古いマンションは要注意!見落としがちな相続不動産の調べ方

相続手続きを進める際、被相続人の名義となっている不動産を正確に把握することは、非常に重要です。しかし、多くの方が「固定資産税課税明細書」を基に不動産を調べる中で、実は重要な資産を見落としてしまうケースが少なくありません。特にマンションなどの集合住宅では、敷地権や共有持分といった特殊な権利が絡むため、固定資産税明細書だけではすべての不動産を網羅できない可能性があります。

この記事では、固定資産税明細書の限界とその背景にある理由、そして被相続人名義の不動産を正確に調べるための具体的な方法について分かりやすく解説します。大切な相続手続きを漏れなくスムーズに進めるためのヒントをぜひご覧ください。

目次

敷地権付き区分建物とは?

マンションの相続や登記を進める際に、「敷地権付き区分建物」という言葉を耳にすることがあります。これは、多くのマンションに共通する特徴であり、相続手続きにおいても重要な概念です。以下では、敷地権付き区分建物の仕組みや歴史的背景、注意点について詳しく解説します。

敷地権付き区分建物の仕組み

マンションは、一般的に建物部分と、その建物が建つ土地部分で構成されています。多くのマンションでは、この建物と土地の権利が一体化しており、この仕組みを「敷地権付き区分建物」と呼びます。この場合、建物と土地を別々に登記する必要がありません。一体化することで、建物だけを売却したり、土地だけを他者に譲渡したりすることができない仕組みになっています。

この仕組みは、マンションの運営や管理を円滑にするための工夫の一つです。土地と建物の所有者が別々になると、建物の修繕や土地利用において所有者間でトラブルが発生しやすくなるため、敷地権付き区分建物はそのリスクを防ぐ役割を果たしています。

昭和58年の法改正と敷地権付き区分建物の普及

現在、多くのマンションが敷地権付き区分建物となっているのは、昭和58年(1983年)の法改正が大きな転機となっています。この改正により、敷地権と建物部分を分離して処分することを禁止する「分離処分禁止の原則」が定められました。この原則により、新築のマンションでは原則として敷地権と建物が一体化されるようになり、現在の普及状況につながっています。

古いマンションにおける例外

しかし、昭和58年以前に建てられたマンションの中には、現在も敷地権が設定されておらず、建物と土地の登記が分かれているものがあります。このようなマンションの場合、相続や登記手続きの際には建物と土地の両方を個別に確認する必要があります。登記事項証明書が建物と土地で分かれているため、注意が必要です。

敷地権の特殊なケース

また、敷地権は必ずしも1筆(土地の1区画)とは限りません。一部のマンションでは、複数の敷地の上に建物が建てられている場合があります。この場合、それぞれの土地に対して敷地権が設定されています。たとえば、隣接する2つ以上の土地の上にマンションが建設されている場合、それぞれの土地の権利を考慮する必要があります。

敷地権付き区分建物は、現代のマンションにおいて一般的な仕組みですが、昭和58年以前のマンションや特殊な土地の条件を持つ物件では例外的なケースも見られます。相続や登記手続きの際には、建物と土地が一体化されているかどうかを確認し、必要に応じて土地と建物の登記事項証明書(登記簿謄本)を個別に取得することが重要です。

固定資産税課税明細書に頼るリスク

相続手続きを進める際、多くの方が固定資産税課税明細書を基に不動産を調査します。しかし、この明細書だけでは被相続人名義のすべての不動産を網羅的に把握することができない可能性があります。その理由について詳しく解説します。


土地が分筆されているケース

不動産の土地部分が分筆されている場合、固定資産税課税明細書に記載されているのはその一部である可能性があります。例えば、被相続人が分筆された全ての土地に対して、少ない持ち分で権利を所有している場合、全ての土地の情報が固定資産税明細書に記載されていないことがあります。このような場合、固定資産税課税明細書だけでは全体像を把握できません。


管理事務所や住民集会所などの共有持分

マンションや集合住宅では、管理事務所や住民集会所、敷地内駐車場などの共有部分に対しても権利が発生します。これらの共有持分は被相続人名義であっても、固定資産税課税明細書に記載されない場合があります。特に共有部分は他の住民と共同で所有しているため、明細書では一目では分からないことが多いです。


住宅管理会社による固定資産税の納付

共有持分に関連して、マンションの管理会社や住宅管理組合が固定資産税をまとめて納付している場合、被相続人の負担分が固定資産税課税明細書に反映されないことがあります。結果として、相続人が不動産を見落とす原因となることがあります。

被相続人名義の不動産の把握方法

相続手続きを進める中で、被相続人名義の不動産を正確に把握することは非常に重要です。不動産相続の最終目的は、被相続人名義のすべての不動産の登記を適切に変更することです。このプロセスを確実に行うことで、名義変更が完了し、相続登記義務を果たすことができます。以下では、不動産を漏れなく把握する方法とその重要性について説明します。


固定資産税等評価証明書の活用

被相続人が所有していた不動産をリストアップするために、最も有効な方法の一つが「固定資産税等評価証明書」の取得です。これは、市区町村役場で被相続人の名前を指定して取得できる書類であり、被相続人名義の不動産がすべて記載されています。

この証明書を基に、それぞれの地番や家屋番号を特定し、登記簿謄本(登記事項証明書)を取得することで、正確な不動産情報を確認することができます。この手順を踏むことで、固定資産税課税明細書では確認できなかった不動産も把握できる可能性が高まります。


不動産の漏れを防ぐ重要性

相続手続きにおいて、遺産分割協議書に記載されていない不動産が後から発覚するケースも少なくありません。このような場合、名義変更が進まず、最終的には「相続登記の義務化」に違反するリスクが生じます。義務に違反した場合、過料の対象となる可能性があり、相続人にとって大きな負担となります。

また、遺産分割協議書に漏れがあると、再度協議を行わなければならないため、手続きが煩雑化します。このようなトラブルを未然に防ぐためにも、被相続人名義の不動産を初期段階でしっかりと調査することが不可欠です。

まとめ

マンションや集合住宅の相続手続きをスムーズに進めるためには、固定資産税課税明細書だけでなく、固定資産税等評価証明書を活用し、被相続人名義の全ての不動産を正確に把握することが重要です。不動産の漏れを防ぐため、慎重な資産調査を行いましょう。行政書士井戸規光生事務所では、相続診断士の資格を有する行政書士が、ご依頼者様一人ひとりの状況に合わせて、相続手続きを代行いたしております。相続財産の調査も徹底し、被相続人名義の不動産を正確に把握することで、漏れのない相続手続きを実現します。また、不動産登記は司法書士、相続税のお悩みには税理士、相続人間でのトラブルが起こった際には弁護士と連携し、手続きを進める体制を整えております。初回相談は無料ですので、ぜひお気軽にお電話やお問い合わせフォームからご相談ください。

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この記事を書いた人

2024年に「行政書士 井戸 規光生 事務所」を設立しました。
建設業、遺言・相続サポート業務に特化した名古屋市南部の地域密着型事務所です。
高校時代はラグビー部に所属。地元名古屋のスポーツチームを応援しています。

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