トラブルを避ける!遺産分割協議で押さえておくべき重要なステップ

相続が発生すると、多くの方が避けて通れないのが「遺産分割協議」です。遺産の分配方法を話し合う場ですが、相続人同士の意見が対立したり、手続きが複雑でわからないことが多かったりするため、トラブルに発展するケースも少なくありません。しかし、協議をスムーズに進めるためには、いくつかの基本的なステップを押さえておくことが非常に重要です。このブログでは、遺産分割協議を成功させるために知っておくべき重要なポイントと、トラブルを未然に防ぐための方法を解説します。ぜひ参考にしてください。

目次

遺言書の確認

遺産分割において、遺言書がある場合は基本的にその内容に従って財産を分けます。遺言書は被相続人の意思を尊重した分割方法を示しており、これが最優先されます。しかし、遺言書が存在しない場合は、相続人全員で協議し、財産を分配することになります。また、遺言書がある場合でも、相続人全員が合意すれば、遺言書通りに分けず、別の方法で分割することも可能です。この合意による柔軟な対応は、家庭の事情や各相続人の希望に応じて行われます。

遺産分割協議とは?

 遺産分割協議とは、相続人が共同で話し合い、遺産をどのように分けるかを決定する手続きです。遺言書がある場合は基本的にその内容に従いますが、遺言書がない場合や遺言書で指定されていない財産については、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。この協議によって遺産の分割方法が決まらなければ、相続人がそれぞれの相続分を確定できないため、協議は非常に重要です。

 遺産分割協議の目的は、相続人全員が納得のいく形で遺産を分配することです。民法では、法定相続分という各相続人の取り分が定められていますが、実際には相続人間で柔軟に話し合い、遺産の具体的な分割を決めることが求められます。例えば、不動産や車などの物理的に分けられない財産も存在します。そのため、現物分割、換価分割、代償分割などの方法を検討しながら、各相続人のニーズに応じた分割方法を決定します。全員の合意が必要であり、協議が成立しない場合は、家庭裁判所の調停や審判で解決を図ることになります。

 協議を円滑に進めるための基本的な流れは、まず「相続人の確定」と「相続財産の把握」が必要です。戸籍謄本などを使って全相続人を確認し、不動産や預貯金、株式、保険金など遺産となるすべての財産を明確にします。財産が複数ある場合は、その評価方法にも注意が必要です。不動産であれば鑑定評価、預貯金や有価証券は時価や残高確認を行い、適正な分割の基礎資料とします。

次に、法的な枠組みについても理解しておくことが重要です。例えば、相続人の一部が欠けている場合や、特別受益寄与分といった事情がある場合は、それらを考慮した分割方法を協議する必要があります。また、遺留分という、特定の相続人に対して最低限保証された取り分を守るための権利も存在し、これを侵害しないよう配慮することも重要です。 遺産分割協議は、法的にしっかりとした手続きを踏むことが求められるだけでなく、感情的な対立も生じやすい場面です。全員が納得し、トラブルなく進めるためには、冷静な話し合いと専門家のアドバイスを得ることが不可欠です。

相続人全員の確認

 遺産分割協議を始める際、最初に行うべき重要なステップは、すべての相続人を確定することです。相続人全員が協議に参加することは法律で定められており、誰か一人でも参加していないと、その協議は無効となり、後々トラブルに発展するリスクが非常に高くなります。    相続人を確定するためには、戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本といった公的な書類を用いることが義務付けられています。これらの書類は、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍の履歴を確認するために必要です。被相続人が生まれた時からの戸籍をたどることで、配偶者や子どもなどの法定相続人を確定できるだけでなく、過去に離婚や再婚があった場合の子どもや、前妻・前夫の子どもが相続権を持っているかどうかも確認できます。この作業を怠ると、後になって「隠れた相続人」が現れ、協議が無効になることがあります。

 たとえば、被相続人が若い頃に離婚しており、その際に生まれた子どもがいる場合、その子どもが相続権を持つ可能性があります。このような相続人が見落とされたまま遺産分割協議を進め、後からその事実が判明すると、既に分割された遺産の再分割や返還が求められることになり、大きな混乱を招くことになります。

 特別受益者についても注意が必要です。特別受益者とは、生前に被相続人(故人)から財産的な利益を受けた相続人のことを指します。たとえば、住宅購入資金の援助や高額な贈与を受けている場合、その相続人の受け取る遺産額が他の相続人と比較して不公平にならないように調整する必要があります。これもまた、遺産分割協議の前に明確にしておかないと、相続人間のトラブルの原因となります。

 相続人全員の確認作業は、特に親族関係が複雑な場合や、相続人が複数の地域に散在している場合、時間がかかることがありますが、非常に重要な手続きです。相続人が一人でも欠けていると、遺産分割協議は無効となり、最終的には家庭裁判所での調停に発展する可能性もあります。そうならないためにも、相続人全員が確定され、平等な立場で協議に参加できることが確認されることが不可欠です。

最終的に、相続人全員が参加した協議で合意が得られた場合、遺産分割協議書に署名・押印をすることになります。この協議書は、後に不動産の名義変更(相続登記)や銀行口座の解約・名義変更手続きなどで使用されるため、法的にも重要な書類です。協議の無効やトラブルを防ぐために、最初のステップとして相続人全員の確認を徹底することが、円滑な遺産分割のカギとなります。

