相続トラブル時は必見!家裁での調停・審判の流れを解説

遺産相続は家族にとって大切な問題ですが、遺産分割協議がスムーズに進まないことも少なくありません。親族間で意見が対立し、全員が納得する解決策が見つからない場合、家庭裁判所での調停や審判に進むことになります。本記事では、相続トラブルが家庭裁判所でどのように解決されるのか、調停と審判の具体的な流れについて詳しく解説します。家族の負担を軽減し、円満な解決を目指すために、ぜひ参考にしてください。

目次

遺産分割協議がまとまらないとどうなる?

法的な解決方法としての重要性

家庭裁判所での調停や審判は、以下の点でその意義が強調されます:

・公平な第三者の関与
調停では、裁判官や調停委員という第三者が中立的な立場から関与するため、感情的な対立を抑えつつ、公平な解決が期待できます。

・法的拘束力のある解決策
調停調書や審判の決定には法的拘束力があり、相続人全員がその内容に従う義務を負うため、紛争の終結を図れます。

・相続トラブルの長期化防止
家族内のトラブルが長期化すると、関係がさらに悪化する可能性があります。調停や審判を通じて早期解決を図ることで、関係修復の可能性も高まります。

調停とは?その仕組みと進め方

遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所での「調停」が相続問題を解決する手段として活用されます。以下では、調停の概要や手続きの流れ、そしてそのメリットとデメリットについて解説します。

調停の基本的な概要

遺産分割調停は、家事審判官(裁判官)と調停委員で組織される調停委員会が、中立公正な立場で、当事者双方から言い分を平等に聞いて調整に努め、具体的な解決策を提案するなどして、遺産分割について、話し合いで円満に解決できるよう斡旋する手続きです。裁判官は調停の全体を監督し、法律的なアドバイスを提供しながら、公平な解決を目指します。 調停委員は、相続問題に精通した専門家や実務家で、双方の意見を聞き、話し合いを円滑に進める役割を果たします。

調停の申し立て方法と手続きの流れ

調停を始めるためには、相続人の一人が家庭裁判所に調停の申し立てを行う必要があります。申し立ての際には、必要書類や費用を準備し、家庭裁判所に提出します。具体的な手続きの流れは次の通りです

STEP
調停の申し立て

相続人の一人が家庭裁判所に調停を申し立てます。提出する書類には、遺産分割協議書の草案や相続人の一覧表、相続財産の詳細が含まれます。調停申立書とともに手数料を支払います。

STEP
調停期日の設定

申し立てが受理されると、家庭裁判所は調停期日を設定します。通常、期日までに1~2か月ほどかかります。

STEP
調停委員との話し合い

調停期日には、相続人同士が裁判所に出席し、調停委員を交えて話し合いが進められます。調停委員は双方の意見を聞きつつ、問題解決のための提案を行い、合意に向けた調整をします。

STEP
調停の成立または不成立

話し合いの結果、全員が合意に至れば調停は成立し、調停調書が作成されます。不成立の場合は、次のステップとして審判に移行します。

調停のメリットとデメリット

調停には、裁判とは異なるいくつかのメリットがありますが、同時にデメリットも存在します。

メリット

・非公開で進行:家族内の問題が外部に漏れず、プライバシーが守られます。

・柔軟な解決が可能:調停委員が間に立って双方の意見を調整するため、裁判よりも柔軟な解決が期待できます。

・時間と費用の節約:裁判に比べて手続きが比較的短期間で進み、費用も少額で済むことが多いです。

デメリット

・合意に至らない場合もある:相続人同士の対立が深い場合、調停でも合意が難しく、審判に進まざるを得ないことがあります。

・時間がかかる場合がある:双方が歩み寄る必要があるため、合意に至るまでに多くの時間を要することがあります。

調停で合意に至った場合の効力(調停調書)

調停が成立した場合、調停調書という法的文書が作成されます。調停調書は、裁判の判決と同等の効力を持ち、相続人全員がその内容に従う義務を負います。もし調停調書の内容に従わない者がいた場合、強制執行手続きが可能です。

調停が不成立の場合の審判とは?

