

自筆証書遺言の保管方法

自筆証書遺言は、作成後の保管方法も非常に重要です。なぜなら、遺言書が適切に保管されていないと、遺言者の意思が伝わらないだけでなく、破棄や隠匿の原因となる可能性があるからです。保管場所としては、自宅の金庫や防火性のある引き出し、銀行の貸金庫などが考えられます。これらの場所に保管する場合、遺言書が確実に発見されるよう、信頼できる人に保管場所を伝えておくか、遺言書の存在自体を知らせておくことが重要です。

一方、より安全で確実な保管方法として、自筆証書遺言保管制度を利用することも検討できます。この制度では、法務局が遺言書を保管してくれるため、紛失や改ざんのリスクを大幅に減らすことができます。利用方法は簡単で、遺言者本人が作成した自筆証書遺言を持参し、所定の申請書を記入して法務局に提出するだけです。保管された遺言書は、遺言者が亡くなった後、相続人などが法務局に申請すれば、内容を確認することができます。この制度を利用することで、検認手続きが不要となり、相続手続きがスムーズに進むというメリットもあります。

自筆証書遺言の見直しと変更

自筆証書遺言は、適切なタイミングで見直しや変更を行うことが重要です。見直しが必要なタイミングとしては、家族構成や財産状況の変化が挙げられます。また、不動産の購入や売却、金融資産の変動など、財産の内容が大きく変わった場合も、遺言の見直しを検討すべきです。 

自筆証書遺言の変更や撤回を行う場合、最も簡単なのは、新しい遺言書を作成し、古い遺言書を無効にすることです。新しい遺言書には、「これまでの遺言書を撤回する」という旨を記載することで、過去の遺言書の内容を無効にできます。また、既存の遺言書に加筆修正することも可能ですが、その際は訂正箇所に二重線を引き、訂正印を押し、訂正箇所の内容を記載してから署名しなければなりません。訂正の仕方に不備があると、変更部分が無効になる恐れがあるため、慎重に行う必要があります。

複数の遺言書が存在する場合、基本的には最も新しい日付の遺言書が有効とされます。しかし、古い遺言書が完全に無効になるわけではなく、新しい遺言書の内容が限定的である場合、古い遺言書の一部が有効となることもあります。このため、新しい遺言書を作成する際には、古い遺言書をどう扱うか明確に記載することが望ましいです。例えば、「本遺言書をもって以前のすべての遺言書を撤回する」と明記することで、過去の遺言書を無効にする意思を示すことができます。遺言書の見直しや変更の際は、行政書士など専門家のアドバイスを受けて、法律上の不備を防ぎましょう。  (詳しくはコチラ

まとめ

行政書士 井戸 規光生 事務所では相続診断士の資格を持つ行政書士が、ご依頼者様それぞれの事情に沿って、自筆証書遺言の作成サポートを行っております。また、相続発生時の相続人、相続財産の調査や、各種必要書類の取得、作成、金融機関とのやり取りなど、煩雑な相続手続きも代行いたします。また、登記が必要な際には司法書士を、相続税に関するお悩みには税理士を、また、万が一相続人間でのトラブルが発生した場合には提携の弁護士を紹介し、ご依頼者様の負担が少ない形で諸手続きを進めてまいります。初回相談は無料ですので、お電話、お問い合わせフォームなどから、是非お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

2024年に「行政書士 井戸 規光生 事務所」を設立しました。
建設業、遺言・相続サポート業務に特化した名古屋市南部の地域密着型事務所です。
高校時代はラグビー部に所属。地元名古屋のスポーツチームを応援しています。

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