こんな時どうする?相続でよくある5つのトラブルと解決法

 相続は、大切な人を失った悲しみの中で行わなければならないだけでなく、家族の関係や財産分けの問題が絡み合うため、予期せぬトラブルが発生しがちです。普段あまり意識しない「相続」ですが、実は私たちの生活に密接に関わっており、きちんとした準備や知識があるかどうかで大きく結果が異なります。本記事では、相続でよくあるトラブル事例を取り上げ、その具体的な対処法をわかりやすく解説していきます。「家族が不安を抱えることなく、スムーズに相続を進めるためにはどうすれば良いか?」という視点で、できるだけ平和で円満な相続ができるように役立つ情報をお届けします。これを読めば、後悔のない相続に向けた具体的な準備が始められるはずです。

目次

相続人に認知症や障害を持つ人がいる場合

概要

相続人の中に認知症や知的障害などで判断能力が不十分な人が1人でもいる場合、遺産分割協議はスムーズに進みません。遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要な手続きですが、判断能力が不十分な相続人がいると、その相続人に代わって意思表示を行うための「成年後見人」を家庭裁判所に申し立て、選任する必要が生じます。成年後見人の選任には時間がかかり、その間遺産分割協議を進めることができず、他の相続人も手続きが完了するまで待たなければならなくなります。これにより協議が長引く可能性が高く、また成年後見人が加わることで協議がさらに複雑化し、トラブルに発展するケースもあります。

(*)相続財産が、あまり価値のない不動産1つだけで、それを長男が他の相続人への代償金も払わずに100%相続し、事後処理をする(長男の「遺産独り占め」ではなく、「面倒を引き受け」ている)ということで、相続人間での合意があっても、判断能力が不十分な相続人がいた場合は、その後見人が分割協議に参加しなくてはなりません。その場合でも、後見人は前述の家族の事情を斟酌せずに、法定相続分を相続させるべきと主張します。

回避策

判断能力が不十分な相続人がいる場合でも、スムーズな相続を進めるために、生前から家族で話し合い、可能な対策を準備しておくことが非常に有効です。具体的には、認知症などの兆候が見られる場合、本人が元気なうちに「任意後見制度」の利用を検討することが一つの方法です。任意後見制度とは、本人が判断能力を失ったときに備えて、あらかじめ信頼できる人に財産管理などを任せる契約を結んでおく制度です。これにより、本人が意思表示できなくなっても信頼できる後見人が財産管理を担うため、遺産分割協議をスムーズに進めることが可能になります。

また、家族信託を利用することも有効な方法です。家族信託は、あらかじめ相続財産を管理・運用する家族の一人を信託受託者として指定し、遺産の分配や運用に関する権限を託す仕組みです。これにより、判断能力に不安のある相続人がいても、信託受託者が財産を適切に管理し、相続手続きをスムーズに進められるようになります。認知症にならないうちに、家庭の状況に応じた対策を生前から話し合っておくことが、円満な相続のための第一歩です。

相続財産に借金や連帯保証が含まれている場合

概要

被相続人が借金を抱えたまま亡くなった場合、その借金も相続財産の一部として相続人に引き継がれます。さらに、被相続人が生前に連帯保証人となっていた場合、その保証義務も同様に相続され、相続人が連帯して支払い義務を負う可能性があります。こうした負債は、相続人にとって大きな負担となり、返済が困難な場合は相続トラブルに発展するケースも少なくありません。特に、被相続人が負債の存在を生前に知らせていなかった場合、相続人がその負担を突然知ることになり、大きな混乱が生じることがあります。

回避策

負債を抱えている場合、まず生前から財産と負債の詳細な記録を残し、相続人が確認できるようにしておくことが大切です。具体的には、借入先や金額、支払い状況、連帯保証人としての契約内容などを整理し、配偶者や子どもなど、相続する可能性のある人に伝えるか、信頼できる専門家と共有しておくと良いでしょう。また、相続発生後は速やかに相続放棄や限定承認の手続きを検討するためにも、相続人全員で専門家に相談することが重要です。

特定の相続人が被相続人と同居していた場合

概要

被相続人と同居していた相続人がいる場合、特にその相続人が日常的な介護や生活面で被相続人を支えていた場合には、他の相続人との間で貢献の度合いについて意見が分かれることがあります。たとえば、同居していた相続人が「自分は介護に多くの時間や労力を費やした」として、他の相続人より多くの遺産を受け取る権利があると主張するケースがあります。これを「寄与分」と呼び、介護などの貢献により相続財産が増加したり、維持されたりした場合に認められるものです。しかし、どの程度の貢献があったのか、どれだけの寄与分を認めるかについては相続人間で評価が分かれやすく、相続トラブルの原因になりやすいポイントです。

