未来のために今から準備を!未成年の子どもがいる方が遺言書を書くべき理由

「遺言書」というと高齢者や資産家だけのものと考えられがちですが、実は未成年の子どもがいる親にこそ必要なものです。万が一の事態が発生した際、遺言書がなければ配偶者と子どもが法定相続分に基づいて財産を分けることになります。相続人に未成年者が含まれる場合、遺産分割には裁判所で特別代理人を選任しなければならないなど、時間と手間がかかる複雑な手続きが必要です。遺言書はこれらの問題を未然に防ぎ、大切な家族にスムーズに財産を引き継ぐための「家族への手紙」です。本記事では、未成年の子どもがいる方が遺言書を用意するべき理由とその効果的な作り方について詳しく解説します。

目次

遺言書は特別な人だけのものではない

「遺言書」と聞くと、多くの方が「自分には関係ない」と思うかもしれません。遺言書といえば、資産家や高齢者が作成するものというイメージが一般的です。しかし、それは大きな誤解です。実は、未成年の子どもを持つ親こそ、遺言書の作成を真剣に検討するべきです。

遺言書=特別な人のもの?

遺言書は、財産の多い人だけに必要なものではありません。例えば、自宅や車、預貯金など、普段の生活の中で当たり前に使っているものも、相続の対象です。こうした財産がある場合、遺言書がないと法定相続分に基づいて分割され、思わぬトラブルの原因になることがあります。また、遺産の金額が少なくても、相続人間での意見の違いから大きな対立に発展するケースも珍しくありません。

未成年の子どもがいる親にとっての遺言書の必要性

未成年の子どもを持つ親が亡くなった場合、遺言書があれば、法定相続分に縛られることなく、財産の細かい配分法を決められます。遺言書を残さずに親が亡くなった場合、未成年の子どもは相続人として法定相続分を相続しますが、自ら相続手続きを進めることはできません。そのため、家庭裁判所で特別代理人を選任する手間が発生します。また、相続財産が、不動産など分割が難しいものである場合、さらなる負担を招く可能性があります。遺言書を作成しておくことで、これらの問題を未然に防ぐことができます。遺産の分割方法を具体的に記載しておけば、相続手続きが大幅に簡略化され、残された家族の生活の安定を守ることが可能です。遺言書は、家族への愛情を形にする大切なツールです。特別な人だけのものではなく、家族を守りたいと願う全ての人にとって必要なものなのです。

未成年の子どもがいる場合の相続の現実

遺言書がない場合の法定相続分に基づく分割

未成年の子どもがいる家庭で親が亡くなった場合、遺言書がないと法定相続分に基づいて財産を分割する必要があります。法定相続分とは、法律で定められた相続割合のことです。たとえば、配偶者と子ども3人が相続人である場合、配偶者が1/2、子ども3人がそれぞれ1/6ずつの割合で相続するのが原則です。この法定相続分に基づいて、現金や不動産などを分割する手続きが必要になります。

特別代理人の選任が必要になる理由

未成年の子どもが法定相続分を持つ場合、残された配偶者(生きている片方の親)が子どもの代理として遺産分割協議に参加することはできません。なぜなら、親と子どもは利益が相反する立場にあるとみなされるからです。この場合、家庭裁判所に特別代理人を選任してもらう必要があります。

家庭裁判所での煩雑な手続き

特別代理人を選任するためには、家庭裁判所に対して申立書を提出し、証拠資料を揃える必要があります。さらに、遺産分割協議案を提出し、家庭裁判所の許可を得なければ手続きは進められません。この過程には、場合によって数か月を要することもあります。また、特別代理人が選任されても、財産の分割案が子どもの利益を損なわないことを確認するため、家庭裁判所の承認を得る必要があります。

このような精神的負担や時間的コストを縮小させるためにも遺言書を作成しておくことは、未成年の子どもがいる家庭にとって良い選択といえます。

遺言書が未成年の子どもと家族を守る理由

残された家族が生活を維持しやすくなる

「相続人に未成年がいて、遺言書がない場合、法定相続分に基づいて遺産が分割される。」このことの意味(=不利益)を解説します。相続人が全員成人している場合は相続人同士の合意の元で、『法定相続分通りではないけれど、あえて被相続人(故人)の配偶者が多めに相続し、その後の子どもの進路、人生の行く末に沿って遺産を活用していく』ことが可能です。相続人間の信頼があれば、あえて一人が多めに、(場合によっては全ての遺産を)相続すると決めることも不可能ではありませんし、そうしたケースは実は少なくないのです。

しかし、遺言書のない相続で、相続人の中に未成年者がいると、特別代理人が就き、あくまで法定相続分通りに相続することを主張するため、前述のような柔軟な遺産分割ができなくなり、生活に必要な資金や住居をうまく確保できないケースがあります。一方、遺言書で財産の分け方を家族の実情に即して明記しておくことで、生活費や子どもの教育費など、残された家族が必要とする支援を確保することができます。例えば、現金を配偶者に多めに配分することで日常の支出を賄いやすくしたり、住居を誰が利用するかを明確にすることで、家族全員が安心して暮らせる環境を維持できます。

相続税負担を軽減する工夫

法定相続分に従った遺産分割では、無駄な相続税が発生する場合があります。特に、子どもが未成年である場合、その分配分に対して相続税が課せられることがあります。しかし、遺言書で相続の割合や財産の種類を調整することで、配偶者控除や基礎控除を効果的に利用し、相続税負担を抑えることが可能です。こうした工夫により、家族全体の経済的負担を減らし、必要な資金を確保することができます。遺言書があれば、相続税を少なくするための遺産配分を指定することもできます。

