相続財産の共有問題、どう解決する?専門家が教える最適な方法

相続が発生すると、遺産を複数の相続人で共有するケースがしばしば見受けられます。しかし、この「相続財産の共有」は思わぬトラブルを招くことが多く、相続人同士の関係を悪化させてしまうことも少なくありません。特に不動産や現金以外の資産が含まれている場合、誰がどのように管理し、将来的にどう分割するかを巡って対立が生じがちです。

本記事では、相続財産の共有に関するよくある問題と、その解決策について詳しく解説します。共有状態を早期に解消し、相続人全員が納得できるスムーズな遺産分割を実現するために、専門家の視点から最適な方法を提案します。

目次

相続財産の共有とは?

相続が発生すると、遺産は複数の相続人によって分けられますが、必ずしも個別に分割できるとは限りません。特に不動産や動産など、物理的に分けにくい財産は「共有」として扱われ、相続人全員がその一部を持つことになります。この「相続財産の共有」には、管理や分配に関する複雑な問題が伴うことが多く、長期間にわたってトラブルの原因となる場合も少なくありません。

相続財産が共有される背景

相続が発生した場合、遺産分割協議が行われるまでの間、遺産は法定相続分に応じて相続人全員の共有財産となります。また、遺産分割協議で具体的な分割方法が決まらない場合、例えば不動産や骨董品など分割が難しい財産が複数人の共有名義のまま残されることがよくあります。このような共有状態は、意見の対立や財産の利用に関するトラブルの温床となりやすいです。

共有される財産の典型例

相続財産の中でも特に共有されやすいのは、不動産や高価な動産(絵画や骨董品など)です。不動産は特に分割が困難なため、共有状態が長く続くことが多いです。また、株式や債券、投資信託のような金融資産も、分割が難しい場合は一部を共有する形で相続されることがあります。

共有が続くことによるリスクやトラブル

共有状態が続くと、相続人同士で意見が一致しない場合、財産の管理や処分に支障が生じます。不動産であれば、売却や賃貸などの管理方法を巡って対立が起こり、結局何も決まらないまま時間が経過することがあります。また、共有者全員の同意がなければ財産を売却できないため、流動性の低い資産が塩漬け状態になるリスクも高いです。長期化すれば、財産の価値が下がる恐れもあるため、早期解決が求められます。

共有問題を解決するための基本的な解決策

相続財産が共有状態になると、管理や処分に関して様々なトラブルが生じることがあります。こうした問題を避けるために、共有以外の相続方法として「現物分割」「代償分割」「換価分割」の3つの方法が考えられます。これらの分割方法を適切に選ぶことで、相続人同士の争いを未然に防ぎ、円滑な相続を進めることができます。

現物分割

「現物分割」は、遺産をそのままの形で分割する方法です。たとえば、不動産を一人の相続人が取得し、預貯金を別の相続人が取得する、といった具合に財産を分けます。この方法は、財産の形を維持できるため、特定の相続人がその財産を継承したい場合に適していますが、価値が均等でない場合には不公平が生じる可能性があります。

代償分割

「代償分割」は、特定の相続人が財産を取得する代わりに、その相続人が他の相続人に代償金を支払う方法です。たとえば、ある相続人が不動産を相続し、他の相続人に対して現金でその分を補償する形でバランスを取ります。この方法は、特定の財産を確保しつつ、他の相続人にも公平な分配を行うことができるメリットがあります。

しかしながら、相続人が2人で、それぞれの相続分が1/2ずつの場合、1人が5000万円相当の不動産を取得して、2500万円をもう一人の相続人に払えれば良いのですが、払えない場合はこの方法はとれません。

換価分割

「換価分割」は、財産を売却してその売却代金を相続人で分割する方法です。不動産や高価な動産を全員で共有するのが難しい場合に、売却することで公平な分配を図ることができます。換価分割は、相続人全員に等しく金銭を分配できるため、最もシンプルでトラブルを避けやすい方法の一つですが、「売却」には相続人全員の同意が必要で、誰か一人でも遠方(外国)に住んでいる、疎遠である、認知症である、未成年であるなどといった事情がある場合は、売却手続きも簡単には進みません。

