夫婦共同の遺言はNG!法律で認められない理由と代替策

「夫婦で一緒に遺言を作りたい」と考える方は多いですが、日本の法律では夫婦共同の遺言は認められていません。これは、遺言が個人の最終意思を示すものであり、他人と共同で作成することで自由な意思決定が制限される可能性があるためです。では、夫婦が同じ内容で財産を残したい場合、どうすればよいのでしょうか?実は、遺言書の作成方法や信託制度を活用することで、夫婦の希望を反映させる方法があります。本記事では、共同遺言が認められない理由と、夫婦の意向を叶えるための代替策について詳しく解説します。

目次

夫婦共同の遺言とは?

夫婦で一つの遺言書を作成したいと考えるケース

夫婦が長年連れ添う中で、「お互いに財産を譲り合いたい」「子どもや孫に公平に遺産を残したい」と考えるのは自然なことです。特に、自宅や預貯金などの財産を二人で築いた場合、夫婦で話し合い、一つの遺言書にまとめたいと考える人も少なくありません。また、「どちらが先に亡くなっても同じ内容で遺産を分けたい」という意向を持つことも多いです。しかし、日本の法律では夫婦共同で一つの遺言を作成することは認められていません。

夫婦が一緒に遺産の分配を決めることのメリット

もし共同で遺言を作成できたら、夫婦間の意向を明確にし、一貫した財産分配を実現できます。例えば、「夫が亡くなったら妻がすべて相続し、その後、子どもたちに均等に分ける」「妻が亡くなった場合は夫が全て相続し、その後、子どもたちに均等に分ける」といった内容を一つの文書に残せれば、手続きがシンプルになります。また、夫婦間で認識のズレが生じず、将来的なトラブルを防ぐことにもつながります。しかし、日本では共同遺言が法律上認められていないのです。

民法上の規定(民法第975条)による禁止

日本の民法第975条では、「二人以上の者が同一の証書で遺言をすることはできない」と明記されています。これは、夫婦だけでなく、親子や兄弟姉妹であっても同様です。この規定により、夫婦が一つの遺言書を作成しても法的には無効とされてしまいます。では、なぜこのような規定が設けられているのでしょうか?

遺言は個人の最終意思であり、共同作成すると意思の自由が損なわれる可能性

遺言は被相続人の自由な意思によって作成されるべきものです。しかし、夫婦が共同で遺言を作成すると、一方の意向がもう一方に影響される可能性があります。たとえば、夫が「財産をすべて妻に残したい」と考えていても、妻の意見を優先せざるを得ない状況が生まれるかもしれません。こうした影響を避けるため、法律は遺言を個人単位で作成することを求めているのです。夫婦共同の遺言が禁止されているもう一つの理由として、「一方が亡くなった後に、残された配偶者が遺言内容を変更できなくなる」というリスクが挙げられます。例えば、夫婦で「全財産を子どもに均等に分配する」と共同で遺言を作成したとします。しかし、夫が亡くなった後、妻が「事情が変わったから特定の子に多めに遺産を残したい」と考えても、共同遺言では変更ができません。これでは、状況の変化に対応できず、遺言の柔軟性が失われてしまいます。このような理由から、日本では夫婦共同の遺言が認められておらず、個別に遺言書を作成することが求められているのです。

妻が先に亡くなったら相続対策は無駄になる?たすき掛け遺言の重要性

大抵のご夫婦では、平均寿命の関係で夫が先に亡くなることが多く、その前提で相続税対策が進められることが一般的です。たとえば、夫から妻への財産移転を優遇する税制を利用し、生前贈与や遺言で財産を残す計画を立てるケースが多く見られます。しかし、万が一妻が先に亡くなった場合、こうした対策は意味をなさなくなります。遺言で「妻に相続させる」としていても、妻が先に亡くなれば、その部分は無効となり、遺産は法定相続分に従って分配されます。子どもがいれば大きな問題にはなりませんが、子どもがいない場合、遺産は兄弟姉妹へと引き継がれるか、最終的には国庫に帰属することになります。このような予期せぬ事態を防ぐために、夫婦たすき掛け遺言を作成し、どちらが先に亡くなっても意図した相続が実現するよう備えることが重要です。

たすき掛け遺言とは

夫婦のどちらが先に亡くなっても対応できる

たすき掛け遺言とは、夫婦それぞれが互いを相続人に指定し、さらに代わりの相続人も決めておく遺言のことです。一般的に、夫婦のどちらかが先に亡くなった場合、遺言で指定された通りに財産が配偶者へ相続されます。しかし、遺言の受遺者である配偶者が先に亡くなってしまうと、その遺言の一部が無効となるため、予期せぬ相続問題が生じる可能性があります。

相続の意向を確実に実現する仕組み

たすき掛け遺言では、「もし配偶者が先に亡くなった場合は、財産を○○に相続させる」といった形で、第二順位の相続人を指定します。これにより、法定相続に頼らず、意図した相続を確実に実現できます。特に、子どもがいない夫婦にとって有効な相続対策となります。

共同遺言と間違えやすいケースに注意!

夫婦が同じ紙に、それぞれの遺言を書いてしまうと共同遺言とみなされ、無効になります。遺言は個人の自由な意思で作成されるべきものであり、他者と一体化することで自由な撤回が妨げられる可能性があるためです。一方で、夫婦それぞれが別々の遺言書で、お互いに自分の遺産を相続させる形で残すことは有効です。この方法なら、法律の要件を満たしつつ、夫婦の意向を反映できます。

まとめ:夫婦の意向を叶えるには適切な方法を選ぼう

夫婦で一緒に遺言を作りたいと考えても、共同遺言は法律上認められていません。しかし、適切な手続きを取ることで、夫婦の意向をしっかりと反映させることは可能です。その一つの方法として、たすき掛け遺言を活用すれば、どちらが先に亡くなっても柔軟に財産を引き継ぐことができます。また、夫婦それぞれが別々に遺言を作成し、相互に自分の財産を相続させる形を取ることも有効です。行政書士井戸規光生事務所では、遺言書の作成や相続対策について、一人ひとりの状況に応じた丁寧なサポートを行っています。「どのように財産を残せばよいかわからない」「たすき掛け遺言を作りたいが、具体的な手続きが不安」という方も、専門家の視点から最適な方法をご提案いたします。初回相談は無料です。大切な財産を希望通りに引き継ぐために、まずはお気軽にメールや電話でご相談ください。

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この記事を書いた人

2024年に「行政書士 井戸 規光生 事務所」を設立しました。
建設業、遺言・相続サポート業務に特化した名古屋市南部の地域密着型事務所です。
高校時代はラグビー部に所属。地元名古屋のスポーツチームを応援しています。

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