遺産分割争いが裁判沙汰に!調停・審判に進む理由と対策

相続が発生したとき、遺産分割を巡って家族や親族間で意見が対立することは珍しくありません。誰がどの財産を相続するのか、分け方に納得がいかない場合、話し合いがスムーズに進まないこともあります。そんなとき、最初は自分たちで解決しようと試みるかもしれませんが、最終的には調停や審判という法的手続きに進むケースも少なくありません。しかし、裁判所に進んだ場合、どのような流れで解決を図るのか、またその際にどのような対策を取るべきかについては、あまり詳しく知られていないことが多いのが実情です。調停や審判に進む理由やその過程、そしてその結果に備えるためのポイントを押さえておくことで、後悔のない相続手続きを進めることができるでしょう。今回は、遺産分割争いが調停や審判に進む背景と、その際に取り得る対策について詳しく解説していきます。

目次

遺産分割争いが裁判所に進む理由とは?

相続が発生すると、遺産分割を巡って家族や親族間で意見の食い違いが生じることがあります。特に、遺産の額が大きくなるとその争いは複雑化し、争いの温床になります。例えば、遺産額が数百万円程度であれば、相続人同士の話し合いで解決できることもありますが、数千万円から億単位の遺産が関わる場合、分け方や評価の仕方で意見が大きく分かれるため、争いが激化することが多いです。このような場合、最終的に家庭裁判所での調停や審判という法的手続きを経ることになります。

遺産額と調停・審判に進む割合

実際に、遺産分割争いが裁判所に持ち込まれるケースでは、遺産総額が一つの重要な要素となります。「遺産総額」とは単純な現預金だけではなく、被相続人(故人)が持っていた不動産や株式、骨とう品や車などの評価額の合計でもあります。遺産総額が大きい方ほど、現預金以外の不動産、株式などの割合が多くなります。これらは、単純に分割することが難しく、そのため遺産分割が紛糾しやすくなるのです。

日本での遺産分割に関する調査によると、調停審判に持ち込まれた遺産分割の内、遺産額が1,000万円未満のケースは全体のおよそ35%、1,000万円以上5,000万円未満のケースがおよそ45%、5,000万円以上はおよそ20%です。

調停と審判の違い

調停のプロセス

遺産分割争いが裁判所に持ち込まれると、まず「調停」が行われます。調停は、裁判所の調停委員が間に入って、相続人同士の話し合いを仲介する手続きです。調停では原則として、当事者同士が直接顔を合わせることはありません。もう一つの調停の特徴は、非公開で行われる点です。公開の裁判とは異なり、プライバシーが保護され、当事者間で柔軟に話し合いを進めることができます。そのため、感情的な対立がある場合でも、穏やかな環境での解決が期待されます。調停が成功し、相続人間で合意に達した場合、その内容は「調停調書」として法的効力を持ち、合意内容がその後の手続きに反映されます。

審判のプロセス

調停で合意が得られなかった場合、次のステップとして「審判」が行われます。審判では、裁判官が最終的な決定を下します。これは、相続人間の合意がなかった場合に、裁判所が一方的に解決を強制する手続きです。審判には強制力があり、裁判所が下した決定に従わなければならなくなります。審判に進むと、相続人各自の意見や希望がすべて反映されるわけではなく、裁判官の判断による結論が下されます。従って、審判結果に不満を感じることも少なくありません。

調停と審判の比較

調停と審判の最大の違いは、柔軟性と強制力の有無です。調停はあくまで相続人同士の話し合いであり、裁判所が仲介することで解決を図ります。そのため、解決方法が相続人自身の合意に基づいており、納得感が得られやすいです。一方、審判は裁判所による一方的な判断となり、感情的な対立が解消されないまま解決を迎えることが多いです。相続人は、裁判官が下した結論に従う必要があり、その結果に対して不満が残ることも少なくありません。


調停・審判に進まないための予防策

事前の遺言書作成

遺産分割を巡る争いを防ぐためには、事前に遺言書を作成しておくことが有効です。遺言書を作成することで、相続人の間での財産の分配方法を明確にすることができ、相続開始後に意見の食い違いが生じるのを防ぐことができます。特に、遺産額が大きい場合や相続人が多い場合には、遺言書がなければトラブルが生じやすくなるため、相続人間の合意範囲を事前に明示することが重要です。

専門家との相談を早期に行う

遺産分割協議を始める前に、専門家に相談しておくことが重要です。行政書士や弁護士に早期に相談することで、相続の法的な側面について適切なアドバイスを受けることができます。また、相続税に関するアドバイスを税理士から受けることも有効です。相続税は金額によって大きな負担になる可能性があるため、早めに対策を講じておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。

遺産分割協議を円滑に進めるためのコミュニケーション

遺産分割協議を円滑に進めるためには、親族間で冷静かつ理論的に話し合うことが不可欠です。感情的な対立を避けるためには、感情を抑えて具体的な分割方法について話し合うことが大切です。もし話し合いが難航した場合には、第三者である専門家に間に入ってもらうことが有効です。専門家の助けを借りることで、協議がスムーズに進み、調停や審判に進むリスクを減らすことができます。

調停や審判が避けられない場合の対策

遺産分割の調停や審判の申し立ておよび代理を行える唯一の士業は弁護士です。弁護士は申立書作成、調停や審判の場での代理交渉も担当できます。行政書士は申立書や関係書類の収集と作成、遺産分割協議書の作成などを担当できます。

調停に進んだ場合の心構え

調停に進むことになった場合、重要なのは「細かな点にこだわり過ぎない」ことです。相続における遺産分割の問題は、感情が絡みやすいため、細部にこだわりすぎると、協議が長期化し、合意に至ることが難しくなります。調停を成功させるためには、譲歩する姿勢が求められます。また、調停で合意を得るためには、自分の主張だけでなく、相手の立場を理解し、妥協点を見つけることが重要です。双方が納得できる結果を目指し、冷静に対応することが解決への鍵です。

審判に進んだ場合のリスクと対応策

調停で解決できなかった場合、次に進むのは「審判」です。審判では、最終的な判断が裁判官に委ねられるため、相続人の希望が必ずしも反映されるわけではありません。審判に進んだ場合、予想外の結果が出ることもあります。予想外の判断を避けるためには、審判前に和解の余地があれば、その機会を逃さず、和解案を積極的に検討することが大切です。裁判所による強制的な決定を避けるためにも、事前に調整できる部分は調整しておくことが賢明です。

審判後の対応

審判が下された後、結果に不服がある場合は「異議申し立て」を行うことができます。ただし、異議申し立てには期限があり、手続きも煩雑です。そのため、審判後は迅速に対応する必要があります。また、審判の結果には強制力があるため、強制執行を避けるために、財産分割が決定した後は速やかに対応しなくてはなりません。

まとめ

行政書士井戸規光生事務所では、相続診断士の資格を有する行政書士が、ご依頼者様一人ひとりの状況に合わせて、遺言書作成のサポートや相続手続きを代行いたしております。遺産分割協議が整わず、調停を望まれる場合は、提携弁護士と連携し、手続きを進める体制を整えております。初回相談は無料ですので、ぜひお気軽にお電話やお問い合わせフォームからご相談ください。ご連絡お待ちしております。

よかったらシェアしてください!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

2024年に「行政書士 井戸 規光生 事務所」を設立しました。
建設業、遺言・相続サポート業務に特化した名古屋市南部の地域密着型事務所です。
高校時代はラグビー部に所属。地元名古屋のスポーツチームを応援しています。

目次