回避策

こうしたトラブルを避けるためには、生前から同居や介護の貢献に関するルールを家族で話し合っておくことが重要です。具体的には、被相続人がその感謝の気持ちを明確に示す方法として、遺言書に同居相続人の貢献を記載し、特別に配慮する旨を記しておくことが考えられます。遺言書には、介護や生活支援を行った相続人への思いや感謝の言葉を添え、相続における具体的な配分を示すことで、他の相続人も理解を得やすくなります。

また、家族全員で同居相続人の貢献度について話し合い、あらかじめ共有しておくことで、相続が発生した際にトラブルが生じにくくなります。こうした準備を行うことで、家族全員が納得できる形で相続を進められ、円満な相続を実現することが可能になります。

遠方に住んでいる相続人がいる場合

概要

相続人の中に遠方に住んでいる人がいると、遺産分割協議の日程を全員の都合に合わせることが難しくなり、手続きが滞ることがよくあります。遺産分割協議は、相続人全員が出席し合意することが基本であり、遠方の相続人がなかなか出席できない場合、相続手続き全体の進行が遅れる原因になります。また、遠方の相続人が被相続人の財産管理やその利用状況について詳細を把握できず、不安や不信感を抱くケースもあります。こうした不安や不信感が積み重なると、相続人間で疑心暗鬼が生じ、最終的には親族間のトラブルや対立に発展することも少なくありません。

回避策

遠方に住んでいる相続人がいる場合、全員が集まるのが難しいときには、オンライン会議システムや郵送での手続きを活用し、情報をスムーズに共有することが重要です。現在では、インターネット環境があればオンラインでの会議や書類確認ができるため、場所に関係なく協議を進められるようになっています。特に遠方に住む相続人は、協議の進行状況を随時確認できることが不安軽減につながり、信頼関係の維持にも役立ちます。

遺産が現金以外の不動産や事業資産の場合

概要

相続財産の多くが不動産や家業(農業、会社経営など)に偏っている場合、現金のように分割しにくいため、相続人間で公平に分配するのが難しくなります。不動産の価値は一部の相続人に集中しがちで、結果として他の相続人が納得できないケースも多いです。また、家業や事業資産が含まれている場合、誰がその事業を引き継ぐのかで相続人の意見が分かれることもあります。特に事業に携わってきた相続人とそうでない相続人の間で、事業を継承する相続人に対する評価や期待が異なるため、相続手続きが難航することがよくあります。

回避策

こうした混乱を避けるためには、まず被相続人が生前から「事業承継計画」を立て、家族や事業に関わる人と話し合っておくことが重要です。誰が事業を引き継ぐか、また残りの相続人にはどのように補償するかといった方針を決めておくことで、相続発生後の混乱を防ぐことができます。また、不動産の相続についても生前から検討しておき、不動産を相続人で公平に分割することが難しい場合は、売却を検討するのも一つの選択肢です。売却して現金化すれば、相続人間での分配が容易になり、公平性も保ちやすくなります。

不動産や事業資産が相続財産に含まれる場合は、事前の準備と相続人間での話し合いが不可欠です。早めに対策を講じておくことで、円満な相続を実現しやすくなるでしょう。


まとめ

行政書士井戸規光生事務所では、相続診断士の資格を有する行政書士が、ご依頼者様一人ひとりの状況に合わせて、相続発生後の相続人・相続財産の調査をはじめ、各種必要書類の取得・作成、金融機関との調整など、煩雑な手続き全般をお引き受けいたします。

また、相続トラブルが発生した際は、早期に解決を図ることで、大きな問題に発展する前に収束させることができます。また、事前の準備や適切な対策を講じておくことで、相続トラブルそのものを未然に防ぐことも可能です。初回相談は無料ですので、ぜひお気軽にお電話やお問い合わせフォームからご相談ください。

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この記事を書いた人

2024年に「行政書士 井戸 規光生 事務所」を設立しました。
建設業、遺言・相続サポート業務に特化した名古屋市南部の地域密着型事務所です。
高校時代はラグビー部に所属。地元名古屋のスポーツチームを応援しています。

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