共有によるよくあるトラブル

相続財産が共有された場合、複数の相続人が関わるため、管理や利用に関して意見が対立することが多々あります。特に不動産や動産など、分割が難しい資産では、以下のようなトラブルが発生しがちです。

財産管理の意見対立

共有状態にある財産は、維持費や管理方法について全員の合意が必要です。不動産の場合、修繕費や固定資産税などの維持費用をどう負担するかで意見が分かれることがあります。また、物件をどう利用するか(賃貸にする、売却するなど)についても、相続人それぞれの立場や希望が異なれば対立が生じ、決定が先送りされるケースが少なくありません。このような場合、結局何も決まらず、財産の価値が下がる恐れもあります。

利益分配の不均衡

共有財産が不動産の場合、誰がその物件を使用するか、または賃料などの収益が発生した場合に、どう分配するかが問題となります。たとえば、相続人の一人が共有不動産に住み続ける場合、他の相続人が「不公平だ」と感じることがあります。また、賃貸収入がある場合、管理業務を行っている人とそうでない人との間で、収益分配のバランスに不満が生じることも考えられます。

売却や処分ができない状態

共有財産を処分するには、共有者全員の同意が必要です。特に不動産の売却は全員が同意しなければ実行できませんが、相続人の一部が反対すると、売却自体が進まないケースがあります。このように、意見が合わずに処分ができない状態が長引くと、財産が「塩漬け」状態となり、共有者全員にとって不利な状況が続く可能性があります。

トラブルを防ぐための事前対策

相続財産の共有によるトラブルを防ぐためには、事前の対策が非常に重要です。特に「遺言書の作成」や「生前贈与」などの準備を進めることで、共有状態に陥るリスクを大幅に減らすことができます。これにより、相続人同士の意見対立を未然に防ぎ、スムーズな相続手続きを実現できます。

遺言書の作成

遺言書を作成することで、相続人ごとの遺産分割を明確にし、共有財産が発生するリスクを回避できます。たとえば、不動産を特定の相続人に相続させ、他の相続人には預貯金や動産を相続させるなど、事前に財産を分けることで、共有問題を防ぐことが可能です。また、遺言書では遺言執行者を指定することもできます。遺言執行者は、遺産分割の手続きを円滑に進めるための責任者であり、相続人同士の対立を避けるうえで大きなメリットがあります。これにより、専門的な知識を持つ第三者が法的手続きを進め、相続人間の負担を軽減します。

生前贈与や相続対策

もう一つの有効な手段は、生前に財産を分割する「生前贈与」です。例えば、不動産を相続人の一人に生前に譲渡し、他の相続人には換価した財産を分配するなどの具体的な対策を取ることで、相続後のトラブルを避けられます。生前に不動産を複数の相続人間で分割したり、あるいは一部の財産を売却(換価)してその売却代金を分けることも可能です。こうした手続きは、相続税の負担を軽減する効果もあり、税務上のメリットも享受できることから、多くのケースで採用されています。

これらの事前対策を行うことで、相続時の共有問題を回避し、相続人全員が納得できる形での相続を進めることができます。

まとめ

相続手続きでは、弁護士、行政書士、税理士といった専門家が重要な役割を果たします。弁護士は法的トラブルの解決を、行政書士は遺言書作成や遺産分割協議書の作成を、税理士は相続税の申告や節税対策をサポートします。専門家の助言を受けることで、トラブルを未然に防ぎ、円滑な手続きが実現します。また、相続問題は早期の相談が鍵です。専門家は相続人全員が納得できる解決策を模索し、公平な相続を進めるための支援を行います。行政書士 井戸 規光生 事務所では相続診断士の資格を持つ行政書士が、ご依頼者様それぞれの事情に沿って、遺言書の作成サポートや、相続手続きの代行を行っております。相続発生時の相続人、相続財産の調査や、各種必要書類の取得、作成、金融機関とのやり取りなど、煩雑な手続きも代行いたします。初回相談は無料ですので、お電話、お問い合わせフォームなどから、是非お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

2024年に「行政書士 井戸 規光生 事務所」を設立しました。
建設業、遺言・相続サポート業務に特化した名古屋市南部の地域密着型事務所です。
高校時代はラグビー部に所属。地元名古屋のスポーツチームを応援しています。

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