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遺産分割の落とし穴…相続人の配偶者が口を出すことで起こるトラブルとは?

相続は、故人が遺した財産を分けるための手続きですが、同時に家族や親族の関係性が浮き彫りになる場面でもあります。相続人同士が冷静に話し合えば、円満な遺産分割ができるはずです。しかし、実際にはそううまくいかないことが少なくありません。その原因の一つが、相続人の配偶者による介入です。直接の相続権がないはずの配偶者が意見を述べ、時には強く主張することで、協議が思わぬ方向へ進んでしまうこともあります。本来、相続人同士で決めるべき問題に外部の意向が加わることで、話し合いが長引いたり、深刻な対立へと発展したりすることもあるのです。本記事では、相続人の配偶者が口を出すことで生じるトラブルの具体例と、その防ぎ方について解説します。
相続人の配偶者が介入すると、なぜトラブルになるのか?
相続人の配偶者は法定相続人ではない
相続人の配偶者は、法律上の相続権を持たないにもかかわらず、遺産分割協議において積極的に意見を述べることが少なくありません。相続財産は、あくまで相続人同士で話し合うべきものであり、本来、配偶者が直接関与する権利はありません。しかし、自分の夫や妻が相続人である以上、家庭の経済事情を理由に「少しでも多く相続すべきだ」と主張し、協議を混乱させるケースが多いのです。
配偶者の発言が相続人本人の考えに影響を与える
配偶者が協議の場に直接参加しなくても、家庭内での会話を通じて相続人の考えを変えてしまうことがあります。たとえば、相続人本人は円満な話し合いを望んでいたとしても、配偶者が「あなたが譲歩すると損をする」。「お前は一番年下の妹だから損をしているんだ。俺が一言言ってやる」などと強く主張すれば、次第にその考えに引きずられ、態度を硬化させることになります。特に、遺産の分割割合に関して「他の相続人よりも多くもらうべきだ」という配偶者の意見が影響すると、当初はスムーズに進んでいた協議が一転して対立へと発展することも珍しくありません。
「利益相反」が起こりやすい
相続人の配偶者は、基本的に「自分の家庭の利益」を第一に考えます。そのため、他の相続人との公平な合意を目指すよりも、自分たちが最大限の利益を得ることに重点を置く傾向があります。たとえば、妻が夫のために「もっと多く相続するべきだ」と主張すれば、夫はその意見を無視しにくくなり、結果として遺産分割協議がまとまらなくなるのです。また、配偶者が、「職業柄自分には知識がある、経験がある」や「中立的な立場で話し合いを整理する」と言いながら、実際には自分の利益を優先する発言をすることで、他の相続人の不信感を招き、さらなる対立を生むこともあります。
このように、相続人の配偶者が介入することで、話し合いがこじれる要因は多く存在します。遺産分割協議を円滑に進めるためには、相続人同士が主体となって話し合いを行い、配偶者の過度な介入を防ぐ工夫が必要です。
よくあるトラブルの具体例
ケース1:「夫(妻)が長男だから多くもらうべき」と主張する
相続人の配偶者が「長男なのだから多く相続するべき」と考え、強く主張するケースは少なくありません。例えば、「夫は長男として家を継ぐのだから、遺産の大半を受け取るべきだ」といった意見が出ると、他の相続人との間で対立が生じます。しかし、現在の法律では長男だからといって特別な相続権が認められるわけではなく、法定相続分に基づいて公平に分けるのが原則です。それにもかかわらず、配偶者が伝統的な考えを持ち出して話し合いを混乱させることがあるのです。
ケース2:介護の寄与分を巡るトラブル
親の介護をしていた相続人の配偶者が「私がこれだけ尽くしたのだから、もっと相続を受けるべきだ」と主張することがあります。例えば、「夫(妻)が親の面倒を見てきたのだから、その分を考慮して多く相続すべき」と訴えるケースです。しかし、法的には相続人でない配偶者自身が寄与分を請求することはできません。そのため、相続人が配偶者の意見を受けて寄与分を強く主張すると、他の相続人との間で争いが激化し、協議がまとまらなくなることがあります。
ケース3:ネットや知人の誤った情報を鵜呑みにする
インターネットや雑誌の記事、知人の話を参考にして、誤った情報をもとに主張するケースもあります。例えば、「相続税対策としてこの方法がいいらしい」といった情報を持ち込んだり、「ある人はこうやって多く相続した」と聞いた話を根拠に自分たちも有利な分割を求めたりすることがあります。しかし、相続は家庭ごとに状況が異なり、一概に同じ方法が適用できるわけではありません。間違った知識に基づく主張が相続人間の不信感を生み、話し合いの長期化につながることが多いのです。