審判に移行するケース(調停不成立の状況)

家庭裁判所での調停は、相続人同士の話し合いによって円満に解決することを目的としています。しかし、調停でも相続人全員が合意できない場合、調停は「不成立」となります。この場合、裁判官が法的に解決を図る「審判」に移行します。主な移行ケースは以下の通りです:

・相続人間の意見対立が深い場合
話し合いでは解決できないほど意見が対立している場合、調停での合意は難しくなり、審判に移行します。

・感情的な対立や根深い家族問題
感情的な問題や家族間の歴史的な不和が原因で、話し合いが進まない場合も審判に至ることがあります。

・財産評価や分割方法に関する争い
特に不動産や株式などの財産の評価や分割方法に関して意見が一致しない場合、調停では解決できず、審判での判断が必要になることがあります。

審判手続きの進行方法

審判に移行すると、家庭裁判所の裁判官が最終的な決定を行います。審判の手続きは次のように進行します:

STEP
証拠や資料の提出

相続人それぞれが、相続財産や分割に関する意見を主張するための証拠や資料を裁判所に提出します。これは、不動産の評価額や遺産の詳細、各相続人の主張する分割割合などです。

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裁判官による審理

裁判官は、提出された証拠や資料をもとに、相続財産の評価や分割方法を法的に検討します。この過程で、必要に応じて相続人や証人を呼び、さらなる証言や証拠の確認が行われます。

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審判の決定

審理が終了すると、裁判官が最終的な判断を下し、「審判決定」がなされます。この審判決定は、各相続人に通知され、法的に拘束力を持つ内容となります。

審判での判断の効力(強制力のある審判)

審判による決定は、相続人全員に対して強制力を持ちます。つまり、審判の結果に従わない相続人がいた場合でも、審判決定に基づいた遺産分割が行われます。審判は、最終的な解決手段であり、法的に強力な効力を持つため、相続人全員がその決定に従わなければなりません。

審判のメリット・デメリット

メリット

・強制力がある解決:審判の決定は法的拘束力を持つため、相続人全員がその決定に従う必要があり、遺産分割が確実に進みます。

・確実な解決が可能:調停が長引いた場合でも、審判では最終的な判断が下されるため、相続問題を強制的に解決できるのが大きな利点です。

・専門的な判断:裁判官が法律や証拠に基づいて客観的な判断を下すため、適正かつ公平な解決が期待できます。

デメリット

・当事者の納得感が低い可能性:審判は裁判官が最終判断を下すため、相続人同士の合意を基にした解決ではありません。そのため、相続人の中には不満を持つ者がいる可能性があります。

・感情的な対立が残ることもある:審判による強制的な解決は、家族間の感情的な対立を根本的に解消できない場合もあり、後々の関係修復が難しくなることがあります。

・時間と費用がかかる:調停と比べて、審判は手続きが長引くことがあり、費用面でも相対的に高額になる場合があります。

「調停」と「審判」の最も大きな違いは、「調停」は当事者同士の話し合いの性質を持っているのに対し、「審判」はその性質がなく、あくまで裁判所が判断するということです。

調停・審判に進む前に知っておきたいポイント

必要な書類や準備するべき証拠

調停や審判では、相続財産の詳細や各相続人の主張を明確にするための書類が必要です。具体的には、遺産分割協議書の草案相続人全員の戸籍謄本財産目録などが挙げられます。不動産の評価書や銀行の残高証明書など、財産の内容を証明する資料も準備しておきましょう。 調停や審判は、法的な知識や手続きが複雑になることが多いため、弁護士のサポートを依頼することが有効です。弁護士は、必要な書類の準備や法的主張を適切に行い、依頼者の権利を守るために大きな役割を果たします。また、冷静なアドバイスを受けられるため、手続きがスムーズに進むでしょう。

調停や審判の期間と費用についての目安

調停は通常数か月から1年程度で終わることが多いですが、審判に進むとさらに時間がかかることがあります。費用面では、調停の申し立てにかかる手数料は数千円程度ですが、弁護士費用が別途発生する場合もあります。審判では、さらに費用がかかる点に留意しましょう。

まとめ

遺産分割協議がこじれても、家庭裁判所での調停や審判を利用することで、最終的には法的に公正な解決を図ることができます。調停は柔軟な話し合いの場を提供し、審判では裁判官が最終的な判断を下します。また、弁護士に相談することで、複雑な手続きや主張を適切に進められ、自身の権利を守ることが可能です。専門家のサポートを受けながら、冷静に対応することが重要です。 

行政書士 井戸 規光生 事務所では相続診断士の資格を持つ行政書士が、ご依頼者様それぞれの事情に沿って、遺言書の作成サポートや、相続手続きの代行を行っております。相続発生時の相続人、相続財産の調査や、各種必要書類の取得、作成、金融機関とのやり取りなど、煩雑な手続きも代行いたします。万が一相続人間でのトラブルが発生したり、遺産分割協議がまとまらなかった場合、提携の弁護士を紹介することで、ご依頼者様の負担が少ない形で諸手続きを進めてまいります。初回相談は無料ですので、お電話、お問い合わせフォームなどから、是非お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

2024年に「行政書士 井戸 規光生 事務所」を設立しました。
建設業、遺言・相続サポート業務に特化した名古屋市南部の地域密着型事務所です。
高校時代はラグビー部に所属。地元名古屋のスポーツチームを応援しています。

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