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もし家族が不在になったら?財産を守る不在者財産管理人とは
相続手続きを進める際、相続人全員が揃っていることが前提となります。しかし、もし相続人の1人が突然音信不通になってしまったらどうなるでしょうか?失踪宣告を申請するには7年という長い期間を待つ必要があり、その間、財産の分割や処理が滞ってしまうこともあります。このような状況で相続手続きをスムーズに進めるために活用されるのが、「不在者財産管理人」の制度です。本記事では、相続人の1人が行方不明で連絡が取れない場合に、どのようにして不在者財産管理人を選任し、相続手続きを進めていくのかについて解説します。突然の事態に備えて、知っておくべきポイントを押さえておきましょう。
不在者財産管理人とは?
不在者財産管理人は、行方不明者の財産を管理する役割を持ち、裁判所により選ばれる人です。行方不明の相続人がいて遺産分割協議が進められない場合、不在者財産管理人を立てることで、その代理として協議に参加してもらい、相続手続きを進められます。ただし、裁判所の監督下で職務を行い、報酬が発生することもあります。
不在者財産管理人の職務内容
不在者財産管理人は、行方不明者の財産を保全し、管理します。また、財産目録や収支報告書を作成して、定期的に裁判所へ報告する義務があります。本人の利益を守るため、無断で財産を使用することはできません。
不在者財産管理人を選任する条件
不在者財産管理人は、行方不明者が「不在者」とみなされる場合に選任されます。つまり、長期間連絡が取れず、居場所が分からず、当面帰る見込みがない場合です。居場所が特定できるなら不在者とはされません。
選任が必要なケース
不在者が遺産分割の相続人となっている場合や、不在者の共有物件を処分する場合などに、不在者財産管理人の選任が求められます。
失踪宣告との違い
不在者財産管理人は、本人が死亡したとみなされることはありません。失踪宣告を受けるには7年以上行方不明である必要がありますが、不在者財産管理人はその期間を待たずに選任可能です。
不在者財産管理人の選任方法
不在者財産管理人は、不在者の最後の住所地や居所の家庭裁判所に申立てを行い、選任してもらいます。申立権者は配偶者、相続人、債権者、検察官などで、裁判所が定める書類や証拠を提出する必要があります。
【必要書類】
・申立書(裁判所の定める書式に従って申立人が作成します)
・不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
・不在者の戸籍附票
・財産管理人候補者の住民票または戸籍附票
・不在であることがわかる資料
・不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書、預貯金や有価証券の残高がわかる書類など)
・相続人による申立ての場合には戸籍謄本(全部事項証明書)などの相続関係がわかる資料
【手数料】800円の収入印紙、郵便切手などが必要です。また、財産管理に必要な費用がかかる場合もあります。
誰が不在者財産管理人に選ばれる?
不在者財産管理人の選任は家庭裁判所が最終的に決定しますが、申立人が候補者を提案することは可能です。つまり、完全に家庭裁判所に一任されているわけではなく、申立の段階で具体的な管理人候補を提示することで、弁護士などの報酬が必要な専門家が選ばれるのを避けられる場合がありますが、裁判所が候補者を不適切と判断した場合、専門家(弁護士や司法書士)が選ばれることもあります。財産がそれほど多くない場合、家庭裁判所も親族や知人を優先して選任することが多いです。弁護士や司法書士などの専門家が選ばれるのは、主に財産管理が複雑である場合や、信頼できる候補者がいないときです。
不在者財産管理人が、遺産分割協議をする場合の手続
不在者財産管理人が、遺産分割協議をする場合「権限外行為許可」という手続が必要です。不在者財産管理人の有する権利は、それは主に財産を保存することです。遺産分割協議をしたり、不在者の財産を処分(売却など)したりする行為は、通常の不在者財産管理人の権限を超えていますので、別に家庭裁判所の許可が必要となります。
不在者財産管理人を選任する際の注意点
不在者に不利な遺産分割はできない
不在者財産管理人は、本人の利益を守るため、不在者に不利な遺産分割協議には参加できません。最低でも法定相続分を確保する必要があります。 例えば、親が亡くなり相続人が3人の子どもだったとします。その中の1人が5年ほど音信不通で、生前迷惑をかけられていて、とても法定相続分なんて相続させたくないと、思っていたとしても、不在者財産管理人は法定相続分通りの遺産分割協議書を主張します。音信不通の子どもの相続分を減らすには生前に遺言書を書いておくしかありません。(不義理の子どもでも相続分を極端に少なくできない理由はコチラから)
不在者財産管理人には負担がかかる
不在者財産管理人に選任されると、財産管理や裁判所への報告などの義務が生じます。親族が選任されると特に負担が大きくなる可能性があります。
報酬が発生する可能性
専門家が選任された場合、報酬が発生します。一般的には月額2〜6万円程度が相場で、不在者の財産から不在者財産管理人の任務が終わるまで支払われますが、後に本人が現れるとトラブルになることもあります。
遺産分割が終わっても管理は続く
遺産分割が完了しても、「不在者が見つかる」、「不在者の死亡が確認される」または「不在者の失踪宣告が行われる」まで不在者財産管理人の任務は続きます。親族が選任された場合は、不在者の帰還や死亡が確認されるまで職務が継続しますし、法律の専門家が選任されていた場合は報酬がかかり続けてしまいます。遺産分割協議が終わったから不在者財産管理人の任務も終了ではないことに注意しましょう。
まとめ
行方不明の相続人がいる場合、まずは戸籍の附票を取得するなどして、所在調査を行い、それでも見つからなければ不在者財産管理人の選任を検討しましょう。自己判断で手続きを進めると、予想外の不利益を被ることもあるため、専門家に相談して適切に対応することが大切です。
行政書士 井戸 規光生 事務所では相続診断士の資格を持つ行政書士が、ご依頼者様それぞれの事情に沿って、遺言書の作成サポートや、相続手続きの代行を行っております。ご家族の中に音信不通の方がいる場合も、失踪宣告の申し立てや、不在者財産管理人選任の申し立てなど適切な方法をご助言いたします。不在者財産管理人への就任を望まれる際もお受けいたします。
相続発生時には相続人、相続財産の調査や、各種必要書類の取得、作成、金融機関とのやり取りなど、煩雑な手続きも代行いたします。また、登記が必要な際には司法書士を、相続税に関するお悩みには税理士を、万が一相続人間でのトラブルが発生した場合には提携の弁護士を紹介し、ご依頼者様の負担が少ない形で諸手続きを進めてまいります。初回相談は無料ですので、お電話、お問い合わせフォームなどから、是非お気軽にご相談ください。