遺産の範囲と評価の明確化

相続人の確定の次に取り組むステップが、「遺産の範囲と評価の明確化」です。相続手続きでは、どの財産が遺産分割の対象となるかを明確にし、すべての相続人がその財産の評価額に納得することが求められます。このプロセスが曖昧だと、後々トラブルが発生する恐れがあります。

まず、遺産分割の対象となる財産の範囲を明確にすることが必要です。遺産に含まれるものは、被相続人が生前所有していたすべての財産です。不動産、預貯金、株式、債券、自動車、貴金属、絵画などの動産や、仮想通貨などのデジタル遺産、さらには借金や未払金などの負債も含まれます。また、保険金や死亡退職金がある場合、その取り扱いについても確認が必要です。これらの財産のうち、遺言書で分割方法が指定されていない財産や、遺言書が存在しない場合は、相続人全員で協議して分割方法を決めることになります。

次に、各財産の評価額を全員で確認することが重要です。遺産分割協議では、まずその財産の適正な評価額を把握しなければなりません。特に、不動産や株式のように価値が変動するものについては、専門的な知識が求められることが多いため、評価方法に注意が必要です。

不動産の場合、評価額は固定資産税評価額や路線価、または実際の市場価格に基づいて決定されますが、それぞれの評価方法に違いがあります。固定資産税評価額は税務上の基準であり、市場価格よりも低いことが一般的です。市場価格での売却を想定する場合は、不動産鑑定士による鑑定評価を依頼することが一般的です。また、株式や投資信託などの金融商品は、相続開始日の終値や基準価額を基準に評価されますが、相場の変動が激しい場合は複数日を参考にすることも考慮されます。これらの評価額を巡って相続人間で意見が食い違うことがあるため、専門家の意見を参考にすることが推奨されます。

預貯金については、相続発生時点での残高証明書を取得し、その額が遺産として計上されます。また、金銭債権や負債についても、契約書や残高証明書などの書類を基に正確に把握しておく必要があります。負債がある場合は、遺産分割の際にどの相続人がどの程度負担するかも話し合いのポイントとなります。

専門家を利用するケースについても触れておきましょう。不動産の適正な価格を知るために不動産鑑定士や土地家屋調査士に依頼することや、株式や投資信託の評価について証券会社や金融機関に確認を取ることが一般的です。弁護士や税理士、行政書士などの専門家に相談することで、複雑な相続財産の評価が正確に行われるだけでなく、相続税の申告に関するアドバイスも得られます。特に、不動産の評価額が大きい場合や、相続人間の意見が対立している場合には、専門家のサポートを得ることがトラブルを未然に防ぐ手段となります。

最後に、財産評価が不明確なまま進められた遺産分割協議は、後に大きなトラブルの原因となる可能性があります。例えば、不動産の評価額が過小評価されていると、一部の相続人が不利益を被ることになり、協議の結果に異議を申し立てるケースも少なくありません。そのため、各財産の評価方法を明確にし、全相続人がその評価に納得していることが、円満な協議を進める上で不可欠です。

円満な協議を進めるためのポイント

 円満な遺産分割協議を進めるためには、いくつかのポイントに注意することが重要です。まず、遺留分について理解しておく必要があります。遺留分とは、一定の相続人に法律で保証された最低限の相続分で、遺言書で他の相続人に多くの財産を譲渡する場合でも、遺留分を侵害しないよう配慮が必要です。これを無視すると、後に法的な争いに発展する可能性があります。 話し合いをスムーズに進めるためには、意見の違いが出た場合でも冷静に対応し、感情的な対立を避けることが大切です。相続は家族間の問題であるため、感情が絡みやすいですが、論理的に事実を整理し、協調的な姿勢で臨むことが求められます。

行政書士のサポートを活用することも、協議をスムーズに進める鍵となります。行政書士は法律や相続手続きに精通しており、客観的な視点でアドバイスを提供できるため、相続人間の意見調整や法的なトラブル回避に大いに役立ちます。行政書士には戸籍謄本の収集や、役所や金融機関とのやり取りの代行も依頼できますし、弁護士、司法書士、税理士、不動産鑑定士への相談すべきタイミング、状況も熟知しています。また行政書士は相続に精通している他士業とのコネクションも持っており、相続手続き全体のかじ取り役を任せることもできます。

まとめ

行政書士 井戸 規光生 事務所では相続診断士の資格を持つ行政書士が、ご依頼者様それぞれの事情に沿って、遺言書の作成サポートや、相続手続きの代行を行います。相続発生時の相続人、相続財産の調査や、各種必要書類の取得、作成、金融機関とのやり取りなど、煩雑な手続きも代行いたします。遺産の分割方法でお悩みの際でも、直接の介入、相続人間の利害の調整にならない範囲でご助言いたします。また、登記が必要な際には司法書士を、相続税に関するお悩みには税理士を、また、万が一相続人間でのトラブルが発生した場合には提携の弁護士を紹介し、ご依頼者様の負担が少ない形で諸手続きを進めてまいります。初回相談は無料ですので、お電話、お問い合わせフォームなどから、是非お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

2024年に「行政書士 井戸 規光生 事務所」を設立しました。
建設業、遺言・相続サポート業務に特化した名古屋市南部の地域密着型事務所です。
高校時代はラグビー部に所属。地元名古屋のスポーツチームを応援しています。

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