遺言書は、未成年の子どもを含む家族全員が無理なく生活を続けられるよう配慮するための大切な手段です。家族の状況に合った内容で作成することが重要です。

効果的な遺言書作成のポイント

自筆証書遺言と公正証書遺言の違い

遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。自筆証書遺言は全文を手書きする必要があり、作成費用がかからず手軽ですが、形式不備や紛失、改ざんのリスクがあります。一方、公正証書遺言は公証人が作成するため、法的効力が高く、安全性に優れています。未成年の子どもがいる場合は、トラブル防止の観点から、公正証書遺言の選択が推奨されます。ただし、公正証書遺言は作成費用がかかる点に注意が必要です。

未成年の子どもがいる場合に注意すべき内容

未成年の子どもが相続人に含まれる場合、遺言書の内容を慎重に検討する必要があります。配偶者に将来的な家庭の運営のための資金や、生活に必要な財産を十分に確保できるよう配慮することも可能です。例えば、現金や住居を配偶者に優先的に分配し、子どもには必要最低限の遺産を指定する形が選ばれることもあります。また、子どもが成人するまでの教育費や生活費についても遺言書に明記しておくと、家族間でのトラブルを回避できます。

遺言執行者を定める

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人のことです。具体的には、遺言書に記された遺産の分配や名義変更などを代わりに進める役割を担います。遺言執行者がいない場合、相続人全員が協力して手続きを行う必要があり、手続きが複雑化したり、意見の対立が起こりやすくなります。そのため、遺言書には遺言執行者を指定しておくことが重要です。遺言執行者が指定されていれば、遺産分割方法に不満を抱く一部の相続人が遺産分割を妨害することはできません。

遺言執行者にふさわしい人物としては、公平で信頼できる相続人や専門家が挙げられます。相続内容が複雑な場合は、行政書士や司法書士、弁護士などの専門家に依頼するとスムーズに進みます。遺言執行者を指定することで、遺言の内容を確実に実現し、相続トラブルを未然に防ぐことができます。

遺言書作成の具体的な手順と専門家への相談の重要性

遺言書を作成する際は、まず財産の種類や評価額を把握し、相続人の状況を整理します。次に、自筆証書または公正証書を選び、遺産の分配方法や家族へのメッセージを具体的に記載します。未成年の子どもがいる場合は、相続税の控除などを考慮し、遺言の内容を決めることが重要です。こうした作業は複雑なため、行政書士や司法書士や税理士といった専門家に相談することで、法的に有効でトラブルを事前に防ぐ遺言書を作成できます。専門家の支援により、家族に安心を提供する遺言書作成がスムーズに進みます。

付言事項を活用し家族への思いを伝える

ここまでお読みいただいた方には「お金の話ばかり。幼い子どもや配偶者、自分の両親へのメッセージも残したい」と思われた方もいるかもしれません。そんなときに活用できるのが、遺言書に付記する付言事項です。付言事項とは、遺産の分配に関する法的効力を持たないものの、遺言者の思いや家族へのメッセージを自由に記載できる部分のことです。

例えば、幼い子どもにはこれまでの思い出や励ましの言葉を、配偶者には感謝の気持ちを伝える文章を残すことができます。また、親族間のトラブルを防ぐため、「争いごとを避け、互いを思いやる関係を続けてほしい」という希望を記載することも可能です。

付言事項の大きなメリットは、相続人に遺言者の意思を理解してもらいやすくなる点です。金銭や財産だけでなく、家族への感謝や愛情を伝えることで、相続が単なる手続きにならず、故人の思い出として心に刻まれるでしょう。これにより、家族の絆が深まるきっかけとなることも期待されます。

結論:未来の家族のために今からできること

遺言書は、財産の分配だけを決めるものではなく、家族への愛のメッセージを込めることができる特別なツールです。遺言書を通じて、幼い子どもたちや配偶者に「どれだけ大切に思っているか」「どのように支え合ってほしいか」といった気持ちを伝えることができます。このメッセージは、残された家族が安心して前を向くための大きな支えとなるでしょう。

特に未成年の子どもがいる親にとって、早期に遺言書を準備することは家族の未来を守る最善策です。不測の事態が起きたとき、遺言書があれば手続きの負担を軽減し、生活の基盤をスムーズに引き継ぐことが可能になります。家族が安心して暮らし続けられる環境を整えるためにも、遺言書の作成は「今できる家族への最大の配慮」と言えるでしょう。

 行政書士井戸規光生事務所では、相続診断士の資格を有する行政書士が、ご依頼者様一人ひとりの状況に合わせて、遺言書作成のサポートや相続手続きを代行いたしております。未成年や幼いお子さまのいらっしゃる方の遺言書に関しても、ご依頼者さまの状況に合わせた最善のサポートを行います。不動産登記が必要な際には司法書士、相続税のお悩みには税理士、相続人間でのトラブルが起こった際には弁護士と連携し、手続きを進める体制を整えております。初回相談は無料ですので、ぜひお気軽にお電話やお問い合わせフォームからご相談ください。ご連絡お待ちしております。

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この記事を書いた人

2024年に「行政書士 井戸 規光生 事務所」を設立しました。
建設業、遺言・相続サポート業務に特化した名古屋市南部の地域密着型事務所です。
高校時代はラグビー部に所属。地元名古屋のスポーツチームを応援しています。

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