ケース4:相続人本人よりも配偶者の方が強く主張し、協議が決裂
相続人本人は「円満に解決したい」と思っていても、配偶者が「絶対に譲るな」と強く主張することで、話し合いがまとまらなくなることがあります。例えば、「あなたが損をするから絶対に譲歩してはダメ」と配偶者が圧力をかけることで、相続人自身が本心では納得していても譲れなくなるケースです。こうした状況が続くと、感情的な対立が生まれ、調停や裁判に発展することもあります。
このように、相続人の配偶者が関与することで、話し合いがスムーズに進まなくなるケースは多く見られます。円満な相続を実現するためには、事前に相続人同士でルールを決め、配偶者の過度な介入を防ぐ工夫が必要です。
相続人の配偶者の介入を防ぐ方法
① 遺産分割協議には原則として相続人のみが参加する
相続人の配偶者の介入を防ぐためには、まず「相続人だけで話し合うルール」を事前に決めることが重要です。協議の場に配偶者が同席すると、感情的な対立が生じやすくなり、話し合いが長引く原因になります。そのため、相続人同士で「配偶者は協議に参加しない」という共通認識を持ち、話し合いを進めることが円満な解決につながります。
② 相続人同士で方針を固めておく
相続人の配偶者が意見を述べる前に、相続人同士で方針を固めておくことが重要です。例えば、相続人だけで事前に集まり、財産の分け方の方向性を決めておけば、配偶者の影響を受けることなく、スムーズに協議を進めることができます。また、明確な方針を持っておけば、後から配偶者が意見を主張しても、それに流されることが少なくなります。
③ 第三者(専門家)を交えて進める
弁護士や税理士などの専門家が話し合いに参加することで、配偶者の感情的な介入を抑えることができます。専門家は中立的な立場で法的な根拠をもとに話を進めるため、感情論ではなく、客観的な視点での協議が可能になります。特に、遺産分割が複雑な場合には、専門家の助言を得ることでスムーズに進めることができるでしょう。
④ 遺産分割調停を活用する
相続人の配偶者の介入が激しく、協議がまとまらない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停を利用するのも有効です。調停の場では、原則として相続人のみが出席するため、配偶者の直接的な影響を排除することができます。また、調停委員が間に入ることで、公平な判断がなされ、感情的な対立を避けながら合意に至る可能性が高まります。
⑤ 遺言書を作成する
故人が生前に遺言書を作成しておけば、配偶者の介入の余地を最小限に抑えることができます。遺言書があれば、相続は故人の意思に基づいて進められるため、相続人の配偶者が「もっと相続するべきだ」と主張する余地が少なくなります。特に、公正証書遺言を作成しておけば、その内容が法律的に有効であるため、相続人同士の争いを防ぐ手段としても有効です。このように、相続人の配偶者の介入を防ぐためには、事前の準備や専門家の活用が重要になります。スムーズな遺産分割を実現するためにも、適切な対策を講じることが求められます。
まとめ:冷静な話し合いが円満な相続のカギ
相続人の配偶者が遺産分割協議に口を出すことで、話し合いが混乱しやすくなります。本来、相続人同士で決めるべき問題に、配偶者の意見が加わることで、感情的な対立が生じ、協議が長引く原因となるのです。こうしたトラブルを防ぐためには、相続人同士で事前に方針を固め、冷静な話し合いを心がけることが大切です。また、弁護士や税理士などの専門家を活用することで、感情論を排し、法的根拠に基づいた協議を進めることが可能になります。相続は家族の未来にも影響を与える重要な問題です。互いに感情的にならず、冷静に話し合う姿勢が、円満な相続への第一歩となるでしょう。行政書士井戸規光生事務所では、相続に関するご相談を幅広く受け付けております。遺産分割協議の進め方に不安がある方や、相続人の配偶者の介入でお困りの方は、お気軽にご相談ください。スムーズな相続手続きをサポートいたします。初回のご相談は無料で対応しておりますので、お電話(052-602-9061)、FAX(050-1545-5775)、お問い合わせフォーム、もしくはEメール ido.kimioアットマークofficeido から、些細なことでもお気軽にご相談ください。