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知って得する!遺言書に関する最新の法律改正
遺言書は、自分の意思を明確に伝え、愛する家族や大切な人々にスムーズに遺産を相続させるための重要なツールです。しかし、近年、遺言書に関する法律が改正され、従来の常識が大きく変わりつつあります。この改正は、相続手続きの簡素化や、より多様なニーズに応えるためのものです。本記事では、2019年以降に施行された遺言書に関する主な法律改正について詳しく解説します。改正の背景や具体的な内容、そしてその影響について知ることで、あなた自身やご家族のためにより良い相続計画を立てる助けになります。
はじめに
遺言書は、相続における個人の意思を明確に伝える重要な手段です。法定相続に従う場合、遺産分割の方法や受け取る額に不満を持つ相続人がいることも少なくありません。遺言書を作成することで、遺産の配分に対する意向を法的に確立し、相続人間の紛争を未然に防ぐことができます。さらに、遺言書を書くことによって、特定の相続人に対する配慮や、法定相続分にこだわらない自由な分配を可能にし、個々の家族事情に応じた柔軟な対応を取ることができます。
また、近年では相続、遺言書に関する法律改正が相次いでおり、遺言書の重要性はさらに高まっています。例えば、2019年の法改正では、「自筆証書遺言の方式緩和」と「遺言執行者の権限の強化」が行われました。さらに2020年には、「自筆証書遺言の保管制度」が導入されました。こうした改正は、相続人の利益を保護し、相続手続きの円滑化を目的としています。
主な改正点
自筆証書遺言の要件緩和
平成31年(2019年)1月13日から、自筆証書遺言に関する重要な法改正が施行されました。この改正により、自筆証書遺言の作成が以前よりも容易になり、多くの人が活用しやすくなっています。特に、財産目録に関する要件が大幅に緩和されたことが注目されます。
財産目録のパソコン書きが可能に
従来、自筆証書遺言は遺言者が全文を自署する必要があり、特に財産目録を手書きで記載する作業は大変な負担となっていました。財産が多岐にわたる場合、手書きでの記載は時間と労力を要し、誤字脱字が発生しやすいという問題もありました。しかし、2019年の法改正により、財産目録に関しては手書きでなくともよいとされ、パソコンで作成したものを添付することが認められるようになりました。これにより、遺言書作成のハードルが大幅に下がり、より多くの人が手軽に自筆証書遺言を作成できるようになっています。
通帳のコピーの添付もOK
さらに、この法改正では、財産目録として金融機関の通帳のコピーや、不動産登記事項証明書のコピーなどの添付も可能になりました。これにより、正確な情報を元に遺言書を作成することができるため、相続手続きの際に発生しやすい情報の不備によるトラブルを未然に防ぐ効果が期待されています。特に、金融資産が多岐にわたる場合や、不動産が複数ある場合には、これらの添付が遺言書作成を大幅に簡便化します。
遺言者の署名・押印は必須
ただし、緩和されたのは財産目録の作成部分のみであり、遺言書の本文は依然として遺言者自身が手書きで作成する必要があります。また、財産目録をパソコンで作成した場合やコピーを添付する場合であっても、遺言者はその各ページに署名・押印を行うことが求められます。この要件を満たさない場合、遺言書は無効とされる可能性があるため、注意が必要です。
このような要件緩和は、遺言者がより簡単に遺言書を作成できる環境を整えるための一歩であり、相続に関する紛争の予防にも寄与しています。
遺言執行者の権限の強化
令和元年(2019年)7月1日から、遺言執行者の権限強化に関する民法の改正が施行されました。この改正は、遺言執行者の立場や権限を明確化し、円滑な遺言執行を実現するための重要な内容を含んでいます。遺言書に基づく財産分配が確実に行われるよう、遺言執行者の役割が強化され、トラブルの防止や迅速な相続手続きが期待されています。
独立した立場として認められた
改正前は、遺言執行者は「相続人の代理人」でしたが、法改正によって、遺言執行者は独立した立場と定められました。
相続人が妨害できない
改正法では「相続人が、遺言執行者の行為を妨害した場合にはその行為が無効になる」と規定されています。これにより、遺言書の内容に不満を抱く相続人が、遺言執行者を妨害することができなくなりました。
相続登記ができる
法改正前までは、「不動産を相続させる」という遺言書があった場合、遺言執行者単独で不動産の名義変更の登記申請ができませんでした。しかし改正後は遺言執行者が単独で登記申請できるようになりました。
自筆証書遺言 保管制度の導入
令和2年(2020年)7月10日から、遺言書保管制度がスタートしました。この制度では、自筆証書遺言を法務局で保管できるようになり、遺言書の紛失や偽造のリスクを軽減します。保管には手数料3,900円が必要で、法務局に遺言書を提出することで、安全に保管されます。遺言書が作成された事実が確実に記録されるため、相続発生後に遺言書の存在が確実に確認され、家庭裁判所での検認手続きも不要となるメリットがあります。
まとめ 法改正の背景
これまで見てきたような法改正だけでなく、配偶者居住権の設定や、法定相続情報一覧図制度の制定、戸籍収集の簡易化など、政府は遺言・相続制度の簡便化に動いています。その理由には、高齢化社会の進展により、相続が多く発生することが確実な情勢下、相続税を効率的に徴税することや、資産の若年層への移転を促進させて、経済の循環を図ること、所有者不明の不動産を少なくし、有効な国土の活用をすることなどが挙げられます。