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遺産の使い道、決めていますか?遺言書で叶える“想い”の伝え方

自分の遺産をこのように使ってほしい——そんな想いを遺言書に残したいと考える人は多いでしょう。しかし、基本的に遺産の使い方まで細かく指定することはできません。相続人が受け取った財産は、自由に処分できるため、「生活費として使ってほしい」「子どもの教育資金に充ててほしい」といった希望を法的に強制することは難しいのです。また、2世代後の相続まで指定することも認められていません。 ただし、「付言事項」や「負担付死因贈与契約」を活用すれば、ある程度の意向を反映させることが可能です。付言事項として希望を伝えることで、遺された家族がその想いを尊重しやすくなります。また、負担付死因贈与契約を使えば、「自分が亡くなった後に財産を譲る代わりに特定の義務を果たす」を条件とすることもできます。遺産を単に分けるだけでなく、どのように活かしてほしいかを考えることも大切です。本記事では、遺言書で“想い”を伝える方法について詳しく解説します。
遺産の使い方は自由?遺言で指定できる範囲を知ろう
相続財産の使い方は基本的に自由
遺産を受け取った相続人は、原則として財産を自由に使うことができます。例えば、預貯金を生活費に充てるか、投資に回すかは相続人の判断に委ねられます。遺言書で「特定の目的に使ってほしい」と記載しても、法的に強制することはできません。
「生活費にしてほしい」「教育資金に充ててほしい」という希望は拘束力がない
遺言書に「この財産を生活費に充てること」「孫の教育資金として使うこと」と記載しても、相続人にはその通りに使う義務はありません。相続した財産は、相続人のものとして扱われるため、遺言者の希望通りに使用されるとは限らないのです。
2世代後の相続まで指定することはできない
また、日本の法律では「次の世代、その次の世代へと遺産を受け継ぐ方法」を遺言で指定することは認められていません。相続権はその時点の法定相続人に移るため、「自分の子どもが亡くなったら、孫に相続させる」といった長期的な指定は無効になります。
「付言事項」を活用して希望を伝える
③付言事項とは?遺言書に付記できるメッセージ
付言事項とは、遺言書の中に法的拘束力のないメッセージとして記載できる部分のことを指します。遺言書には、財産の分配方法や相続人の指定など、法律上の効力を持つ内容を記載しますが、思い出話や感謝の気持ちを伝えたり、遺産分割の理由を説明したりすることができます。それに加えて、相続人への想いや財産の使い方についての希望を伝えることができます。
法的拘束力はないが、相続人の意思決定に影響を与える
付言事項には法的拘束力はありません。そのため、「この財産を生活費に充ててほしい」「実家を売却せずに残してほしい」と記載しても、相続人が必ず従う義務はないのです。しかし、遺言者の意向を明確に伝えることで、相続人が遺産の使い方を考える際の指針となり、意思決定に影響を与える可能性があります。
「家を売らずに守ってほしい」「家業を継いでほしい」など、想いを伝える例
付言事項を活用すれば、単に財産を分けるだけでなく、どのように活用してほしいかを伝えることができます。例えば、「長年住んだ家を売らずに守ってほしい」「先祖代々の土地を大切に使ってほしい」「家業を継いで発展させてほしい」といった内容を記載することで、遺産を受け取る側の心に響く遺言を残すことができます。
「負担付死因贈与」で条件付きの遺産分配を実現
負担付死因贈与とは、遺産を受ける人が財産を受け取る代わりに、特定の義務を果たすことを条件とする方法です。生前に契約書で「この財産を相続させる代わりに○○をすること」と記載することで、財産の使い道や管理方法をある程度指定できます。例えば、「母が亡くなるまで同居し、介護を行うこと」や、「先祖代々の墓を管理すること」や、「毎年指定の団体に寄付をすること」といった例があります。
義務が守られなかった場合のリスクや注意点
負担付死因贈与契約の義務が果たされなかった場合、他の相続人や利害関係者が履行を請求することが可能です。また、受遺者が義務を履行しない場合、遺言執行者が財産の返還を求めることもあり得ます。ただし、条件が厳しすぎると争いの原因になるため、現実的な負担内容を設定することが重要です。
遺産の使い道を明確にするためのポイント
付言事項と負担付死因贈与の併用で想いをより強く伝える
遺言書には、法的拘束力のない付言事項と、条件付きで財産を譲る負担付死因贈与を組み合わせることで、遺産の使い道をより具体的に伝えることができます。例えば、「自宅を遺贈するが、家族で住み続けてほしい」と付言事項で希望を示し、負担付死因贈与で「家の維持管理を行うこと」を条件とすることで、遺言者の意向がより明確に伝わります。
遺言執行者を指定して確実に実行されるようにする
遺言に希望を記しても、相続人が必ず従うとは限りません。そのため、遺言執行者を指定し、遺言の内容が確実に実行されるようにすることが重要です。特に、負担付遺贈を利用する場合は、執行者が条件の履行を確認し、適切に手続きを進める役割を担います。
生前贈与や信託の活用も検討する
遺産の使い道を確実に実現するためには、生前贈与や信託の活用も有効な手段です。例えば、生前に財産を譲ることで、遺言の内容を実行する前に意向を確認し、確実に希望を叶えることができます。また、銀行などの商事信託を活用すれば、財産の管理や運用を専門家に委ねることも可能です。
まとめ:遺言を活用して大切な想いを残そう
遺産の使い方を完全に決めることはできませんが、工夫次第で遺言者の意向を反映させることは可能です。例えば、付言事項を活用すれば、相続人に対する希望を伝えることができ、負担付死因贈与を利用すれば、特定の条件をつけて財産を譲ることもできます。これらを適切に組み合わせることで、遺産が意図した形で活用される可能性が高まります。 また、遺言の内容が確実に実行されるよう、遺言執行者を指定することも重要です。さらに、遺言の書き方や法的な制約を理解し、自分に合った方法を選ぶためには、行政書士などの専門家に相談することが安心です。適切な遺言を作成し、大切な想いを次の世代へしっかりと残しましょう。 行政書士 井戸 規光生 事務所では、遺言書の作成や遺言執行のサポートを行っています。一人ひとりのご事情に合わせた最適なアドバイスをご提供し、遺言が意図した通りに実現されるよう丁寧にサポートいたします。初回相談は無料ですので、電話やメールでお気軽にご連絡ください。