「遺言執行者がいない!」そのとき相続手続きはどうなる? 

「遺言書はあるのに、手続きが進まない…」そんな声を耳にすることがあります。その原因のひとつが、遺言執行者が指定されていないケースです。相続人が複数いる場合、手続きを進めるには全員の合意や書類が必要となり、思わぬ手間やトラブルを招くことも。では、遺言執行者がいないとき、相続手続きはどう進めるべきなのでしょうか?今回は、そんな場合に取るべき具体的な対応と、家庭裁判所での手続きについてわかりやすく解説します。

目次

そもそも「遺言執行者」とは誰のこと?

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために選ばれる人であり、民法第1006条において「遺言の執行をすべき者」と定義されています。遺言書の中で指定されるか、または家庭裁判所によって選任されることで、その任に就きます。執行者は、遺言に基づいて相続財産を分けたり、名義変更の手続きをしたりするなど、実務的な作業の中心を担います。不動産の登記変更、預貯金の払戻し、遺贈の執行など、その役割は多岐にわたります。

いる場合といない場合の違い

遺言執行者がいる場合、原則としてその人だけで手続きを進められますが、いない場合には、相続人全員の合意や署名押印が必要になることが一般的です。そのため、スムーズに進むかどうかは、執行者の有無に大きく左右されます。

遺言執行者がいないと、何が問題になるのか?

遺言執行者がいない場合、金融機関での預貯金の解約や、法務局での不動産名義変更の手続きには、相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書・実印付き同意書などが求められます。たとえ遺言書があっても、単独での手続きは難しくなります。相続人の中に手続きを拒む人や、連絡が取れない人がいる場合、すべての手続きが滞ってしまいます。感情的な対立や過去の確執が表面化し、遺言の内容を巡る紛争に発展するリスクも高まります。

特殊な遺言内容には特に注意

遺言に、お孫さんなど、相続人以外への遺贈や、相続人の廃除・認知が含まれている場合、それを実行できるのは原則として遺言執行者のみです。執行者がいなければ、家庭裁判所に選任申立てを行う必要があり、対応が遅れる可能性があります。

遺言執行者がいないときの対応策

遺言執行者がいない場合でも、遺言内容を実現するためには、家庭裁判所に「遺言執行者選任申立て」を行うことが可能です。この手続きを通じて、執行者を事後的に選任することができます。申立てを行えるのは、相続人、受遺者、遺言者の債権者などの利害関係人です。申し立て先は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所になります。

書類と費用の準備

申立てには、遺言書の写し、戸籍謄本、遺言執行者候補者の住民票などの書類が必要です。また、費用としては、収入印紙800円と数百円分の郵便切手がかかります。申立書類を提出すると、1か月ほどで家庭裁判所から照会書が届きます。その後、必要な確認が行われ、2〜3週間程度で「遺言執行者選任審判書」が交付されます。これにより、正式に遺言執行者が任命され、相続手続きに移ることが可能になります。

トラブルを避けるために今できること

遺言書を作成する際には、遺言執行者を明記しておくことが極めて重要です。指定があるだけで、相続手続きがスムーズに進み、相続人同士の負担や衝突を最小限に抑えることができます。遺言執行者として、行政書士などの専門家を指定することで、法的なミスや手続き上のトラブルを未然に防ぐことができます。中立的立場で動いてもらえる点も安心材料です。

見落とされがちな注意点

実務では、遺言書に執行者の署名がない、住所が不明など、形式面でのミスがトラブルの原因になることも。作成時には、専門家による内容チェックがおすすめです。

まとめ:スムーズな相続手続きの鍵は「執行者の有無」 

遺言執行者がいない場合、相続人全員の同意や書類が求められることで、手続きが複雑化し、思わぬトラブルを引き起こすことがあります。特に相続人が多い場合や関係性が希薄な場合には、手続き自体が大きく滞る恐れもあります。だからこそ、遺言作成時に執行者を指定しておくことが、スムーズな相続の実現に不可欠です。事前の準備が、家族の負担を減らし、安心して相続を迎える第一歩となります。行政書士井戸 規光生事務所では、相続・遺言に関する30分無料相談を承っております。どんな小さな疑問でも、お気軽にご相談ください。あなたの「知らなかった」を「知ってよかった」に変えるお手伝いをいたします。お電話052-602-9061またはEメールido.kimioアットマークofficeido.com、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

2024年に「行政書士 井戸 規光生 事務所」を設立しました。
建設業、遺言・相続サポート業務に特化した名古屋市南部の地域密着型事務所です。
高校時代はラグビー部に所属。地元名古屋のスポーツチームを応援しています。

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